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あのねぇ、と一呼吸置いて話し始めてくれたのは青髭ひろこ。
語呂良いな。もうそれが本名ってことでどうよ?
ひろこ?
「私の愛の巣『Roseの花園』に火を放とうとする暴挙はこの際、忘れてあげるわ。…それ以上に辛い空気作り出してくれてたし」
「二重ですみません……」
「魔法って言ってもそんな便利なものじゃないのよ?まず魔法を発動する為の媒介、つまり魔力を魔法に変える物が必要なの♡特に覚醒したばかりの子なんて魔力も…『精神』も安定してないんだから」
そこ、強調しないでください浩。
そして納得したように頷くな3人ッ!!
「その媒介ってどんなの?やっぱ杖とか??」
「覚醒者が大切にしているもの、よ」
例えば私なら…と何やらゴソゴソと着ていたボロ雑巾のようなワンピースのポケットを漁り始める千紗。
…後でひろこに頼んでVIPサービス受けようね。千紗、平喜…。
ごめん、気付かなくて…。
「これ。私の媒介品『キティ』」
そう言って千紗の手のひらに乗せられていたのは、石。そう、その辺どこにでも落ちていそうな子供の拳サイズの石。
「……重くないの?」
「…多少は、まぁ」
媒介品って自分じゃ選べないし…。とため息を吐きながら呟く千紗。
「…でも、大切な物なんだろ?」
「……小さい頃…初めて……」
「うんうん」
きっと初めて平喜にプレゼントされた石、だったり亡くなった家族に託された物だったり……
「初めて………転んだ石なの。3歳の時…」
「…おう」
涼、流石に反応に困ってんな。
動揺してるのレアだから動画にでも撮っときゃ良かった。
「とにかく、魔法を使うのに必要なのは媒介する物と精神、あとは……そうね『想い』ね♡」
「「想い…」」
「そう♡助けたい、守りたい…なーんて強い想いよ♡…強い悪感情なんかでも使えちゃうんだけどね」
少し俯きながらアンニュイな雰囲気を醸し出し始めたひろこ。
…やめろ。期待する眼差しでチラチラと俺の親友を盗み見るのは。
聞かんぞ。お前の面白くも無さそうな昔話なんて。
涼もひろこの視線に気付いたのか全力で壁のシミをガン見し出してるし。
「ひ、ひろこ!お願いがあるんだけどッ!!」
助け舟出すぜ、涼!
「まぁ男の子からお願い♡なんて〜♡な・に・か・し・ら?♡」
青髭ひろこの青髭に明るめのコンシーラー塗ってくださ……じゃなくて
「この子達…千紗と平喜にも服、貸して欲しいんだけど、いい?」
「あらぁ〜先越されちゃったわね♡私から提案しようと思っていたところよ♡VIPサービス2名様ごあんな〜い♡」
「ちょ、え、いや…」
「…………無理だよ姉ちゃん。この上腕二頭筋には勝てないよ」
平喜の全てを諦めた呟きを最後にピンクデコの扉の先へと3人は消えた。
残された俺達は、というと暇そうな涼に猫耳のお裾分けをしたら案外気に入ったようで色違いを探して店内を漁り、見つかったグレーの犬耳で『ミント』『ハル』を使い映え写真を撮って暇つぶし。
その際頬に付いている猫ヒゲも毟り取った。痒い。猛烈に。
時折聞こえる閉め損ねた扉の隙間から漏れ聞こえる千紗の悲鳴を聞きながら…
そして20分後。ピンクデコな扉から意気揚々と全身をくねらせながら登場したひろこ、の後ろを付いてくるのは俯き表情の窺えないファンシーに変身させられた姉弟。
「おおっ!いいじゃん!」
「可愛いでしょう♡た・べ・ちゃ」
「も、もう満足でしょ!?早く出ましょう!!」
千紗に手を取られた俺、涼、そして血の気の無い平喜はひろこの言葉を待たずに引きづられるようにしてピンク店『Roseの花園』を後にした。
あのデコ扉の先でよっぽどの目にあったのか、千紗と平喜の憔悴しきった顔とその可愛く着飾られた装飾品でありありと分かった。
千紗は赤、平喜は青のくまさんに大変身!
フリフリゴテゴテしてはいるものの、これはこれで中性的な平喜の顔立ちも相まって姉妹みたいだ。
「…スカート?だっけ…初めて履いたよ」
「すっごく似合ってんぞッ!」
「……ありがとう」
気まずそうに目を逸らされた。そして元々無口だった平喜だったけど本当に喋らなくなった。
…気持ち分からなくもないけど。
それでも、あのボロ雑巾を巻き付けてるだけの格好よりは断然野生味が出過ぎている気もするが、俺はこっちの方が好きだ。
「さっさと移動するぞ。死刑は免れたと思うが国家転覆罪の容疑が晴れたわけじゃねぇしな」
そうだった…。俺、もう直ぐ指名手配犯になるんだった……。
いや、もうなってんのか…?
「…そうね。大通りから外れて裏道に入りましょ。そこに私の…実家があるから」
藁家に住んでた千紗達のご実家がチーズ大陸最大国のフォンデュ?!
何で藁家に住んでたの?趣味?
都会に疲れて田舎にーってやつ?
…んにしては、田舎過ぎる気も……住人もこの子達だけだったし、もしかして…
「ご近所付き合いに嫌気がさしてッ!?」
藁家の住人全員…ヤっちゃった?
「…涼。優也に妄想末期症状出てる。恥ずかしいから早く路地に押し込んで」
「了解」
「あぁあッ!藁家村民の皆様お気の毒にッ!!!」
オイオイと泣く俺の首根っこを涼が引っ掴み大衆の視線を大いに集めながら暗い路地へと引きづられた。




