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文化祭! アイドルカフェを成功させろ!  作者: 小兎


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第17話 文化祭1日目 ⑥ 爆裂!

最初の二十人が教室へと案内され、静かに着席する。


 期待とざわめきが入り混じった空気。


 全員の視線が、まだ何もないステージ中央へと集まっていた。


 その瞬間だった。


「消します!」


 コバの声と同時に、照明が一気に落ちる。


 ぱ、と世界から色が消えた。


 暗幕が引かれた教室は、完全な暗闇になる。


 息を呑む気配だけが、はっきりと分かる。


「……え?」


「なにこれ……始まる?」


 誰かの小さな声。


 その直後。


 床からじわりと、スポットライトが立ち上がるように点灯した。


 光は細く、そして確実に三つの影を浮かび上がらせる。


 ステージ中央。


 軍帽を深くかぶり、顔を隠した三人のシルエット。


 ただ立っているだけなのに、空気が変わる。


「……っ」


 観客の誰かが息を呑んだ。


 次の瞬間。


 音が鳴った。


 低く、心臓を掴むようなイントロ。


 静寂の中でリズムだけが先に走り出す。


 そして――。


 アップテンポへ切り替わる瞬間。


 三人は同時に手を伸ばし、頭上へ。


「えっ!?」


 軍帽が宙へ放たれる。


 くるりと回転しながら落ちていく帽子の軌跡。


 その一瞬の間に、三人が照明に照らされる。


 そして。


 音楽が完全にビートへと跳ねた。


 同時に三人が動き出す。


音が跳ねた瞬間から、空気は完全に変わっていた。


 三人のステップは一糸乱れず、床を叩く音すらひとつのリズムとして揃っていく。


 前へ。


 横へ。


 斜めへ。


 目まぐるしく入れ替わるフォーメーションなのに、一瞬たりとも遅れがない。


 指先が伸びるたびに視線が引っ張られる。


 腕が切り替わるたびに空気が流れる。


 ただの高校生のダンスとは思えない、異様な完成度だった。


「え……」


「なにこれ……」


 観客の誰かが思わず声を漏らす。


 その声さえ、ビートに飲み込まれていく。


 腰の動きはしなやかで、しかし力強い。


 派手さだけではない、計算された重心移動が、見る者の感覚をじわじわと侵食していく。


 そして――。


 スピーカーから歌詞が弾けた。


《ば・く・れ・つ❤︎》


 その瞬間だった。


 三人の動きが完全に同期する。


 ぴたり、と。


 まるで一つの生き物のように。


 無駄のない平行移動。


 左右対称のステップ。


 呼吸すら揃っているかのような一体感。


 観客の視線が、否応なくセンターへ吸い寄せられる。


 そこに立つ“彼”。


 センターとして一歩前へ出たその瞬間。


 視線がまっすぐ射抜いて来た。


 ――ドンッ!


 撃ち抜かれた


空気を切り裂くような静かな眼差し。


 アップテンポな音楽なのに「無」を感じる。あまりにも異質なその眼差し。


 切れ上がったアイラインの奥の瞳が、スポットライトを受けて妖しく光る。


 その視線に見据えられた観客が、思わず息を止めた。


「……っ」


――ッ、無理。


 その一瞬で、何かが決定的に崩れた。


 心臓を直に鷲掴みにされたような、暴力的な衝撃。


 胸の奥がぎゅん、と跳ね上がる。


 呼吸の仕方を一瞬忘れるほど、体温だけが急激に上がっていくのが分かる。


 目の前の光景は、理解の範疇を軽く飛び越えていた。


 さっきまでの「文化祭の出し物」という認識が、音もなく剥がれ落ちていく。


 そこにあるのは、身内ノリの軽さでも、学園祭特有の甘さでもない。


 ただ、完成された“何か”だった。


 洗練された動き。


 指先の角度。


 重心の移動。


 視線の置き方。


 その全部が、あまりにも正確で、あまりにも意図的で。


 なのに、どこか人間離れしている。


 元の顔が誰だったかなんて、もう思い出せない。


 いや、思い出そうとしても意味がない。


 そこにいるのは“誰か”ではなく、“完成された存在”だった。


 その視線だけが、こちらを刺してくる。


 冷たいのに、熱い。


 感情がないのに、目が離せない。


 まるで、こちらの呼吸の速さすら計算に入れられているような錯覚。


 「見られている」のではなく、「見抜かれている」。


 そんな圧力。


 最後のステップが、音と完全に噛み合って決まった。


 バシッ。


 静止。


 余韻だけが残る。


 数秒。


 誰も動けなかった。


 拍手が出ない。


 声も出ない。


 身体が、反応の仕方を忘れている。


 ようやく喉の奥から漏れたのは、言葉とも呼べない音だった。


「……好きすぎて、滅……」


 かすれた声。


 それだけ。


 気づけば手はスマホを握ったまま、呆然としていた。


最後まで一度も、こちらの知っている「誰かの顔」には戻らない。


 ただ、ステージの中の彼らだけが、異様なまでに完成されたままそこにいた。



 


 

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