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お母さん転生する  作者: 大島Q太
王都問題整理編
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07.お母さん、光らせる

 

 知らないキッチンは難しいわね。

『ごめんなさい。私もよくわからないの。ただ、魔力を流せば使えるはずだわ。手をかざしてみて』

 アリシアに言われた通り、水道の蛇口らしきところに手をかざしてみる。

 すると水が出てきた。すごい、TOTOの最新型キッチンのカタログで見た蛇口だわ。もう一度手をかざすと水は止まった。便利ねー。

「コンロは……」

 これも手をかざすとふわりと、青い炎が立ち上がった。完全燃焼の炎。ちゃんと、青いわ。何が燃えているのかしら。


『この世界はみんな魔力を持っているの』

「それはすごいわね。みんなというのは……」

『平民から、王まで。赤ちゃんから、お年寄りまで全員よ』

「まあ、すごい」

『だから、こういう魔道具が各家庭に普及されているの。と言っても、ここは伯爵家だから設備が揃っているけれど。平民の家は薪を焚いたり、井戸水を汲んだりすることの方が多いわ』


 火を消して、鍋と、フライパンを用意する。さすがリースマン特産である小麦粉は売るほどあるわ。

「そうなのね。やっぱり魔法って便利ね……テクマクマヤコンとか、アブラカタブラとかの世界ね。若い人にはエクスぺくとーとかかしら」

 フライパンをくるりと回して、コンロに置いた。

『そんなに便利なものでもないわ。魔道具がないとダメだし。そうねどちらかというと、スキルの方が便利ね。こちらは何もないところでも発動できるし。こういうコンロや水道なんかの魔道具はスキルを解析してつくられたのよ』

 そうなのねー。魔力っていわば、電気とか、そういうエネルギー的なものなのかしらね。


「そう言えば、教会でも医療系スキルとかって、ネリアが言っていたわね」

 そう言いつつ、卵をフライパンの上に落としました。じゅっといい音が立ちます。

『スキルについては、血が関係していると言われているわ。平民にはほとんどスキルはないし、逆に貴族のほとんどがスキルを持っていて、スキルの強さがステータスになっているのよ』

 焼けた目玉焼きを皿に移して、今度はフライパンに塩漬けのお肉と説明されたものと、パンを並べた。その間に、買って来たイワシに似たお魚を手でさばいていく。

『便利なスキルは爵位とは別に尊重されるわ。特別なものは持っているだけで敬われる』

 あら、暗い声ね。

『ええ、私のスキルは『祈り』よ。いわゆる外れスキル。今まで一度も発動したことがないの』

「持ってない人の方が多いのでしょう? あるだけマシではないの?」

 さばいた魚をざるに並べて、塩を振る。干したら干物になるかしら。パンをひっくり返すと良い色になっています。

『もっと領のためになるスキルだったらよかったのに』

「あら、アリシアさんはいつだって領のためを思っているのに。それだって立派よ」

 パンと目玉焼き、塩漬け肉を焼いたものに、刻んだ葉っぱを添えた。卵は普通に卵だわ。これなら茶わん蒸しや、オムレツなんかもできそう。小麦粉がたくさんあるのだから、うどんにもチャレンジしたいわね。


 とにかく、朝ご飯の完成ね。

「それにアリシアさん、できないことを数えても仕方がないわ。できることを見つけなきゃ……今はご飯よ」

 厨房の横にはちょうど、使用人用のテーブルがあった。そこに料理を並べて、ネリアたちを迎えに行きました。彼らは彼らで家の中の点検をしてくれていたようです。みんな働き者ね。


 集まってテーブルに着きました。こちらでの食事の作法が分からず、いったん、トムとネリアを観察することに。二人は手を組んで目をつむりました。

「神様。この糧に感謝いたします」

 トムがそうつぶやくと、ネリアも同じようにつぶやいた。なるほど。

「神様。この糧に感謝いたします。では、いただきます」


 トムたちはまるでごちそうを前にした子どものように目を輝かせながら食べていました。手の込んだ料理ではないのにこんなにうれしそうに食べてもらえると作った甲斐があります。前世の家族なんて……。いや、やめておきましょう。ここで初めて作った料理なのだもの楽しく食べなきゃ。


『待ってスキルが発動されているわ……どういうこと? 今までこんなことなかったのに』

 え?

「奥様、とってもおいしいです。これでわたしお仕事頑張れます!」

 ネリアがなぜか発光しながら、パンを口に運ぶ。まあ。

「ええ、私もがんばれますな」

 トムも発光している。あらあら、まあまあ。

 二人は残さず食べ終えました。わたしも慌てて食事をしました。


『あの料理に何か入っていたのかしら』

 隠し味は愛って、相場は決まっているのだけど。

『スキルについては謎が多いの。こればっかりは神様の気まぐれとしか説明のしようがなくて……』


 アリシアさんとの会話に集中していると、いつの間にかお皿が片付けられていた。

「あら、ネリアったら。片付けをしてくれたの?」

「奥様が作ってくださったんです。片付けくらいは私が」

 まあ、うれしい。

 ネリアを見ているとなんとなく、愛子さんを思い出すわ。

 笑った顔が似ているんだわ。愛子さん……。



『まあでも、今のところ。相手を光らせるくらいしかできていないのが現状ね』

 夜道にしか役に立たなそうね。

『彼らが光って見えるのはどうやら私たちだけみたいよ』

 アリシアさんがうぅーっと唸っている声が聞こえてきた。


 どうしましょう、スキルってなに?


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