駆け抜けろ異世界
千紗父への御礼もそこそこに応接室、商会を足早に出た俺たちはサンドイッチな建物がずらりと並ぶ大通りまで出てきた。
にしても…この国は何処もかしこも目がチカチカする…。俺達の猫耳メイド&犬コスをも不自然と思わせないくらいには派手。
この格好を恥ずかしがる暇もなかったってのが正解だけど、これはこれで今は悪くないかも?なんて考える。
…確実にフォンデュ国に飲まれかけてるな。こうやっていつかは地上のことも忘れて当たり前のようにこの下水楼で暮らすようになるんだろうか…。
家族や学校の友達、そして最後には涼のことまで……
「…ってやめやめ!暗い思考やめーッ!!」
「いきなり何?…どうせさっきのおっさんの話聞いて余計なことで頭使ってるだけだろうけど」
「…うん。当たり。このまま地上に帰る方法見つからなくて全部忘れたら…涼のことも、忘れちゃうのかな?とか……らしくねぇよな」
口に出して見ると更に不安感は増す。さっきまでは自分のことじゃない、何処か他人事に捉えていたことが現実なんだと再確認させられたようで、自分でも止められない恐怖心に今になって襲われ、手足に震えが出始めていた。
…あれ?俺ってこんなに弱かったっけ…?
視界まで目下に滲む涙で淡い陽炎のように揺らぐ。
何とか震えと涙を抑えようとその場に立ち止まり、動揺を少しでも隠すように涼に背を向ける。
どうせ涼には全てお見通しなんだろうけど、それでも不安はなるべく見せたくない。優しい涼はきっと凄く…すごく心配するだろうから。
「大丈夫。俺とお前で出来ない事なんてない、だろ?」
涼が俺のこと解っていてくれるように俺にも解る。
背を向けていて見えないが、今の涼は真剣な、それでいて絶対的な自信を宿した眼で俺を見ているはずだ。
俺の悩みなんて大したことないとそれを一瞬で打ち消してしまえるような目に悪い眩しい笑みを浮かべてる。
なら、俺が取るべき行動はただ1つ。
「当たり前だろッ…!俺たち2人が揃えば下水道からだろうと、マンホールからだろうと抜け出せるッ!!」
振り返り際にぐいっと涙を袖で拭い、両拳を遥か頭上にある卍ホールへ向け、涼の心配を一瞬で打ち消せるような全力の笑顔を送る。
涼はフッ、と短い笑みを返すだけでまた元の進行方向へと歩き出した。
その背に
「ありがとな!!」
と叫ぶと気恥ずかしかったのか、うるさいと歩みを止める事なく先程よりも足早になりそれを追いかける俺の足は疲労でボロボロだったがとても軽く本当に何処にでも行けそうだった。




