↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お母さん転生する  作者: 大島Q太
王都問題整理編
PR
20/70

20.お母さん、料理を堪能する

 まず出てきたのは黄金色のスープ。ドキドキしながら口に含みます。

 ああ、なんてこと。こんな複雑な味……鶏かしら? 鶏? じっくりと滋味深い野菜の甘みもあります。とっても手間がかかっている味がするわ。シェフを呼んで頂戴!

『よしこさん?』


「……おいしい」

 がっついていると思われないぎりぎりの速さで、スープをいただきました。食べ終わるとすぐに、新しいグラスに薄桃色の飲み物が注がれます。すっきりとした後味。

 そして、グラスを置くタイミングで大きなお皿がきました。どうしましょう給仕も完璧だわ。

 レストランではないから、これが何かの説明はなくて、見ただけでは何かさっぱりわからないものが並んでいます。

 どうしましょう。どうしましょう。

 これはトマト、これはパプリカ。これはアスパラかしら。野菜の味が嫌味なく広がります。そこにちょっと癖のあるチーズが香ります。これ、こんなちょっぴりなの……ボウルいっぱい食べられるわ。


 ふいに笑い声が右方向から聞こえました。

 食べることに夢中で、忘れていました。公爵様を見ると、彼も上品な手つきで食事されています。こう食べる仕草も美しいですが、食べ終わったお皿もきれいだわ。

「……さすがです」

 わたし思わずつぶやいてしまいました。唐突な感想に公爵様が顔を上げました。

「ありがとう……口に合っているだろうか」

「とってもおいしいです」

 公爵様の前には、湯気の立つ皿が置かれました。そして、わたしの前にも。

 あらー……立派なお肉。早速切り分けて一口いただきます。これお肉もおいしいけど、ソースがおいしいわね。付け合わせのピリッとした葉っぱ、いい仕事してるわ。きのこ……いいお味のきのこ。

そして、次に出てきたみじん切りのお野菜のサラダも食べ終わり、最後にデザートが出てきました。あら可愛らしいって……ちょっと待って、この黄色いレモンのゼリーらしきもの。わたしの今日のドレスの黄色にそっくり。わたしのドレスは玉ねぎだけど。

 驚いて顔を上げると、公爵様と目があいました。

「今日のあなたに合わせたようだ」

「……とても素敵ですね」

 すごい、公爵家ともなると、日本人より『おもてなし』だわ。しかもしっかり、お腹いっぱいになりました。大満足です。

 いまなら、怪しくても羽毛布団もサプリもお水も言い値で買います!

『よしこさん、まだ詐欺を疑っているの?』


 食事を終えると、公爵様が立ち上がって、わたしの椅子を引いてくれました。

「よければ、ティールームで話をしよう」

「はい」

 心の中では「はい喜んで!」って元気に声を上げています。

 案内されて小食堂を出ると、こぢんまりとした部屋に到着しました。もうすでに、部屋の中では侍女たちが控えていました。公爵様の手を借りて、中央にあった花柄のソファに座ります。

 窓からの光がレースのカーテンで柔らかく室内を照らします。この部屋は落ち着いた雰囲気ですね。そして、侍女たちはお茶を準備すると、皆揃って部屋を出ていきました。

 まあ、流れるように二人きりになったわ。良いのかしら。

『アレク先輩だから心配はないけれど、本来は逃げてね』

 アリシアさんが冷静です。

 わたしはさっそく紅茶に口をつけて、ほっと息を吐きます。この紅茶もどことなく桃のような香りがする良いお茶です。とっても、おいしい。うちのお茶は……ロバートさんが顔芸を披露するような味でしたからね。この世界のお茶はああいうものだと思っていましたが。

「その様子だと、口にあったようだ」

 公爵様は笑みを浮かべてこちらを見ていました。

「先ほどのお食事もこの紅茶もとってもおいしいです。素敵なおもてなしありがとうございます」

 公爵様は驚いた顔をした後、一層笑みを深くしました。

「……どういたしまして」

 どういう表情ですか? おかしなことを言ったつもりはないのに……。あら、ご機嫌取りかと思われたのかしら。


「あの本当においしかったです。シェフを連れて帰りたいくらい」

「私ではなくシェフですか」


 公爵様はさらに面白そうに笑いました。

「……なぜ公爵様を連れて帰らないといけないの」

 はてどうして、首をかしげると、公爵様が声を出して笑いはじめました。


『よしこさーん』

 アリシアさんが悲壮な声を上げました。

『そこは、公爵様も素敵ですとか何とか言いましょうよ』

 だって、公爵様を連れて帰っても、観賞用くらいしか思いつかないけど、シェフならお料理を教われるわ。


 やっと笑うのが止まった公爵様が目じりを拭っています。

「本当に君はいいね。卒業してから君は何を?」

「わたしは領地に引きこもっていました」

「そうか。君は領地経営の成績優秀者だったな」

 そうなの? 

『ええ、プラチナピンズをもらうくらいには。でも先輩がそれを覚えてくれていたなんて』

 アリシアさんは嬉しそうに声を震わせています。

 わたしはふふふと笑っておきます。

「君は真面目で、努力家。生徒会でもずいぶん助けてもらった」

 分かるわ。アリシアさんそんな感じがする! 亡くなってからも資格を取ったりしているものね。


 わたしは「……そんなこともありましたね」と、無難に答えます。わたしの思い出ではありませんので。


「そんな君に頼みたいことがある」


 どうしましょう。やっぱり来たわ。詐欺? 無理難題? 公爵様の笑みが怖いわ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。