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「なぁなぁ涼。どこ行くか決まってんの?」
「…俺が行き先決まってもなく動いてたことあったか?」
やっとこさリーチの長い涼の足に全力疾走で追いつき声をかける。
「ないけどさぁ…目的地と理由は知りたいじゃん」
今回のチーズフォンデュ食い倒れツアーが猫耳メイドに大変身!キモうさぎと城内乱闘ツアーになるのはごめんだからなッ!
そういやチーズフォンデュ食ってねぇ。
「…先ずは腹ごしらえ」
「お、おう…!?」
競歩みたいな早さで向かってた先が飯屋…よっぽどお腹空いてたんだな。確かに丸2日はまともに食べてないもんな。
カッコつけて俺が行き先決まってもないのに動いてたことあったか、…キランとか言うもんだから大層な目的地かと思うじゃん!?
「食うものは勿論、分かってるよな涼」
「…ああ。あれしかない」
俺と涼の気持ちは一つだ。
俺達は競歩というよりはもうほぼほぼ走りながら(って俺は最初からか…)ある店の中へと駆け込むように入った。
「いらっしゃいませ〜ぇ。お好きなフォンデュのテーブルへどうぞ〜ぉ」
妙な語尾の伸ばしぐせがある店員さんに案内されたテーブルには、3段にも重なった台から懇々と溢れ出る滑らかで上品な……チョコ?
…チョコ?
「ちょぉこおおれぇえとぉお!?」
「…うるさい」
それだけ言うといそいそと空の皿を持ち、ビュッフェ形式の店の方式に習いチョコにフォンデュる物を物色に行ってしまった。
…俺と涼の心は月とスッポンくらいには離れてたッ!!そうだった、忘れてた。涼は超が付くほどの甘党だった。
ちょっと考えれば分かることだった…クソッ!俺の口はもうチーズの塩分に恋焦がれてからっからに渇いてるんだッ!!
さっきちょっと目から塩分出しちゃったし?!
「…て騒いでも無駄か……」
糖分を前にした涼を止められる者はいない。ここはもう大人しく俺がチョコの口になるしかない。
心頭滅却すれば口もまたチョコだッ!!
「ん?」
痛い。一定のリズムを刻みながら左頬が痛い。涼がチョコをフォンデュるブツを探しに席を立ったあたりからずっと。断続的に。
痛みの正体を探ろうと左頬に手をやるとそのタイミングで飛んで来た何かが当たりテーブルの上へと落ちた。
落ちたそれを摘み取って見るとそれは確かに見たことのあるもので……嫌な予感、というより確実な確信。
「出やがったな、雑草どもぉぉおおッ!!隠れてないで出てきやがれぇええッ!!!」
テーブルの上は勿論、テーブルの下、周辺も這いつくばって探すがあの憎き俺の天敵共の姿は何処にもない。
だが絶対にいるはずだ。俺がこのフォンデュ国に来る道中何度も無遠慮に投げつけられた鋭い種子を見間違えるはずがないッ!
「何処だッ!見つけてチョコにフォンデュって食ってやるッ!!」
「…地面に落ちてるゴミをか?」
ハァと呆れ混じりのため息を吐きながら戻って来たのは、両手に溢れんばかりのフォンデュブツを抱えた俺の親友。
が、今はゴミを見るような目と不審行動をする俺から距離を取るために席を変えようかと葛藤している涼のことを気にしている場合ではない。
敵はいるのだ…このテーブルから半径1メートル以内には確実にッ!左頬の痛みで距離が大体は分かる。何せ何十発、何百発と喰らったからな。
「……聞きたくないが…何してる?」
「お前んとこの雑草共探してんだよッ!絶対この辺に…まさか涼、庇ってんじゃねぇだろうな!?隠し立てするとー」
「ああ。ハッピー達のことか。それならミントの中、ほら」
そう言ってテーブルの上に上を向けて置いてあったミントの画面を見せてきたのだが、そこには見紛うことのない雑草共の写真が…
「…待ち受けにしてんの?雑草。趣味悪ッ。そして名前のセンスも悪ッ」
「違ぇよ。勝手に俺のミントに入り込んで待受画面占拠されたんだよ」
更に迷惑機能も追加されたらしい。画面を見るたびにポーズや構図が変わり毎回違った雑草共を強制的に見せつけられるそう。迷惑甚だしいな、涼可哀想に。
因みに、ハッピーは葉っぱから他にもリーフ(言わずもがな草)、ハナ(花)などなど雑な命名を受けた雑草共。
…羨ましいッ!涼から名前なんて貰いやがってこの贅沢野郎共。…俺もあだ名でも付けてもらおうかな。
…いや、やめとこ。よく分からん奇行繰り返すからキチガイ、な。とか雑かつ不名誉極まりないあだ名つけられたら立ち直れそうもないし。
うん、俺は優也だ。




