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お母さん転生する  作者: 大島Q太
王都問題整理編
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15/70

15.お母さん、実験開始

 

 さて始めるわよ。


 まずは黄ばんだドレスを水と牛乳を混ぜたお湯に浸します。

 そして、買って来た大鍋に玉ねぎの皮を入れて煮出して……まあすごい玉ねぎの匂い。


「ネリア、ドレスはそのまま置いておいて、次はお湯にミョウバンを溶かしてくださいな。そこの桶一杯に対して、スプーンで一杯くらいでいいわ」

 多すぎたり少なすぎたりで色が変わっちゃうけど、でも、どうにかなるわよ。

 あら、玉ねぎの皮の方も秤がないから、適当になっちゃうし。

『よしこさん? ほんとにそれでいいの?』

 アリシアさんの心配そうな声が響きます。

 公民館のワークショップでお手伝いしただけだから、わたしもよく分かってないのだけど、大丈夫よ。と思ったけれど、ちょっと玉ねぎの皮の量が少ないかもしれないわ。

『よしこさん?』

 アリシアさんが焦っているようだわ。


 あ、でもいい色になってきた。

「ロバートさん、そこのざるをそっちの桶に置いてくださる?」

 ロバートさんは上着を脱いで、腕まくりをされています。思ったよりしっかりした腕です。力仕事も任せられそう。

 トムにそのざるにこの玉ねぎの皮の汁を移すように指示して、私はネリアとドレスを絞りました。


 漉した玉ねぎの汁を鍋に戻して再び火にかけ、そこにドレスを沈めます。

 ええ、わたしが手間取っていると、ロバートさんとトムさんが手伝ってくれました。水を含んだ布って案外重いのね。以前はハンカチでしたから……。そして適当に、鍋を木杓で混ぜます。

「あら……思ったより黄色くなってしまったわ」

『よしこさん!』

 アリシアさんったら、よしこさんしか言えなくなったみたい。

 大丈夫よ、続いてはこれをミョウバン液に沈めます。

「ほら、鮮やかな色になったわ」


 じゃあ待つ間に夕食の準備でもしましょうか。

 うどんはまとめて打ったのがあるからそれを使うとして、皮を取って余った玉ねぎは薄くスライスして全部使っちゃいましょう。

「あ、ロバートさん。安心してください。このお鍋はお料理にしか使っていませんから」

「……あ、はい」

「あら、夕食食べていかれるでしょ?」

 ロバートさんは驚いた顔で、うなずかれました。

 鶏と玉ねぎを少し焦がすくらいに炒めたら、ひたひたにお水を入れます。


「いい時間だわ。ドレスを出して、外の井戸ですすぎましょう」

 ドレスの入ったお鍋は重くて、トムとロバートさんが二人がかりで運んでくれました。

 井戸は手押しポンプなのね。

 勢いよく鍋の中に水をかけていきます。

「あらあらあら……まあまあまあ、きれいな黄色」

 今のところ成功ね。でも乾いてみないと分りません、最終的な色の確認は明日ね。


 ほんと、ロバートさんってすごく助かるわ。高いところにひもを通すのもやってもらいました。そこにドレスを広げて干します。

 黄色く染まったドレスが風に揺れています。

 明日が楽しみね。


「じゃあ、帰って夕食を仕上げましょうか」

 これだけ働いてくださったのだもの、蒸しパンもつけちゃおうかしらね。


 そして完成した。塩ネギ親子うどん。


 おもてなしをするなら食堂へ案内するのが正しいのでしょうが、ロバートさんがいつも通りでいいと言ってくださったので、食堂横のテーブルをみんなで夕飯を囲みました。パロットさんも時間通り現れて、ロバートさんを見て一度驚きましたが、その後は慣れたようです。

 塩で味付けした鶏と卵をおうどんにたっぷりとかけます。

「どうぞ、お召し上がりください」

 ロバートさんがうどんを見ています。

「……これは?」

「……麺です」

 ごめんなさい。なんだか面倒くさいことになりそうだったので簡単に答えます。

「さあ、これは汁に浸してあります。早く食べないと伸びてしまいますわ」

 みんなで揃って神に祈りを捧げ、食べ始めます。

 これはこれでおいしいです。でもやっぱり、お醤油と出汁……ほしいわ。


 そしてもうお約束になっている……皆さん、光ってらっしゃるわ。ロバートさんまで。

『これについては今度じっくり、考えましょうね』

 アリシアさんが少し笑いながら言いました。


 食べ終わるとパロットさんは、ロバートさんの馬車に乗せてもらって帰っていきました。


 わたしは自室に戻ってベッドに倒れ込みます。

『よしこさん。途中では言い出せなかったのだけど……ロバート様の扱いが雑すぎます!』

「……そうなのね」

『そうですよ。侯爵家の方です。副ギルド長です。それを案内係にしたり、馬車を出させたり、鍋を運ばせたり』

「ずいぶん助かったわ」

『……ほんとにいい人で良かった』

 アリシアさんがため息のように呟いた。

「次から気を付けます。アレクセイさま? あの方との会食ではちゃんとします」

『……よしこさん』

「なに?」

『ロバート様にも、つ・ぎ・か・ら! ちゃんとしてください』

「はーい」

 あまりにしっかり怒られてしまって、笑ってしまいます。大人になると怒られることも少ないもの。

『よしこさん、笑ってないで』



 どうしましょう、明日が楽しみ。どんな色になってるかしら。


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