21.お母さん、話が進む
事業計画書完成しました!
ジャガイモと、最終日のスープをコーンスープにすることで、材料費を押え何とか実現できそうです。
試作については、私ではなくカイラーに一任です。指示書を見て作れるかがポイントなので、それも、カイラーならきっとできてしまいますね。
そして、そろばんですが、まんまとロバートさんに見つかってしまい《商機》が見えたそうです。リコリコの工場をそろばん工場にされそうで怖いです。なぜなら、ローランがそろばん工場に乗り気だからです。
なんで!
何はともあれ、今日はさっそくカイラーと試作です。
「奥様、このいい感じって指示なんすか」
「ホワイトソースのところね。こう混ぜてたらいい感じに……」
「たぶん、これは「匙に重みを感じて、とろみがついてきたら」ってことだと思います」
マリークが言葉を考えてくれます。言語化のプロだわこの子。
そんなことをしながら、レシピも完成しました。
* * * *
ではみんなで水路航行ギルドに向かいましょう。
「御者台は二席。乗る人間は四人。荷台に乗るのは誰と誰が乗りますか?」
パロットさんが皆の顔を見渡します。これは誰のお尻が割れるかの話ですね。
「一番にどうにかしないとだめなのは、馬車でしたね」
ローランが遠い目をしています。
「安心してください。水路航行ギルドからクッションを借りてますから」
私は高らかに宣言しました。
そのせいで、荷台はわたしに確定し、ローランは大人に譲りました。
そんなわたしたちをさらに打ち付けたのは、出迎えてくれたカーミットさんです。
「ロバート、言えば馬車くらい出したのに」
出したのに……出したのに……出したのにっ!!
「要するに何をやるにも計画性が大事だってことじゃないですか」
わたしが悔しがっていると、ローランがため息を吐いて言いました。「正論過ぎて返す言葉もありません」と。
ありませんが、あなたも御者台か荷台かで争いましたよね。
いいです、帰りにクッションを倍借りますから。
そして、事業計画ですが、すんなりと通りました。
ローランとハイタッチしましたね。
その帰りに、リコリコの工場になる予定の倉庫にも寄りました。
水路航行ギルドと同じく赤レンガの建物でした。
「まあ、とってもいいところね」
「でしょう? 水路航行ギルドへの距離も近いですし、王都への発送にも便利な立地です」
ロバートさんが言います。なるほど、そう言うところも見なければならないのね。
「お母様、今なるほどって顔をしましたね」
ローラン……どうやら、ロバートさんになれてきたようで、口がいつも通りです。
「あなたたち親子は仲が良いですね」
ロバートさんが苦笑いをしています。
「反抗期で困っています」
「……なっ」
パロットさんが噴出しました。
「リコリコの工場は布なので、二回を作業場にしようと思います。そろばんですが、あのクラックガラスを作ってくれた彼が独り立ちをするそうなので、引き抜きましょう」
「ガラスのそろばんにするんですか? 落としたら割れそう」
「確かにそう言う懸念もありますね。ただ彼を引き抜けば、クラックガラスもリースマンでつくれます」
ロバートさん……、本当にリースマンとの共同経営を考えてくれていたのですね。
「この共同経営ですが、私個人と、リースマンで進めることにします。あなたを下手に他の利権者と関わらせてはダメだと判断しました」
振り返ると、ロバートさんがあの商売人の目をしていました。きっとこの目が《商機》を見極めている時の目なのでしょう。
「差し当たって、うちの孫と、ソフィア嬢の婚約を結ばせてください」
急転直下です。
「ローラン、返事をして差し上げて」
「えええ?……えっと、これから新しい商売をするにあたって、信用以上の縁を結ぶには婚約は妥当かと思いますが。本人たちの気持ちや、お孫さんの両親……息子さんの許可もいただいてからにしませんか」
ロバートさんは、良い笑顔でうなずきました。
「きっと、うちの孫はソフィア嬢を気に入るでしょう。それに、婚約が決まればソフィア嬢の教育については花嫁修業代として我が家が負担しましょう」
会話をしているだけなのに、鋭い拳でめちゃめちゃに打ち込まれている感覚がします。やっぱり、ロバートさんって怖い人かもしれません。ですが、これは不安な時のロバートさんのやり方だと知っています。友達ですから。
「ロバートさん、また商人になっていますよ。言いましたよね。そんなにがちがちに言いくるめなくても大丈夫だと」
ロバートさんは驚いた顔をした後、顔いっぱいに笑顔を浮かべました。
「そうでした。うちと仲良くしてください。共同経営者として」
「そうです、それです」
どうしましょう、誰も彼も手がかかるわ。




