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お母さん転生する  作者: 大島Q太
領地子育て編
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38/72

14.お母さん、コロッケをつくる

 


 家でつくっていた頃もコロッケって手間のかかる料理でしたが、この世界でつくるのもまた手間でしたね。

 主な材料は、ジャガイモ、玉ねぎ、ひき肉それに、小麦粉、卵、パン粉。

「マリーク。ジャガイモはゆでてつぶしてくださる?」

「はい」

「それから、ひき肉は……」

「これを使ってください」

 カイラーが出してきたのは、骨付きのお肉の塊。

 二人がかりで骨からスプーンでお肉をこそげて使いました。良いお肉を刻むのは申し訳なかいかもというとでてきました。それに、こそげたお肉の方がうま味が強いかもしれません。それにしても、骨になってしまうと何の肉か分かりませんね。

 ですが、とっても贅沢です。


「そしたら、刻んだ玉ねぎとひき肉を炒め合わせます」

 あら、お塩で味付けして、それをマリークにお願いしたジャガイモに混ぜます。少し量が多かったので、つぶしたジャガイモを少し横に除けておきます。


「あとは、少し冷ましてから形を整えていきます」

「へー奥様、ほんとに練習されたんですね。手際が良い」

 カイラーが感心したような声を上げます。

「ふふふ、そうなの。じゃあ先にさっき除けたジャガイモをポタージュにしましょう」

「なるほどっすね!」

「骨があるなら、出汁もあるわよね?」

「ブイヨンっすね」

 どうしましょう、カイラーって打てば響くわ。とっても有能。

 ジャガイモに目分量の牛乳、ブイヨンを混ぜて塩コショウで味を付けた。

「へー、カンタンっすね」

 マリークもやってきて、何やらメモを取っています。

 あら、でもやっぱり味付けが難しいわ。日本ならコンソメキューブがあるから一発なのに。

「ちょっと、味を見て。カイラー」

 カイラーはちゃんと新しいスプーンを持ってきて味を見てくれます。

「ああ、これは……」

 そう言って、何やらはっぱを刻んで混ぜた。

「あら、格段においしいわ」

「これはいいスープっすね。ジャガイモなら原価も低いし。うちの貧乏厨房にぴったりだ」

「ああ!カイラーさん。奥様の前で!」

 マリークが慌てている。

「いいのよ、その通りだから」


 そして、コロッケのタネが冷めたら形を整えて、小麦粉、卵、パン粉の順でつけていきます。

 パン粉もガリガリとパンを削りました。小麦粉もゴリゴリ石臼で挽きました。すべて力がいります。厨房に男性が多いのも納得ですね。それにしても、日本の環境がいかに恵まれていたかを思い知らされます。


「ではここまでできたらあとは、揚げていきます」

「なるほど、贅沢ですね。大量の油をつかうとは」

「油は……貴重なの?」

「ええ、はい」

 聞くと驚く値段でした。大きな声では言えませんが、一瓶で銀貨一枚だそうです。


「でしたら、揚げ焼きにします」


 ……そうなの。油は貴重なのね。なら、ヒマワリ油や、紅花油なんてどうかしら。紅花油なら、紅花も取れるし……。ひまわり畑は遊水地につくるといいかも、紅花は確か高地でないとだめだったかしら……でも、山の斜面ならよかったはず……おぼろげな知識しかないわ。


 そんなことをつらつらと考えていると、カイラーが声を掛けてきました。

「奥様、どれくらい焼いたらいいですか」

「えっと、キツネ色……キツネっているのかしら」

 そう悩んでいる間に、良いタイミングで返してくれました。任せたほうが良さそう。

厨房内は香ばしい、いい匂いが漂っています。


「ああ、なんかおいしそうですね」

 カイラーがごくりと喉を鳴らします。

「食べてみます?」

「はい!」

 カイラーはかぶせ気味に返事をして、ルンルンとコロッケを全方向から見つめたあと、ぱくりと食べました。目がきらきらと輝いています。

「うまいです!これ!」

「よかった」

 あらやだ、また顔が光っているわ。


「カイラーは食べること全般が好きなのね」

「ええ、小さいころから飢えてましたから」

 まあ、なんだか。領主として申し訳ないわ。


「なので、料理人は俺の天職っす」

 こういう子はすぐに上達します、上達してたわね。頼もしいわ。


「味見にしては、量が多いわよ。カイラー」

「ええ、味はしっかり覚えました」

 隣でマリークもほっぺを膨らませて、おいしそうに食べています。


「これがコロッケよ」

 二人が揃って拍手をしてくれます。私は胸を張りました。

「これだけあれば、今日の夕食は足りそうじゃない?」

「そうっすね。今日はこれをメインにさせていただきます」

 カイラーはうなずいて、残りも揚げはじめました。


 なんと、領主邸のパンはカイラーの手作りだそうだ。

「すごいわ。今度教えてくださいな」

「いいっすよ」

「あ、でしたらうどんの作り方を教えるわ!」

「なんすかそれ!」

 カイラーは、大げさなリアクションで笑っている。


 どうしましょう。ここにきて素敵な料理仲間ができました。



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