17.お母さん、売ります!
今日はマーリンに手伝って貰ってドレスです。
身頃は薄いクリーム色ですが、裾に向かって淡いピンク色になります。どことなく牡丹を思わせるふわふわとしたスカートです。
もちろん、身体はアリシアさんの記憶がありますから、裾さばきは完ぺきです。
「おかあさま、きれいです」
ソフィアがにっこりと笑って、ドレスを褒めてくれました。
「ソフィアは毎日可愛いですよ」
と言うと「ありがとうございます」と嬉しそうにはにかみました。反抗期男子からは一言もありません。
朝食は、すっかり開き直ったカイラーがいつも通りの朝食を出してくれました。
「もう何出しても怒らないって分かったんで」と。パン、スープ、今日は卵焼きね。少し甘い味付けがおいしいです。
「ロバートさん、今日の予定は?」
「特にはないですね。伯爵の仕事を見せてもらえますか?」
なんと……受けて立ちます。
「ええ、分かりました」
食事を終えると、皆それぞれの部屋に戻ります。ローランはパロットさんと会計室に、ソフィアはマーリンと自分の部屋へ。わたしと、グエンさんとロバートさんは、執務室へ向かいました。
既婚者とはいえ、男性と部屋に二人きりは良くないそうですよ。
まず初めにパロットさんの男爵位の推薦状を作りました。様式とかは、アリシアさんが教えてくれるので、わたしはそのまま書くだけです。
「パロットさんをリースマンの寄子にするんですね」
「はい。とっても優秀ですから」
「なら私も一筆足しましょうか? 確実になりますよ」
『注意して、名前を書けばリースマンと、ベルナールが後ろ盾になることと同じよ。パロットさんには心強いかもしれないけど。商業ギルドに駆り出される可能性があるわ』
まあ、さっそく罠です。
「パロットさんに、選ばせてあげてください」
「……ほう、疑うことを覚えたんですね。素晴らしい」
ロバートさんが嬉しそうに言いました。そうね、王都では何も考えてなかったから言われるがままでしたが、ここに来て少しは学んだのよ。ドヤァ、です。
「小鼻が膨らんでいますよ。アリシアさん」
「……」
パロットさんの推薦状は封筒に仕舞いました。
「そう言えば……」
「分かりやすく話題を変えましたね」
「いいえ、本題に入っただけです。先日お話したつまみ細工の話をしましょう」
「あの花飾り」
ロバートさんがにっこり笑いました。
よかった、覚えていてくれたみたいです。
わたしはあらかじめ用意していた箱を恭しくテーブルの上に置きました。
ちょっといい箱に布を張って、きれいに見えるように収めてみました。それなりに素敵なカチューシャに見えるでしょう。
「では作成方法を登録しましょうか」
「カーミットさんのところで学びました。登録すれば他の人が勝手に使えないのですよね」
「ざっくり言えばあっていますが、こういうものはすぐに類似品が出てきてしまいます。ですが、一番に登録すればあなたが本家だと言える。そして、この花の飾りが店に並ぶとき、その呼ばれ方を決めることができます」
ロバートさんが、きらりと目を光らせます。
「これはリースマンの何と呼ばれたいですか?」
ああ、なるほど。ウィンナーはたくさん種類があっても、シャ〇エッセンを名乗れるのは一つだけ。そう言うことでしょう。日本〇ムの部分がリースマンで、シャ〇エッセンの方を今決めなければならないわね。
リースマン領の……リコリコ。
「リースマンのリコリコが良いです」
「リコリコ、響きは可愛いですね。どういう意味が?」
「……秘密……あえて言うなら大切なものです」
『よしこさん』
でもその名前を付けてしまったら、もう、死に物狂いで売らなければいけませんね。絶対失敗できない。
これは覚悟の名前でもあるかもしれません。
「では……『リースマンのリコリコ』として、商業ギルドで登録させていただきます」
それからは作り方を分かりやすく絵と文で書きました。
「売れるかどうかは分かりません。ですが、商業ギルドに登録することが第一歩です」
ロバートさんは文の言い回しなどのチェックをしています。かなり訂正が入ってしまいました。
「それで、こちらのカチューシャはおいくらくらいで買い取っていただけますか?」
ドキドキです。
「銀貨五枚でどうでしょうか?」
わたしはグエンさんと目を合わせます。グエンさんはうなずきました。
「ではそれでお願いします」
「それと、あのクラックガラスと糸のビーズの耳飾りと首飾りも。それぞれ、銀貨五枚で買取させてください」
まあまあ、いっぱい売れる!
グエンさんも驚いています。
どうしましょう。もう白銀貨一枚も売り上げてしまいました。




