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お母さん転生する  作者: 大島Q太
領地子育て編
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32/71

08.お母さん、土木ギルドに行く

 

 移動は我が家の荷馬車ですが、御者台は二人までです。つまりここにいる三人のうちひとりは荷台です。

 そして、ローランと、カーミットさんが譲り合った結果、荷台に追いやられたのはわたしでした。

「伯爵令息を荷台に乗せることはできません!」

「でもカーミットさんは、ギルドの支部長です!」

 譲り合っているでしょう?

「でしたら私が運転しましょうか?」

 カーミットさんが名乗り出てくれます。

「ということなので、お母さまが荷台でいいですね」

 ローランの圧強めの笑顔に押されてしまいました。


 わたしは流れる景色を見ながらほぅっとため息を吐きます。


 ローランはカーミットさん相手に次々と質問をして楽しそうに聞いています。

 やっぱり、男の子には男親が必要なのかしら、なんて思いながら川風を受けます。水路航行ギルドが貸してくれたクッションなかなかいい仕事をします。あまり痛くありません。



 * * * *


 到着した土木ギルドは、川から少し離れたところにありました。ギルドの建物の横には大きな丸太が積んであります。建物はログハウスのように木を組んだ趣のある佇まいです。この建物が彼らの技術力の高さを見せつける良い宣伝材料になっているようですね。

 荷台から降りようとすると、カーミットさんが手を貸してくれました。ローラン……彼は物理的に距離を取ってきます。反抗期ですね。


 扉を開いて、室内に入りました。

「ごめんください。アリシア・リースマンです」


 おお、なんという圧のある視線でしょう。部屋の右半分は設計ができるよう斜めに傾いた机が並び。もう左半分には何やらいろいろ散らかった大きな机が二個置いてあります。おお、男所帯。そんな言葉が浮かびます。


 ここでの出番はわたしにはありませんでした。

 ほとんどカーミットさんとローランが二人で説明してしまいましたし、何やら盛り上がってすらありました。

 わたしが活躍したのは三角の模型を作るところだけでした。

 そこも不器用すぎて、結局は職人さんの手を借りて完成しました。可愛くて小さいものができたものですから、一つはお土産にいただくことにしました。


 それでも時間を持て余していました。

 あら、土木ギルドではお昼ご飯の時間みたいです。わたしはそちらの手伝いをすることにしました。

 見ているとざっくり切ってざっくり混ぜて煮ようとしました。玉ねぎは炒めた方が甘味が出ますし、先にお肉を炒めて油を出しておいた方が、野菜全体に脂が回っておいしいのよ。

 パンは少し湿らせて焼くとふっくらするし。なんて気づけば指示を出していました。

 出来上がったのはトマトと豆のスープと、野菜炒めを挟んだパン。それにたくさんの目玉焼き。すごくたくさんの量です。


「……お母様」

 ローランがとっても低い声を出しています。

「なあに?」

「あなたは伯爵でしょう」

『ごめんなさい。もう面白くて止められなかったわ。周りを見て困惑してるのはローランだけじゃないわ。さっきから皆あなたのこと、なんだこいつって目で見ているわよ』

 くすくすと笑いながらアリシアさんが教えてくれました。


 わたしはそっと周囲を見回しました。

 ……本当だわ。

 皆さん、料理を食べる手は止まっていないのだけれど、ちらちらと、こちらを見ています。

「あの、おいしいので自分は全然!」

 体格のよい子が顔を輝かせながら言ってくれました。

「そう、よかった」

「あの……オレも勉強になりました」

 一緒にお料理していた子が言ってくれます。ですがローランの目は鋭いままでした。


「……次からは気を付けるわ。失礼します」

 わたしはまた土木ギルドの皆と話し合いをしていたテーブルに座りました。

 あらやだ、食べている子たちの顔が皆、物理的に光ってるわ。タウンハウスでの食事の時もそうだったわね。どうやら、気のせいではなかったよう。見ていたら笑いそうになるので視線を逸らしました。


「お母様、何を笑っていらっしゃるのですか?」

 どうやらローランには、笑っていたのに気づかれてしまったみたい。

「皆さん、おいしそうに食べてくださるなと思って」

「……料理。できたんですね」

「あら……今度家でも作ってみるわね」

 ローランはおいしそうに食べる土木ギルドの皆さんを見て、うなずきました。



「ところで、お話はどこまで進んだの?」

「スキル《土魔法》持ちの方に地形を再現させ、試験をしてみることになりました」

 スキル……ああ、血がどうの、貴族がどうのの。

 そうだわ、私が作ったものを食べて顔が光るのは、スキルのせいかもしれないって、アリシアさんが言っていたわね。

『ええ、これで少なくとも、あなたの料理を食べて光ることが偶然ではないとはっきりしたわ』

 顔を光らせるスキルなんて。

『今まで発動するのを楽しみにしていたけど、ただの面白スキルだったわね』

 けれどあなたの真面目で努力家なところを評価してくれる人もいる。スキルなんておまけでいいのよ。

『ありがとう、よしこさん』

 それにしても光って見えているのはわたしだけみたいね。

『そうね』

 つくづく、不思議なスキルね。

「お母様? なにか考えごとですか?」

「ええ、ちょっとね」

「……お母様を見ていると、次は何をするのかと心配になります」


 どうしましょう。ローランが心配してくれたわ。

 


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