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お母さん転生する  作者: 大島Q太
領地子育て編
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36/69

12.お母さん、プレゼンする

 


「皆さま、お集まりくださりありがとうございます。アリシア・リースマンです」


 こういう時、一気にしゃべってしまうのは緊張が加速するので、ゆっくりしゃべるのがコツです。PTA役員の時、お話が上手なお友達にそう教わりました。ですから、慌てず少し皆様をゆっくり見回して、間を取りました。


「まずは皆さんに良いお知らせがございます。今年の築堤工事の時期が決まりました。春には始められます。今年は水路航行ギルドの方が特別な工夫してくださるので、今まで以上に良い堤になりそうです」



「それは夏の大雨の前に終わるということですか?」

「予定ですが、そうなります」

 こういう時は言い切ってはダメなのよね。あの時言っただろってなりますから。まあ、わたし政治家してるわ。

 集まったみなさんが、嬉しそうに顔をほころばせます。

 なんだかこの顔を見るだけで、この村の人たちがどれだけ洪水を恐れているか分かるわね。


「ですが、ここからは悪い知らせです。我が領は残念ながら貧乏です」

『よしこさん?』

 村の人たちが絶句しました。ローランも顔色が悪くなりましたね。

「……伯爵」

「はい」

「それは工事が止まるということですか? 金を出せと脅しておられるのですか?」

 一番年が上に見える方がそう言いました。

「いいえ、工事費は今まで通り伯爵家が出します。これは確約です」

「ですが、貧乏なら……税を上げるしかお金は集まらないのでは……?」


「まわりまわれば、皆さまから頂くことには変わりませんが」

 部屋の中がいっそうにぎやかになりました。ローランは渋い顔をしてこちらを見ていますし、アリシアさんは先ほどから「あ」しか言えていません。

「勘違いしないでください。皆さんの懐を潤わせたうえでそこから出していただくという話です」


 さらに室内がざわめきました。

「麦も豆もこれ以上畑は広げられない。森も伐りすぎれば山が崩れるだろう」

 ああ、皆さま本当に真剣に今まで考えて来られたのね。だから、こうやってしっかりと話し合いになっている。

「ええ、おっしゃる通りです。量はこれ以上増やせません。であるならば、上げるのは質です。今あるものの価値を上げていくのです」

「……は?」

 先ほどまで引いていた皆さんが、どんどん前のめりになっていますね。

「例えばこのトウモロコシのお茶も、失礼、失敗して少々苦いですが……そもそも、家畜に食べさせる。いわば捨てるものですが、これが売れたらどうでしょう」


 ここは張り切って、ポーズを決めます。親指と人差し指で丸を作ります。

「お金です」

「例えば、ジャガイモ。これを調理して売れば……お金です」

 皆さん、ざわざわし始めました。

「そして、川の魚。これも干物として加工して売れば……いっせーのでー」

「「おかねです」」

「そうです」

 やや、マルチ販売っぽくなりましたが、会場全体が一体になりましたね。

「皆さまには信じられないかもしれませんが王都は様々なものが売れます。そして、同じものより珍しいものが売れます。そして、リースマン領には王都まで運べる川があります」

「……お母様。それは」

 少々、はったりを入れたのがローランにはバレたようですが、にっこりと返します。

『よしこさん? そんなことを言って大丈夫なの?』

 ええ、まあ、前の世界でも山の葉っぱを料亭に売って年収1億とかありました。嘘ばかりではありません。この世界で通用するかは分かりませんが。


「伯爵さま、でも信じられないです」

 村人がぽつりとつぶやきました。それが本音ですよね。分かります……わたしもそうなったらいいなをしゃべっていますから。どうしましょう。こういう時は、トライ&エラーですね。


「分かりました。皆さまより先にわたしがやってみせます」

「……おかあさま!?」

 ローランが慌てています。


「皆さままず、わたしにトウモロコシと、ジャガイモを売ってくださいませ」

「買い取ってくださるんですか?」

 村人たちがまた前のめりになりました。

「はい。たちまち、今どれくらい余剰がありますか?」


 村人たちはいっせいに、部屋から出ていきました。隣を見るとローランが天井を見上げています。

「お母様。そんなお金どこから出すんですか」

「そうね。適当にいらないドレスでも売ろうかしら……そうだわ。カチューシャがあるわ。ロバートさんが欲しがっていたから、ふっかけましょうか」

「誰ですか、ロバートさんって」

 誰と言われても説明しがたいわね。

「都会の偉いけど、暇人の人よ」

「あやしい人脈は、リースマンの利益になりません」

「大丈夫よ、ベルナール侯爵家の方だから」

「はあ??侯爵家??」

 ローランが今日一番の大きな声を出しました。


「ダメだ、わたしの理解が追い付かない。もう話しかけないでください」

 ローランはそう言って、真っ白になりました。大げさな反応ですね。


 親子の会話を楽しんでいると、トウモロコシと、ジャガイモが届きました。

 木箱に二つずつ大量ですね。

「これを……銀貨一枚で」

「この家畜の飼料をそんな大金で買い取れと?」

 あら、ローランが復活しました。

 ちょっと計算しますね。木箱を開けると、立派なトウモロコシと、ジャガイモでした。


「分かりました。ではわたしはこれを王都で銀貨三枚にしてみます」

「……お母様?」

 わたしはお財布にあったなけなしの銀貨を一枚机の上に載せました。

 ローランが頭を抱えています。

『……まあ』


 どうしましょう、宣言したからには売らなければね。



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