04.お母さん、反省する
種明かしをされました。
どうやらローランは到着してすぐ、カーミットさんに会って、私を説得するようにお願いされたそうです。
「ローラン!」
叱りましたが、ローランはそっぽを向きます。
「怒らないであげてください。私も考えなくお願いを聞いたのではありません。もっともだと思ったから乗りました」
カーミットさんがローランのフォローをしてくれますが、わたしはカーミットさんの中でどんな人物だと思われているのかしら。
カーミットさんはごまかすように笑います。
「お母様、カーミットさんもこうおっしゃっているのです」
「ええ、ですから計画をしっかりと練ればいいのでしょう」
「私は商売などしなくてもいいと言っているのです」
まあ、まるで平行線だわ。
「伯爵はどうして、今にこだわるのですか」
「今、リースマンにはお金がありません」
「……はい」
「でも、お金を持っている人はいるんです。土木ギルドのように」
「……」
「だったら、そのお金を領内で使ってもらえばいい。そうすれば、商人も来る、人も来る、仕事も増える。そうやって少しずつでも人を増やし、お金を動かして領地をお金持ちにしたいのです」
「ですが、あなたは一番身近な人さえ説得できていないのが現状です」
『正論ね』
カーミットさんのみならず、アリシアさんまで追い打ちを掛けます。
アリシアさん、応援してくれているのではないの?
『応援しているわ。でも、カーミットさんの言葉を聞いて納得しているの』
「なら、ローランの説得を……」
「……どうやって?」
今日のカーミットさんはすごく意地悪ですね。
「私も実は貴族階級出身でした。家を継いだのは兄で、私には何ももらえませんでした。お金のない苦労は分かるつもりです」
ローランは驚いて顔を上げています。
「商売はギャンブルに近い。うまくいけばお金は儲かるが、失敗すれば借金が膨らむ。それを分かっておられますか? ローラン君が心配しているのはなぜかって。ぎりぎりの生活をしている領主が、さらに商売という不確実なものに投資しようとしているからですよ」
わたしはぴしゃりと水を浴びたように熱が冷めました。
独りよがりだった……のね。
頑張ればなんとかなる、わたし一人で何とかすると思うことで、周りがどんな風に心配してくれているのか分かってなかったのです。
ローランと、ソフィアのお母さんなのに二人の心配を無視しようとした。……そして、領民たちが頼れる領主はわたしだけなのに自覚が足りなかった。
「カーミットさん、ありがとうございます。ローラン、ごめんね」
頭を下げるわたしに、カーミットさんは優しい笑顔をしていました。
「ローランくん、どうでしょう。ちゃんと、あなたの気持ちも身に染みたみたいですし。ここは機会を与えては」
驚いて顔を上げローランを見ました。ローランの目にはぎゅっと力が入っています。その横顔はひどく強張っていました。
わたしはローランを悪者にしてたのだわ。真面目過ぎて分からず屋だと決めつけて。
『相手を加害者にしないために振舞う』それはアリシアさんから言われたばかりの言葉だった。
「謝るのも違ったわね、ありがとう。ローラン。私の代わりに領地のことを大切に思ってくれて」
ローランがこらえるように、ぎゅっと目をつむりました。そして、カッと目を見開くとカーミットさんを見ました。
「カーミットさん、二つ目の案をお願いしてもいいでしょうか?」
「どうしても、伯爵が引き下がるなら……水路航行ギルドの食堂で試してみるという話です」
カーミットさんはうなずく。
「開店期間は三日間です。引き受けていただけますか?」
わたしはローランと、カーミットさんを順にみた。
そして深く頷きます。
「では、まずは計画書を出してください」
「はい」
「しっかり、相談できるところは相談してください」
「はい」
せっかくローランが考えてくれて、カーミットさんが機会をくれたのだもの全力で頑張る。
どうしましょう。頑張るって独りよがりじゃダメなのね。




