第5話 作戦会議 ①
「じゃあ。」
モリがテーブルの中央に置かれたメモ帳を見ながら言った。
「具体的に何をするかだよね。」
「まずは敵を知る!」
ワッちゃんが人差し指を立てる。
「あいつら、舞台を作ってダンスするって言ってたよね。」
「うん。」
コバがうなずく。
「だったら。」
ワッちゃんはニヤリと笑った。
「こっちもダンスしよう。」
「えぇ!?」
男子三人の声がきれいに重なった。
「ダンスなんてやったことないよ!」
タケちゃんが慌てて言う。
「だから練習するんじゃん。」
ワッちゃんはあっさり返した。
「じゃあ、何を踊ってもらう?」
コバが尋ねると、イッチが迷うことなく答えた。
「M!LKの『爆裂愛してる!』」
「いいね!」
ワッちゃんが手をたたく。
「それなら公式のダンス動画も公開されてるし、振り付けの練習もしやすいよ。」
とイッチ。さすがドルヲタその辺は心得ている。
男子三人は顔を見合わせ、おそるおそるスマホで検索する。
「……あった。」
モリが動画を再生する。
軽快なイントロが流れ、キレのあるダンスが始まった。
三人は無言で画面を見つめる。
十秒。
二十秒。
三十秒。
動画を見終えたタケちゃんが、ゆっくりと顔を上げた。
「えっ……。」
イシイも固まっている。
「これを踊れと?」
イッチは満面の笑みでうなずいた。
「そう!」
ワッちゃんが力強く断言して胸を張る。
「文化祭まで一か月あるし。それだけ練習してくれれば、衣装もメイクも演出も、あとは私たちが全部引き受けるから!」
「お菓子は任せて!」
とコバが笑顔で親指を立てる。
「衣装は私が頑張る!」
イッチも続く。
「だから男子チームはダンス担当!」
「頑張っ!」
女子三人が声をそろえて応援すると、男子三人はそろって顔を引きつらせた。
(……安易に「やる」なんて言うんじゃなかった。)
三人の頭の中に浮かんだ後悔は、見事なまでに一致していた。
しかし――。
今更やっぱり止めるとも言えなかった。男子にも譲れない矜持という物があるのだ。
かくして『文化祭で陽キャ達に一泡吹かせるぞ!』と気炎を上げたのだった。




