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「優也くんって実は私のこと嫌いだったのかい?…涼くんも」
「いえッ!!そのようなことはほんっとぉーになく!!……ごめんなさい」
俺が意識を飛ばしてから30分程しかたっていない、魔力切れらしい。目を覚ますとびしょ濡れでガタガタ震え、力無く焦げた椅子に座っている千紗父。
顔や腕に血が滲んでいるのはきっと千紗にあの顔面削りタオルで介抱された跡なんだろう。…ちゃんと親子してんじゃん。
そんな千紗父に全力で謝り倒す俺。俺だけ。
涼はというと自分のすべき事は終わったとばかりに被害のない応接椅子へ移動し気持ち良さそうに腕組みしてうたた寝をしている。
うぉのれぇえ…。この惨状の要因の半分は涼だろぉッ!冷水分謝れッ!!そして俺の心配をしろッ!!
もういいから、こんな扱いも慣れてるし…とボソリと言われ何というか大変な人生を歩んできたんだろうなぁと勝手に納得した。そのこんな扱いをしてるのは実の娘さんだろうし、俺が口出し出来ることじゃねぇし。
…俺も怖いし。
「君が意識失ってる時に千紗と平喜、涼くんから話は聞いたんだけど、君達2人はあのトレヘルから来てて帰る方法を探しに私を訪ねて来たんだってね?」
「ん?そうなのか?」
「…うん?違うの…かい?」
いや、トレヘルから来て帰りたいってのは違わねぇけどここに来た目的俺、知らされてねぇしな。
チーズフォンデュ食べるってこと以外何も。
えぇっと…と、反応に困っている千紗父。
そりゃそうだよな。いきなり知らないヤツの救出に協力させられて、何しに来たか分からない正体不明のヤツらにあれよあれよの間に燃やされ冷水浴びせられ…散々だな。
今日はそういう日なんだ、明日はきっと良い日になるさ!との念を込めて千紗パパに手を合わせて
おいた、が余程奇怪な行動に見えたのか、また火の玉の1つでも飛んで来ると思ったのかファイティングポーズを返された。
俺無害よ?何十発か火の玉飛ばし当てた今の俺が言うのもなんだけど。
千紗父には俺だけでも優しくするってこっそり誓ってたしな。
…この状況じゃ全くもって説得力ないだろうけど。
とにかく、と前置きをし千紗父は渋い顔を更に渋めて重苦しい雰囲気を出しながら話し始めた。
やめて欲しいなぁ、こう言う空気俺苦手なんだよ。
でもさすがの空気読むのが苦手な俺でも千紗父に語られた内容には、千紗父と同じような重苦しい雰囲気の沈黙を返すしかなかった。
「……というのが私の知り得る限りの下水楼での君たちが辿るであろう未来だよ」
「「「……………」」」
重い、重い、この卍ホールの下の世界に落ちて1番重い沈黙と空気。
何とか明るく振る舞おうと口を開きかけるも、出来ない。異様に乾いた二酸化炭素を何度も吐き出すだけになる。
「…優也。思い出せるか?上の名前」
短い仮眠から覚めた涼がソファで寝てる時と体勢を同じくして目を開け口だけを動かす。
「ッ…!だ、ダメだ…。思いだせねぇ」
「……いずれは下の名前とトレスティアルヘルが地獄のような場所だった、という朧げな記憶しか残らなくなる。…今の私のようにね」




