第23話 文化祭2日目 ⑤
三人は軍帽を目深にかぶり、胸を張って廊下を歩く。
昨日とは違い、先導するワッちゃんもイッチもいない。
それでも、一歩ずつ確実に二年D組を目指した。
「……着いた。」
教室の前で小さく息を吐く。
すると、扉が開いた。
「あっ、来た来た!」
迎えに出てきたのはコバ。
その横には、シフトを手伝うことになったBチームとCチームのメンバーが並んでいた。
そして三人の姿を見た瞬間――。
「えっ!?」
「ちょ、ちょっと待って!」
「本当に石井君と大竹君と大森君なの!?」
教室中に悲鳴にも似た声が響く。
昨日はほとんど顔を合わせなかったクラスメイトたちは、初めて間近で見る完成度に目を丸くしていた。
「別人じゃん……。」
「昨日動画もすごいと思ったけど、近くで見るともっとヤバい……。」
しかし、コバはパンッと手を叩く。
「はいはい!」
空気を切り替えるような声。
「盛り上がるのは後!」
「一回目のお客さん入れますよ!」
BチームとCチームへ次々と指示を飛ばす。
「二十人ずつカウントして!」
「押さないように誘導お願い!」
「整理券の確認も忘れないでね!」
「了解!」
クラスメイトたちも慌てて持ち場へ散っていく。
やがて最初の二十人が教室へ入り、照明が落ちる。
そして――。
一回目のダンスパフォーマンスが始まった。
一回のステージは二十分。
ダンス。
物販。
握手。
お見送り。
観客を入れ替えたら、また次の二十人。
その繰り返し。
休む時間はない。
座る時間もない。
笑顔を絶やす暇さえない。
コバは合間を縫って三人の前へ立つ。
「汗、押さえるよ。」
化粧が崩れないよう、パフで優しく汗を吸い取る。
「大丈夫?」
「……うん。」
タケちゃんは笑顔を作る。
しかし、その笑顔の裏では呼吸が少しずつ荒くなっていた。
イシイも額に汗をにじませながら姿勢を崩さない。
モリも握手のたびに笑顔を見せているが、肩がわずかに上下している。
客足は途切れない。
廊下には、まだ長い列。
整理券を手にした来場者が順番を待っている。
その様子を見たコバが、小さくつぶやいた。
「……ヤバいな。」
視線は三人へ向く。
「一回、休憩させないと。」
その時だった。
「大丈夫。」
すぐ後ろから、聞き慣れた声がした。
「これで、一旦休憩させるから。」
コバが勢いよく振り返る。
そして――。
「……え。」
思わず言葉を失った。
そこに立っていた人物を見て、コバは絶句した。




