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お母さん転生する  作者: 大島Q太
王都問題整理編
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16/71

16.お母さん、流行を調べる

 

 翌日、からりと晴れたいい天気。

 朝ご飯を食べ終えて、ルンルンと染めたドレスを見に行きました。


「まあ、良い色じゃない」

 ちょっと、むらはあるけれど、気にならない程度です。きれいな薄い黄色に仕上がりました。これなら黄ばんでいるというより、黄色いドレスに見えるわ。ね、アリシアさん成功じゃない?

『ええ、ほんと不思議。でも、ちょっと型が古いわ』

「まあ、わがまま」


 でもそうね、伯爵夫人が見るからに古いドレスを着ていくのも、かっこよくないわね。


「ネリア、ドレスショップに行くわよ!」

「はい!奥様」

 邸の中から大きな返事が聞こえてきました。


 さっそく、昨日刺しゅう糸を買ったお店に入ります。ええ、わたしたちは立派なお客様です。

「ちょっと、お店の方。今はどういうドレスが流行っているの?」

『……よしこさん?』

 店の方はあからさまに顔をしかめました。そして、ポイっと店の外に出されてしまいました。


『それはそうでしょう! どんなドレスが流行っているかなんて教えてくれる訳ないわ。彼女たちはそれで商売しているんだもの』

 ごめんなさい。それもそうよね。この株は上がるよーなんて言ってくるのはほぼ詐欺だもの。本当に上がるなら人に教えるはずないものね。

『その例えは分からないけど』


 ならば……そうね。高級なレストランか、ホテルの前で、入っていく女性を見たらいいと思わない? 量販店の着こなしは、量販店で実際に見ればいいのと一緒よ。

『よしこさん?』

「ネリア、今度は人間観察よ」

 そして、わたしたちは高級店が並ぶ通りへと移動しました。

 みなさん、馬車からすぐにお店に入ってしまうから一瞬ですけど、なんとか分かってきた気がします。

「あの妊婦さんみたいなドレスが流行っているのね」

「奥様、エンパイアドレスです」

「そう呼ぶのね……でもなんとかなりそう。帯みたいな幅の布を巻けば、似た形になりそうよ」

「おび? ベルトのようなものですか?」

「そうそう、幅の広い布でできていて、こう背中のとこできゅっとリボンみたいに結ぶの」

「……いいですね。大きなリボン」

 ネリアはポンっと手を叩いてうなずいている。

「あとは袖は付け替えた方がよさそうよ。透ける素材でふわりとする感じで」

「袖を足すくらいの布なら買えそうですね。奥様」

 ネリアは無邪気に言っています。

 ドレス一着分の布は買えなくても、足す分くらいなら出せるそう。

『なんだか。ごめんなさい』

 アリシアさんのしょんぼりした声が聞こえました。

 ぜんぜん、とっても楽しいわ。


 作戦も決まって、またあの追い出されたドレスショップに戻りました。

 そこで張りのある薄緑色の布と、黄色いシフォンの布を買いました。お客様ですよ。


 そして、ちょっとだけ縫っているところを覗きました。こちらの世界は手縫いなのね。ミシンがあったら便利だったのだけど。


 そうして、ほくほくと屋敷に戻ると、またロバートさんが待っていました。

「こんにちは」

「リースマン伯爵。こんにちは」

 せっかくなので、家の中に招きました。……中は立派です。

 古めかしい立派な応接セットのある応接間に通しました。

「早速ですが、昨日のガラス工房の契約についてです」

 てっきり、ロバートさんは暇なのかと思ったら、ちゃんとお仕事でした。

『よしこさん?』

「なら、数字はパロットさんに任せているの。ネリア、呼んできてくださいな」

「はい、奥様」


 わたしはネリアが用意してくれた紅茶を注いでロバートさんに出しました。カップもソーサーも年代物。いわばアンティークです。新しいものは買えないので。

『よしこさんっ』


「それで、昨日のドレスはどうなりました?」

 ロバートさんは一口紅茶を飲んで、何やらカップをのぞきました。

「あー、はい。先ほど市場調査に参りましたの。それで方向性も決まりました」

 わたしも紅茶を一口……渋いわ。


「方向性ですか? 差し支えなければどのように?」

 まあ、ロバートさんに見ていただければ、良いか悪いか判断できるわ。なんて、素敵なお申し出でしょう。

「ちょっと待って、いただける?」


 わたしはいそいそとドレスを取りに行きました。


「じゃーん」

「じゃーん?」

 なぜか、ロバートさんがわたしの言葉を復唱しました。


「黄色く染めたドレスを、エンパイアにしようと思います。そこでこのウエストの部分から胸の下までをですね。この薄緑色の布で巻いて背中に大きなリボンを付けようかと」

 わたしは説明しながら、玲奈ちゃんに浴衣を着せた時みたいに、ドレスに布を巻いていきます。兵児帯みたいだわ。

「そして、この袖は取り外して、この透ける布で袖を作り直そうかと思っております」

 そう言いながら肩から、シフォンをかけてピンで留めてみました。

 正面にまわりこんで、見てみます。悪くないわ。


「たしかに、今風になりましたね。幅の広い布を使うのは新しい気がしますが」

 やりました! ロバートさんから今風というお言葉をいただきました。この方向性間違ってなかったみたい。


「あの奥様……そろそろ、パロットさんと変わっていただけると」

 ネリアたちが来ていることにも気付かず、夢中になっていました。


 どうしましょう、わたしったら年甲斐もなくはしゃいでしまいました。


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