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話は後でゆっくりきかせてもらうからな、とひっっくいひっくい声で言われ、とりあえず今すぐ魔王様が御降臨されることはないみたいだ。
はい、と小さく返事を返し涼の背の裏で大人しく事の成り行きを見守ることにする。
女王様は氷の槍で裂かれたドレスと足を押さえながら背筋をスッと伸ばし立ち上がった。その気高く神々しい立ち姿、正しく女王様。
「…名は、なんというのかえ?」
とにかく名前聞かないといけない性分なんだな。
「涼」
「兵士の報告通り、魔王の名じゃの。私はノリスティン・デ・フォンデュ。この城へはこの者、配下のユーヤを助けにかえ?」
「ああ。だが配下じゃねぇ。親友だ」
りょおぉう!マイスウィートフレンドッ!!
目の前にある涼の背中に全力で抱きつくも視線を向けられることもなく引っ剥がされた。
マイ…スウィート…フレンド……。
「なんと…そのいで立ち、言動から勝手に配下だと思ってあったが魔王の友…なんと恐ろしい…」
「…俺は魔王じゃねぇ」
「隠さなくともよい。…隠しきれるオーラでもないがの。ユーヤの見張りをしていた兵士に報告を受けておる……謎の舞を踊りながら魔王を崇める歌を歌っていたとッ!」
崇めてねぇよッ!!!
魔王に連れて行かれそうになったどっかの息子の嘆きだよッ!!
ってか、さっきは魔王召喚の歌とか言ってなかったか!?あんの筋肉うさぎ…報告ならしっかり事実だけを挙げろよ!
お前のせいで俺が別の意味で生命の危機に瀕しているじゃねぇか!!
「本当に何してたんだ、お前……」
「……ごめんなさい。殺風景な牢屋に1人であまりに暇だったからシューベルトの『魔王』を熱唱してただけで……」
「……本当に何して…もういい」
大体解った、と気まずそうに顔を背けられる。この短文で良く理解できたな。
さっすがマイスウィートフレンド。
「…ノリスティン女王、うちの優也がお世話かけました。申し訳ありません」
本当に、本当に申し訳なさそうに涼は深々と豪華絢爛なノリスティン女王様に頭を下げる魔王…もとい涼。
すまんな涼。俺の為に頭下げさせて…。
正直俺何かやらかした自覚ないけど。暇だから歌ってただけだし。
「……伝記に記された魔王とそちとは大きな相違があるようじゃの。認識を改めねば…よい。魔王、リョウよ。ユーヤを連れ城を立ち去るがよい」
「いや、だから俺は魔王じゃ…」
「…達者での」
「だから、ちがッ」
ノリスティン・デ・フォンデュ女王陛下は、上品で気品ある笑みを浮かべ、優雅なお辞儀をして王座の裏のカーテンの中へと消えていった。
去り方まで正しく女王様だな。
かーっくいいーっ!!
「ち…がう、俺は魔王じゃ」
「あー無理無理。この城の人達思い込み激しいし人の話聞いてないから。現に俺だって暇つぶしに歌ってただけで誤解されてこの騒ぎだし!」
「お前は自業自得だろッ!!」
「ーッてぇ!!何しやがる!待て、涼!!」
魔王という汚名を着せられた苛立ちからか、俺に蹴りを入れて足早に部屋を出て行くのを足のタッパの違いのせいで全速力で千紗の待つあの俺の入り損ねた豪邸まで追いかける羽目になったのだった。




