都合のいい男。健気な萌々香。澪、もう遅いんだよ。さよなら。
【次回完結】澪、もう終わりにしよう。おれの大切なひとは萌々香さんなんだ!さよなら…。
放課後。
「優真くん。大丈夫?」萌々香は優真に優しく声をかけた。
「萌々香さん。あのときはありがとう。正直、驚いたけど、嬉しかったよ」優真はため息交じりにお礼を言った。
萌々香は決めた。周りの女子がなんの噂をしようが関係ない。
自分が好きな人といて何が悪い?
わたしは誰にも止められない。
「優真くん。いつも購買一緒にいってくれて、お昼も一緒に食べてくれるでしょ?今度はわたしが案内したいんだ。わたしの好きな場所。お礼っていうほどたいしたことじゃないけど。駅前の喫茶店知ってる?あそこのキングパフェ食べたいんだけど、一人じゃもちろん食べきれなくて。お願い!協力して!」
萌々香は努めて明るく言った。
「疲れてるときは甘いものがいいって言うし」
「ああ、あの喫茶店か。いいね!俺も気になってたとこ」
優真は澪から自分を懸命に守ってくれたことや、こうやって自分を励ましてくれる。それに、俺と一緒にいることで萌々香さんには変な噂が立っている。それでも俺と一緒にいてくれる。
優真はなにが大切なのか気が付き始めていた。
優真は喫茶店のドアを開けた。
辺りはカップルばかり。
内心、自分と萌々香の容姿がまったく釣り合ってないことを恥ずかしく思った。
「優真くん、あそこの窓際がいいな。いこ」屈託のない笑顔で優真を誘った。
パフェが運ばれてきた。
「ほんとにでかいな!」優真は目を丸くした。
「でしょ!?フルーツだって山盛りだし」
「いただきます」優真はパフェの生クリームをすくった。
「旨い!」
「でしょー。これ食べてみたかったんだから!」
優真はいびつだった心がだんだん丸くなるのを感じていた。
数か月後。
澪から電話がきた。
優真はぶすっとして「え?なんか用?」と突き放すように言った。
澪は泣きながら「相談があるの。他の人には言えないことなんだ」
澪の鳴き声に思わず、じゃあ行くと優真は応えた。
いつもの公園。澪は黙ってベンチに座っている。
「どうしたんだよ澪?お前が泣くなんて珍しい。まぁ話くらいは聞いてやるよ」
しばらく沈黙してから
「わたし、妊娠してた・・・」
優真は驚いて
「おまえ・・・避妊とかしてなかったのかよ?」
「だって、翔が嫌がるから」
優真は怒鳴った
「翔ってやつもクズだけど、それを断らないお前もお前だぞ!?」
澪は肩を震わせて泣いている。
「で、翔には言ったのかよ?」
「うん…俺には関係ないってフラれた」
「それはあんまりだな。男として最低だ」
「だけど、俺にはどうすることもできないぞ?これからどうするのか決めるのは、お前の勝手だし、責任とるのは翔しかいないだろ?」
澪のスカートは涙で滲んでいる。
「そばにいてくれればいいの・・。一人じゃ怖い。それに優真じゃなくちゃダメなの・・」
優真は澪の隣に腰かけて、ため息をついた。
「今夜だけは一緒にいてやる…」
翌日。
「おはよ!」萌々香が優真のもとに駆けてきた。
「ん?なんか元気ないじゃない?どしたの?」
「澪のやつ・・・妊娠してたんだって」
「え?」萌々香は絶句した。
「これからどうするのかは、澪の勝手なんだけど、澪は不安でひとりじゃいられないんだ。ほら、最近学校休んでいるよね?」
あんなに優真を傷つけてきたのに、自分が困ったときだけ「一緒にいてほしい?」ふざけないでよ!
教室の机を蹴り倒しそうになるのを萌々香は必死で我慢した。
そして震える声で
「優真くんはどうするの?やっぱ澪ちゃんのそばにいるの?」
「いくら酷いことを言われても、たったひとりの幼馴染だからな・・・力にはなってあげたいと思っている」
萌々香はいまにも優真の頬をビンタして目を覚まさせたくなった。
だけど、それは違う。わたしの本当に好きな人が困っている。なら、わたしも一緒に乗り越えよう。
自分でもバカなお人好しだとは思ったが、優真のためならできる。それが優真に届かなかったとしても。
萌々香は覚悟を決めてはっきり言った。
「優真くん。じゃあわたしも、それ手伝う。妊娠って大変なことだと思うし、女の子にしかわからないこともあると思う」
「萌々香さん?いいの?萌々香さんにあんな態度とった澪だよ?」
「わたしはいいの・・・」俯いて答えた。
それから澪は子供をおろした。
ある日、澪は優真をいつもの公園に呼び出した。
「助けてくれてありがとう。わたし、一番大切な人が誰かわかったの。優真なんだって。翔は結局、逃げた。でも、優真は逃げないでわたしを助けてくれた。もう遅いかな・・・わたし、優真のことが好きなんだ。いろいろ酷いこともしたし、言ったりしたけど・・・償いならする。萌々香ちゃんにも謝る。都合がよすぎるのは分かってる。だけど・・・ずっと一緒にいてほしい。幼馴染みじゃなくて彼女として。こんなわたしじゃダメかな・・・本当に大好きなの!!」
澪は大粒の涙をこぼしながら優真に告白した。
「あのさ、俺が澪を助けたのは、【好きな人だったから】じゃないんだよ。【ひとりの人間として】助けただけ。別に異性として好きだとか、やっと俺にふりむいてくれたとか、そんなこと微塵も思ってない」
「俺もだれが一番大切なのかわかったんだ。萌々香さんだよ。お前に罵詈雑言を浴びせられたのに、あんなに健気にお前を支えてくれる女の子いないだろ?俺は萌々香さんが好きだ」
【澪にはもうなんの感情もない】
【好きか嫌いかそれ以外か。それすら澪にはなんの感情もわかない。もうただのお人形さんなんだよ】
「これからは澪は澪の人生を歩んでくれ。幼馴染も今日で終わりだ。・・・17年間か。長いようで短かったな。幼馴染みとしては楽しかったぜ。いままでありがとな。そして、さよなら・・・元気で・・な」
澪は声を上げて子供のように泣きじゃくった。
「ごめんなさい…わたしを置いていかないで!」
「なんでもする!なんでもするから!!」
「優真!!!優真!!!」
しかし、優真はもう振り返ることはなかった。
萌々香さん。待ってて。もう何も迷わない。
今、俺の気持ち萌々香さんにぶつけるから。
優真の胸には今にもすべて焼き尽くすような、熱い感情が燃えていた。
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