↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お母さん転生する  作者: 大島Q太
王都問題整理編
PR
23/72

23.お母さん、悩む

 ロバートさんは夕食を食べて、発光しながら帰っていきました。

 それを見届けて、自室に戻ります。


 そして、また頭の中に広がるのはあの「公妾」という頼まれごとです。

 私はさっさと部屋着にしているゆるいワンピースに着替えました。これを着るとあとは寝るだけ、と心の底からほっとします。ばさりとベッドに寝転がるとうーんと伸びをして、天蓋を見つめました。


 そして二人で脳内会議です。

「アリシアさん、わたし公妾という役目のことを何も存じ上げないのだけれど。アリシアさんはどこまで知っているの?」

『公妾は伴侶のいない高位貴族の妻の仕事、つまり女主人を代わりに務める人のことを言うの。どこまで家庭に口を出すかは、契約で決められるけど。社交の場でのパートナー。私邸の経営。子どもの教育。夜のお相手も含まれているわ』


「それって、愛人じゃない」

 公爵様、あんな紳士な顔をしていてなんてことを頼んできているの。


『この世界では『公妾』ってちゃんと歴史のあるお仕事なのよ。はるか昔、初めて公妾となられたレディ・カバナンは王の相談相手として、政治にも深く関わったとか。とても聡明な方で王の良きパートナーだったと伝えられているわ。それ以来、制度としても確立されていて、選ばれる人にも条件があるの。ひとつは寡婦、もしくは既婚者と決まっている。そして、伯爵家以上で、高位貴族の隣に立っても差し支えないマナーと教養を持つ人ってね』


「既婚者……」

『ええ、世継ぎや、遺産で揉めないためよ。帰る家庭があるからこそ、仕事として務められる』

「要するにあなたは公爵夫人にはなりません。あなたの子どもが公爵家を継ぐこともありません。あなた自身の家庭を捨てる必要もありませんってことね。合理的だけど、女性側には何のメリットもないわね」


『メリットは、お金と、後ろ盾ね』

「ああ……公爵様もそうおっしゃってたわね」


「でも分かったわ。要するに……由緒ある愛人ね」

『よしこさん、はしょりすぎよ』


 アリシアさんは小さく咳払いをした。

『もうちょっと情緒を考えましょうよ』


 ごめんなさい。でもこの国にもたくさん、既婚者はいるでしょう。それこそ、石を投げれば当たるくらいには! どうしてアリシアさん、あなたにお願いしたのかってことが気になるわ。


『公妾は契約者と結婚できないというルールは、建前でやはり特別になりたいと、迫る人も少なからずいるのよ。それは、女性側からだったり、男性側からだったり。でもアレク先輩は亡くなった奥様を愛している。だから、私なら愛することはないってことじゃないかしら? それによしこさんも靡かなかったし……愛されたくもないのだわ』

「……アリシアさん」

『ちょっと振られたみたいな。雰囲気を出すのはやめて。確かに、ほんのりだけど好きだった時期もあるわ。だけど、今は私と同じように子ども二人を育てながら公務もしてって、そういうところに親しみを感じていただけだから』

 アリシアさんがごまかすように慌てて言いつのっています。

 そうね。アリシアさんはずっと領のために頑張ってきたんだものね。

 でも手っ取り早く再婚すればいいのに、面倒な公妾なんて制度がなぜあるかってことよね。世継ぎと、遺産も理由になると思う。だけど、踏み込ませないための柵であるのかもしれない。


 死んだ人に誠実なのも大変ね。うちの夫なんて、きっと今頃、もう……真子を……。

 ぎゅっと頭を押さえて、思考を飛ばした。

「……比べるものでもないわね」


「うん、わたしは……まだ決められないわ。だって、子育てもするって、相手のお子様を見ていないし。子どもを預かるって、命を預かるってことだもの」

 そして顔を上げて天井を見上げる。

「でも、一番はアリシアさんの心を守りたいの。あなたはどうしたい?」

『分からないわ。でも、私のままでアレク先輩に会っていたら、こんなお話は出なかったと思う』

 少し、落ち込んだ声でした。

『よしこさんって、ほんとにアレク先輩に全然興味がなかったもの。私にはできない』


「それはだって、直樹(息子)より年下なのよ?」

『……ああ』

 ということで、このお話は受けるか受けないかは、まず相手方とどういう契約をするかね。子どもが絡むなら子どもに会いたい。お金の面もどこまで出してくれるのか。後ろ盾も……。

 こう考えると、この役目を受けるかどうかは、条件によるってことね。


 返事は少し待ってくださるみたいだし、ならいったん領地に戻りましょう。

 人の家の子より、まずは自分の家の子をちゃんと見ないと……ということで、公爵様には条件を知りたいって返事を書いて。パロットさんは領についてきてくれるか確認して。あとは、ロバートさんは……彼には何もしなくていいわね。ブライアンはさっさと捕まって頂戴。


 そうしましょう。


『そうね、まずは助成金があったのは確認できたもの。築堤工事は予定通り進められそう。ローランと、ソフィアにも会いたいわ』

「反抗期と、乳母にべったりの?」

『そう、私の周り問題だらけね』

 アリシアさんが申し訳なさそうにつぶやいた。

 子育て中なんてそんなもんよ。ずっと、怒涛。わたしは専業主婦だったけどそれでも大変だったわ。アリシアさんにはお仕事もあったんだもの大変なのは当たり前よ。

『よしこさあーん。私頑張る』


 どうしましょう。ほんとに……どうしましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。