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お母さん転生する  作者: 大島Q太
王都問題整理編
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11/69

11.お母さん、商業ギルドへ行く

 

 パロットさんは本当に優秀な方でした。

 まず王都中にリースマン伯爵家の名前でつけ払いができないようにしました。

「いくら王都でも、白金貨が使える場所は限られています」

 と、パロットさん。つけ払いができなければ、現金で払うしかない。そして、いつか白金貨を使うしかなくなるだろうと。

「ブライアン様が支払いに白金貨を使ったら、連絡をもらえるように罠を張りましょう」

 罠……、素敵。

『行方を探すより、使えなくする方が簡単ですものね』

 アリシアさんが感心したように言いました。

「それで?」

「商業ギルドに行きましょう。そこで協力を仰ぐのです」

 はあ、商業ギルド! 総合商社? 仕事の内容的には農協の方が近いのかしら。

『主に取引。契約。預貯金。商売の管理。店同士の仲裁。などが商業ギルドの仕事よ』

 なら、農協ね。


 ということで、王都の一等地に立つ商業ギルドに向かいました。

 さすがといいますか。通された応接室は、高価なものの見本市のようにきらびやかなものが並んでいます。足元のじゅうたんもふかふかで……お金があればぜひとも購入したいわ。

 そういえば、リースマン伯爵領は農業が盛んだと言っていたけど、具体的には?

『小麦が一番ね、何より王都まで川一本で運べるからそこが利点ね』

 借金まみれだけれど、土地は豊かなのね。

『川の氾濫がたびたびあって。そのおかげで土壌が肥沃になるの。でも堤防はすぐ流されるから補強工事が必要なの』

 つまり、ブライアンが盗んだ白金貨2枚はリースマン領の未来なわけね。

『……そう言えるわね』


 待っていると、扉から仕立ての良いスーツを着た男性が入ってきた。薄茶色の髪に、青い目、おひげもきれいに整られていて四十代くらいかしら。背は低くもなく、高くもなく。口角を上げてほほ笑んでいる……あらやだ。目は笑ってないわ。まあ、日本にもいたわこんな人、どこの偉い人も似た感じになるのね。


 わたしも合わせて、微笑んで見せました。

「こんにちは、私は商業ギルドの副ギルド長 ロバートと申します」

「こんにちは。わたしは、アリシア・リースマンです」

 どうぞと言われたので、ソファに座ります。いいクッションだわ。


 この人は雑談が必要な方かしら、それとも単刀直入の方が、と探っているとロバートさんが微笑みました。

「話はすでに伺っております。リースマン領のつけ払い禁止と、白金貨の行方を探されているとか」

 パロットさん動きが早いわ。

「そう、話が早くて助かりますわ」

「リースマン領はそんなに困窮されているのですか?」

 あらあら、話は早いけれど抜け目はないみたいね。下手に答えれば、王都に流れるリースマン産の小麦の量を減らされかねないわ。

 ここはごまかす一択ね。


「商業ギルドの副ギルド長がそんな悪い冗談を真に受けたのですか?」

「……冗談ですか?」

 ロバートさんは心外だという風に、大げさに驚いてみせます。まあ、狸だわ。

「ええ。ご存じでしょう? うちから王都へ出している小麦の量を。今年は築堤工事も予定しておりまして、今まで以上に良質な小麦をたくさん王都へ出せると思いますわ」

 ロバートさんはゆっくりと二度うなずくと、ソファにもたれた。これはゆっくりしゃべりたいという合図かしらね。なんだかこういう交渉って、娘の学園祭でスポンサーを募っていた頃みたいね。どうして、権力者のおじさんって皆同じような雰囲気を出すのかしら。

 わたしも迎え撃つべく少し深くソファに座り直した。


「すみません。てっきり借金の相談も兼ねて来られたのかと身構えた次第です」

 あらまあ。商業ギルドも貸し付けをしているのね。でも、転生してから借金ばかりだわ。もう遠慮したい。

「心配には及びませんわ。リースマン家は、確かにお金に困っておりますが……それは無くて困っているのではなく、逃げ回っているから困っているのですわ」

 だから、早く白金貨の行方を見つけたいのよ。

「……お金が逃げ回っている」

 ロバートは、一瞬きょとんとした後、大きな声で笑い出してしまった。

「なるほど、理解しました。協力いたしましょう」

 少し雰囲気が和んで、ほっと胸をなでおろした。


『よしこさん……』

 アリシアさんがどんな風に私を見ているか分かる声だわ。


「ですが、先日治療費を分割払いにされたとか」

 ああ、まだこちらの情報を持っていると、見せてくるのね。

 まあ、耳が早い。でもそうね、調べればすぐわかることだわ。ロバートさんたち商業ギルドの人たちは優秀なのね。


「ええ、伯爵家だからと二日で金貨二枚と吹っ掛けられたものですから、飲み込む時間をもらったのよ」

「ほぉ。確かに。伯爵家であれば、その半分のはずですからね」

 わあ、ほんとに吹っ掛けられているわ。どうしましょう。

『よしこさん、払うと決めた以上は払う必要があるわ。それが貴族よ』

 ええ、分かっているわ。払うと決めた以上は理不尽でも払う。それが信用というものでしょう。ママ友のお茶会と同じよ。誘われて行ったランチに五千円?と後出し請求されても食いしばって出す。

ただし、こちらも学ぶのよ。


「それで? 白金貨を捕まえて築堤工事が完了した後は、どのように考えておいでですか?」

 温泉ね。温泉。スローライフを目指しているわ。

『たぶん、そう言うことを聞いているのではないと思うわ』

 分かっているわよ、協力するんだから、その分ギルド側にうま味はあるのかって聞いてきているのよね。

「近々、小麦粉を使った名物を作ろうと思っておりますの」

 きりっとした顔をして見せた。

「ええ。これから小麦の出荷量が上がるのだもの。ならなおさら加工に力を入れていかないと」

 ロバートさんは膝に肘をついて、グイっと身を乗り出してきた。

「……加工ですか」

 あら食いついちゃったわ。なんだか深い案があるように受け取られたようね。

「ええですが、すべてをお話しするにはわたしたち、まだそんなに仲良くないでしょう」

『よしこさん?』

 こういう時は、はったりを言ったもん勝ちなのよ。

『……よしこさん??』

「ですから、今後ゆっくり仲を深めていきましょう。次からもリースマン領の窓口は、ロバートさんにお願いしたいわ」

 はい、ここでスマイルゼロ円。笑っときましょう。

 ロバートさんは、姿勢を戻して笑った。むこうも、スマイルゼロ円だわ。

「ほほほほほほ」

「ふふふふふふ」


 ということで、この会は散会となりました。


『ところでよしこさん。名物って何をつくるの?』


 どうしましょう。何も考えてないわ。


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