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君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます  作者: みみぢあん


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2/22

2話 屈辱の初夜2 


 昼間、神殿で婚姻の儀式をとりおこない夫となったギリス様は、私に厳しい口調で責められると。

 壁際に寄せてあった椅子を引きよせ、子供のように不貞腐れてドスンッ! と乱暴に腰を下ろした。 



「とにかくオレは……副団長の好意を断り続けるのがだんだん面倒になって、君と結婚したんだ!」


「……面倒になって結婚したですって⁉」

(なんて無責任な人なの? これでも本当に騎士なの⁉ 時々貴族の男性には、こんな性格の人がいると聞いたことがあるけれど。まさかセイン様がすすめてくれた人が、こんな人だったなんて)


「そうだ、この結婚に他の理由はないさ」


「理由がないですって? 子どもが欲しいだとか、温かい家庭をつくりたいだとか……そういった普通の理由もないのですか?」


 怒りと屈辱でブルブルと震える手で、ベッドの上掛けをギュッと握り締めてギリス様にたずねた。


「オレは跡取りではないから、子供は必要ない」


「ええ! それは結婚前にお聞きしました。確か……騎士爵は一代限りのものですから。旦那様に子供がいても、受け継げないことは私も知っています」


 私の双子の弟たちもお父様から男爵位は継げても、騎士爵は継ぐことが出来ないから。そのへんの法的事情は、詳しくはないけど私も知っている。


「……とにかくオレは家庭だとか、子育てだとか。そういった面倒なことに、時間をとられるのが嫌なんだ! 本当は結婚もしたくなかったのに。副団長が強引に君を推薦してきたから、オレは仕方なくこの結婚を受け入れたんだ」


「そんな大切なことは、結婚前に言って欲しかったわ! なぜ言ってくれなかったのですか?」

(断わるのが面倒だからですって? 嫌々、私との結婚を受け入れた? 何てひどい言い人なの! それになんて迷惑な人‼ そんな考えを持っていると知っていたら、私の方が断ったわ)


 私は子供が欲しくて、温かい家庭を築くことを夢見て。この結婚に希望を持っていたのに。


 唇を噛みしめ、悔し涙がこぼれそうになるのをこらえていると。さすがにギリス様も気まずそうに、私から視線をそらす。


「どうしてこんな……」

「上司の好意を断って、オレの印象を悪くしたくなかったからさ」

「……そんな理由で」

「どうせ君だって結婚の適齢期を過ぎてしまい、嫁ぎ先が無くて困っていたのだろう?」


 結婚した理由で私に責められたギリス様は、卑怯にも私の弱みを攻撃して、私の言葉を封じようとしている。

 王国での結婚適齢期は十五~十八歳。 私は二十三歳。


「君は妻だから、夫のオレが生活の保証をしてやるんだ。他に何の文句があるんだよ」


 私と目を合わせようとしないで。ギリス様はフンッ! ……と鼻を鳴らして嘲笑する。


「ひどいわ……!」

(こんな人だったなんて)


 結婚前のギリス様は騎士団の仕事に追われて、私と会う時間がほとんど無かった。

 ──その時は、私と会えないのは……『ギリス様は真面目で、仕事熱心な人なのね』と思っていた。

 騎士の娘に生まれた私は、元騎士のお父様の忙しい現役時代を思い出して。『ギリス様は立派な騎士だ』と尊敬の念や親しみまで感じていたのに。


 単にギリス様は私と合うのが面倒だったのだ。


「……っ」

(このことを勝手に良い方向に評価して、私が追及しなかったのも悪いけれど。……でも!)


 こんな気持ちは、やりきれない。私の一生の問題だから、簡単に納得も出来ない。


「だから君は、こうしてオレと結婚出来ただけでも幸運だったじゃないか」

「幸運ですって……?」

「ああ。オレと結婚出来て君に礼を言ってもらっても良いぐらいだ」


「……っ」

(この人はなんて恥知らずなの。なぜ私をここまで侮辱するの⁉)


 ギリス様は自分の言葉で傷ついた私を、バカにするように嘲笑い続けた。


「私をそんなふうに見ていたのね……」

「とにかく、そう言うことだから」

「あなたは、なんてひどい人なの?」

「この結婚に多くのものを、オレに期待しないでくれマリエル。妻の君はオレが騎士の仕事に集中できるように、してくれれば良い!」


「ええ、あなたの考えはよくわかりました、ギリス()()! どうぞご自由に!」

(私のささやかな夢を壊したあなたなんて、大嫌いよ―――っ! この話をしていたほんの数分の間に、私はあなたが大嫌いになったわ)


 尊敬の気持ちと親愛の情をあらわし、“旦那様”と呼んでいたけど。私はあなたを尊敬する気など、すっかり失くしてしまった。


「フンッ!」

(あなたなんて、ただの“ギリス”と呼ぶことにするから!)


「おい! なんだその無礼な言いかたは……オレはお前の夫だぞ? もっと敬意をはらえ、マリエル」


 カッ! 怒りで顔を赤くして、ギリス様は私を睨んだ。

 

「ギリスさんが妻は必要ないとおっしゃられるのなら。私との初夜も必要ありませんよね? でしたら私はこれで失礼させていただきますわ!」


 座っていたベッドから飛び降りると、椅子の背にかけてあった友人に結婚祝いにと贈られた、新しいローブを羽織る。


「何だと、おい!」


「フンッ!」

(こんな寝室になんて、これ以上一瞬でもいたくないわ! この結婚は間違いだった)

 

 くるりとギリス様に背を向けて、私はドスドスッと荒々しい足音を立てて寝室の扉へ向かった。


「おい、どこに行くんだ?」

「あなたがいない場所です!」

「フンッ! 勝手にしろ! どうせ後でオレに泣きつき、謝ることになるのはお前のほうだ」



 私は屈辱に震えながら寝室を出た。





他サイト様で2年ほど前に投稿した作品ですが。

今回も大幅に加筆修正しながら投稿しているので、コチラのお話が最新の改訂版となっています。

良い暇つぶしになれば幸いです(^^)/

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