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side優也
「なーぁ、なーあってば!!俺どうなっちゃうのーって、まさか死刑継続ッ!?ほら見てうさぎさんっ!俺のキュートな猫耳とメイド服ッ!尻尾だってちゃんとー」
「うるさい!黙れ!!お願いだから…黙っててくれ!!」
キモウサ兵士の口を噤むようにとの悲痛の叫びが地下牢と思わしき場所に空しく響く。少し離れた場所でこちらに背を向けて立つキモウサ兵士の背中が小刻みに震えている。
寒い?のかな。か、あの見た目だし怖がり寂しがり??
ーッだったら!!
「ほら、おいで。うさぎさん…鉄格子越しだけど抱きしめてあげるからッ!」
「…俺には……もう無理だぁぁああ!!」
そう言って全速力で上階へとキモウサ兵士は目の前の階段を駆け上がって行った。
そんなに暗がり苦手だったのか…。見張りの配置替え、してもらえるといいな。
…俺も連れてって欲しかった。
……1人は寂しい。話し相手が欲しい……
「誰かぁ〜い〜ま〜せんかぁ〜??」
叫んでみても帰ってくるのはこだまだけ。何人収容するつもりで作ったんだろ声の反響から察するにめちゃくちゃ広いぞ!?
なのに収容者は多分俺1人…。
うんうん、この国は随分と治安が良さそうだ。俺誘拐されてっけど。
現在フォンデュ国唯一の収監者……ってか。
「うぅ…、俺は無実だぁぁあああッ!!!」
俺の見張りが泣き去ってどのくらいたっただろう。
暇すぎてシューベルトの『魔王』を全力で歌っていたところ複数の足音が降りて来た。
「おとうさぁぁーん!!!♪おとうさぁぁーん!!魔王がぁああ〜!!♪」
「うるさいっ!!そしてやはり、お前が魔王の手下かっ!!」
とうとう自白しやがったな、と勝ち誇ったように格子前に立つ筋肉隆々のこれまたうさぎ。
何?この国の国獣なの?
「ちっげぇよッ!これは俺の国の音楽の授業で…」
「なんだと!?魔王の納める国ではこんな父を呼ぶ悲痛で恐ろしい歌で教育をしているというのか…!?」
「だーかーらぁ俺はただこの『魔王』がインパクトありすぎて好きなだけで…」
「魔王に対するこの忠誠心…やはり…来い!この魔王の手先めッ!女王様の御前で処刑してくれるわッ!!」
ガチャッと乱暴に鍵を開け、右に先程から勘違いを加速させている筋肉隆々うさぎ。左にこれまた筋肉隆々うさぎ。
2匹のボディビルダーのようなうさぎ兵士に両脇を持って吊り上げられ、檻の出入り口にあちこちぶつけられながら引きづり出された。
「ぎゃぁああ!痛ッいーたいッ!!助けてりょぉおおう!!」
「りょう、それがお前の主人、魔王の名か。それも含め、お前の数々の奇行を女王様に報告させてもらうぞ」
「もう全部ちっがぁぁああうぅ!!」
俺の訴えなど筋肉脳筋共が聴いてくれる筈もなく、抵抗空しく地下牢から胴上げのように抱えられながらキモウサ兵士達に連れ出されるのだった。
「…もう泣きやめよ。…女王様の御前であるぞ」
「ぅえっー、ゔぉっう、っくえぇ」
さっきの怒声はどこへやら、両脇を拘束していた腕を解き優しくハンカチを渡してくれるゴツいうさぎ。
でも、泣きやめったって俺処刑されるんだろ?よく分かんないけど『魔王』歌って城内の皆さんを不快にした罪?で…。
俺の墓石の裏にはきっと『魔王の歌声リアルすぎて処刑された愚か者』とでも書かれて永遠にこの先の親族達にも笑われ続けるんだぁ〜…
「……其の方、名は何という」
「ゆ、ゆゔや…」
威圧感はバリバリあるものの、思っていたより優しげな声色が正面の低い階段先の王座から聞こえる。
顔をあげるとつり目で黒髪ぱっつん前髪、ストレートロングの、眼で人を殺せそうな圧強めの女王様とバッチリ目が合ってしまった。
あっ…今日俺の命日だ。
「ユーヤ。地下牢で魔王を妖しい歌声で召喚しようとしていたとのことであるが事実かえ?」
「ち、ぅえっぐ…ちっがう〜ッ!俺はっ、!『魔王』がっ忘れられ、っく…なかっただけでぇぇーッ!!」
あんな強いインパクトのある曲、忘れられるわけないだろ!!
もう『魔王』に人生乗っ取られてんじゃねぇのかってくらい、事あるごとに脳内再生されるんだよ!こっちの意思関係なく!
「そうかえ…処刑じゃ」
「…王命仕りました!!」
あの優しい筋肉うさぎさんは一瞬で消え去った。もうその目は殺す気満々でハンカチも乱雑に奪われた。
俺を拘束していた2匹のうさぎの反対の手にそれぞれ持っていた槍を首筋に当てられて女王様のGO!の合図を待っている。
…さようなら、俺の短い人生。
…さようなら、涼。




