第8話 それぞれの1ヶ月 ①
その日のうちに、六人はグループLINEを作った。
グループ名は、モリが何気なく付けた。
「Fチーム文化祭下克上計画」
最初は冗談半分だったその名前も、今では六人全員の目標になっていた。
翌日から、それぞれの役割が動き始める。
男子チームの最優先課題はダンスだった。
イッチがダンス動画の見本をLINEに貼り付ける。
『まずは一人で振りを覚えて!』
『覚えたら動画を撮ってグループに送ってね!』
学校から帰ると、タケちゃんは自室でスマホを立てかける。
動画を流しながら何度も同じ振りを繰り返す。
「右……左……あっ!」
足がもつれて転びそうになる。
送られてきた動画を見たワッちゃんから、すぐに返信が届く。
『腕の位置が低い!』
『笑顔!』
『あと一拍早い!』
「厳しいなぁ……。」
苦笑しながらも、タケちゃんはもう一度最初から踊り始めた。
イシイも、モリも同じだった。
覚えたところまで動画を撮影し、グループLINEへ投稿する。
すると女子三人から次々とアドバイスが返ってくる。
『そこ揃ってきた!』
『前より全然いい!』
『あと少し!』
画面越しでも、六人は少しずつ前へ進んでいた。
そして休日。
公営の無料の練習スペースを予約し、六人全員が集まる。
「せーの!」
スマホから音楽が流れる。
最初はバラバラだった動きも、何度も繰り返すうちに少しずつそろっていく。
「もう一回!」
「はい!」
汗だくになりながら踊る男子三人。
イッチは細かく振りを修正し、ワッちゃんとコバは動画を撮影して客観的にチェックする。
一方で、女子チームも止まってはいなかった。
イッチは放課後になると制服の採寸を始め、型紙を起こしてリメイクの設計図を描いていく。
ワッちゃんは持っているミリタリーパーツを机いっぱいに並べ、どこへ配置すれば一番映えるか何度も組み合わせを試した。
コバは喫茶店の厨房で試作品作り。
焼き時間を一分変え、砂糖の量を少し調整し、サクサク感を確かめる。
「うーん……もう少しバターを増やした方がいいかな。」
失敗しても、原因をノートに書き留めて次へ生かす。
もちろん、文化祭だけではない。
「明日、小テストだ!」
タケちゃんの悲鳴がLINEに流れる。
『勉強もしろー!』
イシイが即座にツッコミを入れる。
『赤点取ったら文化祭どころじゃないよ(笑)』
『今日はダンス一時間だけにしよう。』
モリの提案に、全員が「了解!」のスタンプを送った。
文化祭まで、あと三週間。
ダンスも、衣装も、クッキーも。
そして勉強も。
六人はそれぞれの得意なことを武器に、忙しくも充実した毎日を過ごしていた。




