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お母さん転生する  作者: 大島Q太
土木ギルド編
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01.お母さん、計画を立てる

土木ギルド編スタートです



 会計室の大きな机には、今後のリースマン領の財政と土木計画について話をするためローランと、パロットさん、グエンさんが座っています。

 わざとらしくコホンと咳払いをして、皆の顔を見ました。

「着手金は無事受理されました。その結果残り白金貨八枚を土木ギルドに支払わなければなりません。今のところ、取り戻した助成金から白金貨二枚。ブライアンの王都で保持していた資産を処分して、白金貨三枚。合わせて五枚まで貯まりました。ですが領のためにパロットさんの男爵位推薦に白金貨一枚。リコリコ工場の契約に白金貨一枚を払いました」

 つらつらと、お金の話をしています。

 三人が神妙な顔で聞いています。


「その結果、土木ギルドに支払わなければならない目標額まで、残り七枚ということになります。目標は二月着工なので、今から二か月後までにです。これはちょっと大変です。なので、わたしは考えました。工事費自体を減らしてもらってはどうかと」

 アリシアさんは静かですが、うんうんとうなずいている気配があります。


「……わたし、ちょっと考えました。本当に今の堤防がそんなに壊れてしまっているの?と。というのも、金貨五枚という大金を、毎月維持費としてを支払っていますから……ほんとうに、工事が必要なのか。見極めるべきではなかろうかと」


「月の修繕内容は報告が上がっており、適切だと思われます」

 と、答えたのはグエンです。

「土木ギルドの人間は嫌いですが、仕事はちゃんと職人の誇りを持ってしてくれていると思います」

 と、ローラン。

「私は堤防を見たことがないので、見てみたい気もします」

 と、パロットさんが意見を言いました。


「分かりました。実はうれしい報告があるのです。水路航行ギルドの皆さんが、新しい堤防の形を考えてくださいました。それを採用すれば、今までの堤防の長さの三分の二で済みます。さらに、維持するのもとっても楽になるそうなのです」


「水路航行ギルドが……。それはとても危険ですね」

 グエンさんが呻くように呟きました。

「……なぜ」

「越権だからですよ。水路航行ギルドはあくまで、水路を安全に航行するために川の中を保全し、土木ギルドは陸地を守るために陸を保全する。要するにですね、水路航行ギルドの管轄は川の中。土木ギルドは陸地。その不文律を水路航行ギルドが侵し、陸地である堤防に口を出せば土木ギルドが黙ってはいないはずです」


「そこなのですが、水路航行ギルドは浚渫のために、川の形を変えようとしている。つまり、ぎりぎり、川の中の話なんです」


 グエンさんが口を開いて、閉じてを繰り返します。彼は三代に渡り我が家に仕えています。つまり土木ギルドと領の歴史に一番詳しい人です。

「何か言いたいことがありますか?」

「土木ギルドの機嫌を損ねれば、いざというとき堤防を……」

 グエンさんはそう言ってわたしとローランを見ます。


「それを土木ギルドが言ってきているなら、脅しですよ」

 グエンさんがぐっと黙ってしまいました。


「お母様ですが、今まで続いてきたということには、意味があるのではないでしょうか。いきなり踏み込んで、おかしいというのはちょっと乱暴な気がします」

 グエンさんはローランの言葉にうなずいていました。


「ええ、ローランは公正ですね。でも、領民の命と生活が懸かっています。ですので、ここはしっかり知るために、皆で一度、堤防を見に行きましょう」


 やっと、三人が同じようにうなずいてくれました。


「差し当たっては、お尻が割れるじゃんけんを」

 部屋内に緊張が走ります。

「あの、スコットさんが荷台に簡易ベンチを作ってくれたので、前ほどお尻は痛くないそうです」

 グエンさんが素敵な報告をしてくれました。

「荷馬車にベンチ……」

 ローランががっくりしていますね。言いたいことは分かります。荷馬車にベンチなど作ってしまったら、当分移動は荷馬車だなって思ったのでしょう。ですが、馬車は高い。

「ローラン様、ひっくり返せば、箱になるので有用だそうですよ」

 グエンさんのよく分からないフォローが入りました。創意工夫、スコットさんありがとう。

「それでは、じゃんけんです」


 そして、結果はパーをそのまま高く掲げているローランと、グエンさん。床でグーを握りしめているわたしと、パロットさんに別れました。パロットさんは、初荷台デビューです。


「お母様、すごく根本的なことを尋ねるのですが、お母様は堤防を見てその善し悪しが分かるのですか?」

 ローランは手を下げながらそんなことを聞いてきます。


「どうでしょう。見てみないと分かりません」

「それは、分からないということでは?」

「……」

 黙ったわたしをローランが冷たい目で見降ろしています。


 どうしましょう、ローランがどんどん手ごわくなります。


 



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