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お母さん転生する  作者: 大島Q太
王都問題整理編
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12/70

12.お母さん、ワクワクする

dehiki

 

 邸に帰ると、力が抜けてすぐに部屋に戻りベッドにダイブしました。


 白金貨の行方とそのおまけのブライアンのことは商業ギルドに任せることになりました。そして次に目を向けるのは公爵様の面会約束です。お手紙を返すと、立派な花と一緒に、三日後、公爵邸から馬車が迎えよこすと丁寧なお手紙が返ってきました。


 でもちょっと待って、このタウンハウス何もないわ!!


 どうしましょう、やっぱり公爵さまに会うにはそれ相応の衣装とか必要よね。都会に出る時、武装するのと同じで。

『武装??』

 武装よ。都会に出る時には、都会の人に舐められないように、都会用の服を用意するのと一緒ってこと。

『……まあ。残念だけど、持ってきた服はとてもじゃないけど公爵様の前では着られないわ。ドレスもあるけど、古いものばかりで。やっぱり新調するしかないんじゃないかしら?』


 何をするにもまず、お金が立ちふさがるわね。

 治療を受ければ借金。

 人を雇えば借金。

 夫を探せば借金。

 公爵に会うために……借金するの?


『よしこさん、ほんとにごめんなさい』

 アリシアさんが悪いわけではないのよ。私も転生そうそう、借金を作っちゃったし。

『それは治療院と、ブライアンのせいでしょう』

 ほんとにアリシアさんは真面目ね。なにもかも自分で引き受けて、人の分まで反省してたら疲れちゃうわよ? 反省しすぎは時間の無駄。今は、公爵家にふさわしいドレスをどうするかって考えなきゃ。

 びびでばびでばあさんとかが、出てこないかしら魔法の世界なのだから。

『びびでばびでばあさん?』

 ええ、シンデレラっていう有名な童話があってね。主人公に魔法をかけてドレスを着せてくれるのよ。

『まあ、素敵ね』

 でしょ? そんな人いないわよね。

『スキル《裁縫》を持っている人ならいるかもしれないけれど。聞いたことないわ』

 雇うには?

『お金』

 そうなるわよね。

『しかもスキルもちは通常の十倍はするわ』

 世知辛い。


 ああ、そうだわ! わたし、『風と共に去りぬ』が大好きだったの。

『それは何?』

 風と共に去りぬは、スカーレットという女性が主人公で、強く賢く美しく生き抜くお話よ。そうね、無いのなら作ってしまえ、ホトトギスよ。

『ホトトギス?』

 そこは、音感重視よ。

『よしこさん、作れるの?』

 私はベッドから立ち上がって、周りを見渡した。

「わたしを誰だと思っているの」

 サムズアップしてうなずいた。

「玲奈ちゃんのおばあちゃんよ!」

 玲奈ちゃんにいっぱいお洋服作ってきたんだから。


『なんでかしら。よしこさんが言うとすごく頼もしいわ』


 じゃあ、方向性も決まったことだし。夕飯を作りに行きましょう。


 最近では、パロットさんにも夕飯を提供しています。福利厚生です。彼は無事離婚調停も終わり、独身に戻ったようで、ご飯は外食だと言っていたのでついおせっかいを焼きました。

 ちょっと光っちゃうことに目をつむれば、おいしい夕飯です。

「そうだ、パロットさん。今度公爵様に会いに行くの。明日からドレスを縫うので、今のようにお仕事のお手伝いができなくなります」

「それはすごいですね。ああ、でも一人でも大丈夫です。ここのところすごく帳簿整理が捗るんですよ」

 パロットさんはおいしそうにシチューを食べてます。

 顔が輝いています……物理的に。

 うちでご飯を食べるようになってから、パロットさんはメキメキ仕事が捗るようになったそうなのですが、この光と何か因果関係があるのかしら。離婚できて憂いがなくなったせいかもしれませんし。これは突っ込んだら沼だわ。今はやめておきましょう。

 それにネリアも、以前よりもよく働いてくれて、ひとりでこの広いタウンハウスの埃取りや、管理をしてくれています。

 トムなんて、郵便の仕分けは職人かと思うほど、目にもとまらぬ手つきで……ダメな家令だと言って泣いた日が遠い昔のように感じるわ。三日前だけど。


 とにかく、皆が良く働いてくれるので、わたしのドレスを縫う時間は確保できそうです。

 さてと、私をスカーレットにしてくれる布を探さなければ。


「あのアリシアさん。ドレスが手に入ったとして、宝飾品はどうされるのですか?」

 パロットさんが首をかしげながら尋ねてくる。

「ほうしょくひん」

 間抜けな声が出たわ。

『確かに……最低でも耳飾りや、首飾りくらいは……』

 でもそれって、もちろん持ってきたものの中には……?

『ありませんっ』

 アリシアの悲痛な声が響いた。

 そう言えばと、胸にかけている首飾りを手に取る。鳥が卵を温めるような意匠で、卵の部分がアリシアの瞳と同じ緑色の石だった。

『それは母から受け継いだものよ』

 とても大切なものね。

『ええ、宝飾品としての価値は高くないけれど大切なものです』

 なるほど、これはこのままでいいわ。これ以上の宝飾品はないもの。

『え?』

 自分が大事に思っている物の価値を自分以外に委ねてはだめよ。大切なら堂々としたらいいのよ。

 そうね、あとは耳飾り……パッと見てキラキラしていればいいなら安価なビーズでも作れるのに。

『……ビーズ』

 色のついたガラスよ。小さくて丸くて穴が開いているの。その穴にひもを通して形を作るのよ。玲奈ちゃんといっぱい作って遊んだわ。


「そうね。ガラス。どこかに色ガラスはあるかしら?」

 窓にガラスがはまっているんだもの、この世界にも色ガラスはあるはずだわ。

 パロットさん、トム、ネリアの順に顔を見ていく。

「確か市場に色ガラスのランプを売っていた店がありました」

「では明日、買いに行きましょう」

 ネリアは深くうなずいた。


 どうしましょう。困っているのにわくわくが止まらないわ。



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