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文化祭! アイドルカフェを成功させろ!  作者: 小兎


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第24話 文化祭2日目 ⑥ 最強の助っ人



「……ごめん。」


 コバが瞬きを何度も繰り返す。


「脳がバグってる。」


 目の前の光景が理解できない。


 聞こえてくる声は、間違いなくワッちゃんだ。


 なのに――。


 そこに立っているのは、軍服風の衣装を着こなした二人の"イケメン"だった。


 背筋を伸ばし、軍帽を目深にかぶり、金色の飾緒が肩から胸元へ流れる。


 切れ長の目元。


 すっと通った鼻筋。


 男装メイクによって女性らしさはほとんど消え、凛々しい美青年そのものになっている。


 しかも、隣にはもう一人。


 同じ衣装に身を包んだイッチが、少し照れくさそうに軍帽のつばへ手を添えた。


「……ど、どう?」


 その声を聞いて、ようやくコバは現実へ引き戻される。


「いやいやいやいや!」


 思わず両手で頭を抱えた。


「声はワッちゃんじゃん!」


「なのに見た目がイケメンすぎるんだけど!?」


 ワッちゃんは肩をすくめて笑う。


「だから言ったでしょ。」


「奥の手。」


 イッチも少し得意げに笑う。


「ちゃんと予習も復習もしてきたから。」


 コバは二人を交互に見比べる。


「……本当に脳が追いつかない。」


「これ夢じゃないよね?」


 ワッちゃんは笑いながら軍帽をくいっと下げた。


「夢じゃないよ。」


 そして、教室の入口へ視線を向ける。


「コバ。」


「うん?」


「メンバー交代って、お客さんにアナウンスして。」


 その声には迷いがない。


「曲は――」


 一瞬だけ口角を上げる。


「『好きすぎて滅』で。」


 その一言に、コバの顔から疲れが吹き飛んだ。


「……了解。」


 にやり、と笑う。


「それ、絶対盛り上がる。」





「皆様にお知らせいたします。」


 コバのアナウンスが教室中へ響く。


「メンバー休憩のため、この回はパフォーマーを交代してお届けします。」


 その言葉に、列に並んでいた観客から一斉に声が漏れた。


「えーーーっ!」


「うそぉ……。」


「さっきの三人じゃないの?」


 残念そうな空気が流れる。


 だが――。


 列から離れる者は、一人もいなかった。


「それでは、二十名様、ご案内します。」


 観客が教室へ入り、用意された席へ座っていく。


 最後の一人が着席したのを確認すると、教室の扉が静かに閉まった。


 パチッ。


 照明が落ちる。


 暗幕で覆われた教室は、一瞬で闇に包まれた。


 ざわめきも消え、息をのむ気配だけが漂う。


 そして――。


 青と紫のネオンライトがゆっくりと灯る。


 闇の中に、二つのシルエットが浮かび上がった。


 黒と金の軍服。


 足元は膝まで届くロングブーツ。


 軍帽を深くかぶり、微動だにせず立つ二人。


 休憩へ入ったはずの三人とは違う。


 だが、その存在感は、それ以上だった。


 教室がどよめく。


「……誰?」


「え、ちょっと待って。」


「また別の人!?」


 ネオンの光を浴びながら立つ二人の美青年は、まるで舞台のためだけに生まれてきたかのような完成度だった。


 次の瞬間――。


 イントロが流れた。


 数秒で誰もが分かる、あの楽曲。


 『好きすぎて滅』。


「きゃあああっ!」


 歓声が上がる。


 その声を切り裂くように。


 二人が同時に床を蹴った。


 ――始まった。


 その瞬間、教室の空気そのものが塗り替えられる。


 腕を振る軌道。


 指先の角度。


 ジャケットの裾が翻るタイミング。


 ロングブーツで刻む重く鋭いステップ。


 すべてが寸分の狂いもない。


 肩から流れる金の飾緒が大きく舞い、二人は一瞬で立ち位置を入れ替える。


 激しい動き。


 それなのに、一切ぶれない軸。


 計算し尽くされた男らしい色気が、教室いっぱいにあふれていく。


 観客は、ただ見入ることしかできなかった。


 そして曲はサビへ。


 《好きすぎて滅❤︎》


 そのフレーズと同時に、二人の動きが完全に重なる。


 ミリ単位のズレもない。


 完璧なシンクロ。


 そして。


 最前列でスマホを構える女子生徒たちへ向けて。


 二人は同時に視線を上げた。


感情を一切見せない。


 冷たく。


 美しく。


 見る者の心臓だけを正確に撃ち抜く、圧倒的なポーカーフェイス。


 切れ長の瞳がネオンを映し、静かな覇気を放つ。


 その一瞬だけで、教室中の空気が凍りついた。


「――ッ、無理!!!」


 最前列の女子高生が両手で口を押さえる。


「カッコよすぎて死ぬ!!!」


 さらに別の女子が叫ぶ。


「好きすぎて滅!!!!」


 歓声とも悲鳴ともつかない声が一斉に上がった。


 スマートフォンを持つ手は震え、画面は激しく手ブレする。


 録画ボタンを押したまま、ただ立ち尽くす者。


 口を開けたまま動けなくなる者。


 膝から崩れ落ちそうになる者。


 誰も視線を外せない。


 曲の終盤。


 二人は髪をかき上げる仕草を見せながら、最後まで崩れることのない表情で踊り切る。


 その圧倒的な完成度は、教室にいた自校生徒と他校生の心を、一人の例外もなく鮮やかに奪い去っていた。


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