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涼に連れられ裏口にたどり着いた時、遠くに玄関で言い争っている声が聞こえてきた。
千紗父ともう片方の声にはあの語尾イントネーションがない。
「ほ、本当にいないんですよ!そんな人っ!」
「此処に来たことは分かっている!!ええいッどけいっ!邸内を改めさせてもらう!」
「イテっ、やめて下さいぃぃイテっ!!」
「出て来い魔王っ!女王様の前で処刑してくれるわ!!」
怒声に聞き覚えはないが、あの和製な喋り方、言い回し…キモうさ兵士だ!何で今更魔王探ししてんだ?ノリスティン女王様自ら逃してくれたんだったよな?
頭は?でいっぱいだが今するべき事ははっきりと分かる。
「行くぞ、涼ッ!!」
涼を処刑なんてさせてたまるかッ!
繋がれたままだった手を取り直し今度は俺が涼の手を引き裏門の方へ走った。
アドレナリンのおかげか、追い風が吹いているかのようにいつもより速く走れているような気がする。千紗父とキモうさ兵士の押し問答が直ぐに遠くなって聞こえなくなった。
裏門を出てとにかく細い路地を右に左にがむしゃらに駆け抜けた。普段の運動不足が祟り、足は絡れにもつれてガクガク、喉は焼けるように痛いが気にしていられない。
捕まった先に待っているのは孤独の牢獄に、死への恐怖。いやと言うほど味わった俺は誓った。涼にだけは同じ思いはさせねぇ!!
あの広い建物全てを隈なく探そうとするなら時間がかかるはずだ。
今のうちに少しでも遠くへ…
「ど根性ーーッ!!!」
「…ほどほどにな」
絶対に涼が前に出て走った方が速いのにそうせずに、後ろを走ってくれるのが涼だ。涼の遠くから見守ってくれるような優しさが俺は大好きだ。
勿論本当に危険な事やあまりにも目に余る事案のものは全力で止めに入ってくるが、それ以外は基本は奔放にやらせてもらっている。
今、五体満足にこうして逃走劇を繰り広げられるのも何かとフォローしてくれている涼のお陰だ。
そんな涼のピンチなんだ…!俺が体を張らなくてどうするッ!
「俺が、ぜんっりょくで守ってみせるぞぉぉおッ!!」
「……半分くらいに抑えて、お願いだから」
涼の力無い訴えを無視し、薄暗い路地を駆け抜け見つけた安息地…廃屋へと駆け込んだ。
「お、おじゃましまーす…」
ちゃんと入室の挨拶も忘れずに。




