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文化祭! アイドルカフェを成功させろ!  作者: 小兎


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15/23

第15話 文化祭一日目 ④ 12:00第2被服室【衣装合わせ】

「じゃあ、私たちは廊下に出てるから着替えてね。」


 ワッちゃんがそう言うと、イッチとコバも荷物を持って第二被服室を出る。


 ガラリ、と扉が閉まった。


 部屋の中では男子三人が慣れない手つきで衣装に袖を通す。


「これ、思ったより本格的だな。」


 タケちゃんが鏡を見ながらつぶやく。


「ボタン留める位置、これで合ってる?」


「たぶん……。」


 三人で確認し合いながら着替えを終える。


 数分後。


「着替えたよー!」


 扉の向こうへ声を掛ける。


「はーい。」


 女子三人が部屋へ戻ってきた。


「私は先に教室へ行くね。」


 コバがクッキーの入った段ボールを持ち上げる。


「前のチームから引き継いでおく。」


「お願い!」


 ワッちゃんが親指を立てる。


 コバが部屋を出ると、残った二人は男子三人の最終チェックを始めた。


「タケちゃん、ちょっとこっち向いて。」


 ワッちゃんは肩章へ金色の飾緒を取り付ける。


 肩から胸元へ流れる飾り紐が付くだけで、衣装は一気に華やかさを増した。


 イッチは襟元を整える。


「襟章、少しだけ右。」


 指先で数ミリ修正する。


「徽章も真っすぐ……よし。」


 袖口を軽く払う。


 小さな糸くずまで見逃さない。


「軍帽。」


 ワッちゃんが帽子を手に取り、タケちゃんの頭へそっと乗せる。


「うん。」


 つばをほんの少しだけ前へ傾ける。


「これくらい目深にかぶるとカッコいい。」


 鏡に映った姿を見て、タケちゃん自身が思わず息をのんだ。


「……すご。」


 そこにいるのは、普段の自分とはまるで違う。


 ステージに立つためのアイドルだった。


「待って!」


 ワッちゃんがバッグから一眼レフカメラを取り出す。


「せっかくだから撮らせて!」


「えっ、今!?」


「今!」


 カメラを構えた瞬間、ワッちゃんの目の色が変わった。


「タケちゃん、帽子のつばを親指で軽く持って!」


 カシャッ。


「そのまま目線だけこっち!」


 カシャッ。


「顎もう少し引いて!」


 カシャッ。


「左肩を前!」


 カシャッ。


「右足を半歩引いて!」


 カシャッ。


「今度は帽子を外して髪をかき上げて!」


 カシャッ、カシャッ、カシャッ。


「はい、次!」


「壁にもたれて!」


「腕組んで!」


「笑わない!」


「今度は少しだけ笑って!」


「視線外して!」


「最高!」


 次々と飛んでくるポーズの指示に、タケちゃんは完全に翻弄されていた。


「ワッちゃん……。」


 イッチが苦笑する。


「完全にカメラマンモード入ってる。」


「だって!」


 ファインダーをのぞいたまま、ワッちゃんは興奮気味に答えた。


「この衣装、このメイク、この光! 撮らないなんてもったいないじゃん!」


 シャッター音が、第二被服室に心地よく響き続けた。


ワッちゃんが心ゆくまで男子3人を撮りまくって満足したのか、シャッター音がようやく止んだ。

第二被服室に静けさが戻る。


 ワッちゃんはカメラのモニターを眺めながら、小さく満足そうな笑みを浮かべた。


「……よし。」


 本当なら、まだまだ撮り足りない。


 逆光でも撮りたい。


 廊下でも撮りたい。


 階段でも撮りたい。


 頭の中には次々と構図が浮かんでくる。


 だが、今日は文化祭本番だ。


「……我慢、我慢。」


 名残惜しそうにカメラをケースへしまい込み、大きく深呼吸をする。


 衝動をどうにか押さえ込むと、ぱんっと両手を叩いた。


「じゃ!」


 五人を見回して笑う。


「出陣しますか!」


「おー!」


 男子三人とイッチが力強く応えた。


 ワッちゃんは手作りの呼び込み看板を手に取る。


 ダンボールをベースにカラー模造紙を張りビラビラモールで縁どりし、ラメやカラーペンでデコレーションした、気合いの入った一枚だ。


 その看板を高く掲げ、先頭に立つ。


 後ろにはタケちゃん、イシイ、モリの三人。


 自然と三角形になるよう隊列を組む。


 軍服風の衣装に身を包み、歩調を合わせる姿は、それだけで人目を引いた。


 そして最後尾にはイッチ。


 両手には宣伝用のチラシ。笑顔で配れるよう、何度か表情を確認する。


「よし、準備完了。」


 ワッちゃんが振り返る。


「目標は、十四時五十分までに一人でも多くの人へ存在を知ってもらうこと。」


 誰も、まだ踊らない。


 誰も、まだ正体を明かさない。


 今の目的は――。


 校内を練り歩きながら視線を集め、客をつかむこと。


 5人は静かにうなずき合うと、第二被服室を後にした。

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