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君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます  作者: みみぢあん


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17/22

17話 結婚生活


 高齢を理由に、王立騎士団の騎士団長が少し前に引退した。

 予定通り副団長のセイン様が、新たな騎士団長へと就任することになった。

 

 以前よりも増々忙しい日々を送るようになっていたセイン様は、久しぶりに休みを取った。

 ガルフェルト侯爵邸で誰にも邪魔されず。家族だけで午後のひと時を過ごすという、贅沢を楽しんでいた。


 裏庭の奥のあずま屋(ガセボ)に置かれたテーブルでお茶を飲み。ティーカップをカチャッと音を立てて皿の上に置くと、私は夫に話しかけた。


「ねぇ、セイン」


「……んん?」

 腕の中で眠る生まれたばかりの娘ルイーズを、ニヤニヤと笑いながら見ていたセインは、私に名前を呼ばれて顔を上げた。


「そろそろ、ガブリエルにダンスの先生をつけたいの」

「ダンス?」 


「ええ。学園へ入学する前にダンスをしっかり習っておいたほうが、あの子も恥をかかなくてすむでしょう?」

(私がガブリエルに教えられたら良いのだけれど。実はあまりダンスは、得意ではないのよねぇ……) 


 自分のダンスがどれだけ下手なのかを思い出して、苦笑いを浮かべた。

 

「ダンスの教師を雇うのはかまわないが……学園でも習うだろう?」


 セインは学園でダンスを覚えたらしい。


「確かにそうですけど。私の弟たちがダンスを上手く覚えられなくて、とても苦労しているから……」

「ふむ……」


 私の双子の弟たちは現在16歳になり。セインの息子ガブリエルは13歳になる。


「完ぺきではなくても、少しだけ慣れておけば。ガブリエルが学園の講義でダンスを嫌いにならなくて、済むのではないかしら」

(私の夫は正しく説明して頼めば、私のお願いをかなえてくれる優しい人だから。きっと、わかってくれるはずだわ)


 夫にもう一押ししようと椅子から立ちあがり、私は向かい側の椅子に座るセインの横に移動した。

 ……そして甘えるように、娘を抱く夫の唇にキスをする。


「弟たちは最初の講義でつまずいてね。ダンス自体に苦手意識を持ってしまったの。だから……ね? お願い、旦那様。良いでしょう?」


 ニコリと笑い。私はもう一度、セインの唇にキスをした。


「マリエルは本当に、気が利くなぁ~」

「ふふふ……ダンスの先生を探しても良い?」

「良いよ。君の息子になれたガブリエルは幸せだよ」

「それは、私が素敵な旦那様の妻になれたからですわ……」

 

「ああ、頼むからマリエル。私を()()()などと、呼ばないでくれ」


 機嫌が良かったセインが、急に顔をしかめた。


「ふふふ…… わかったわ()()()

(もう、セインったら! 私が“旦那様”と呼ぶと、私との年齢差を感じると拗ねてしまうなんて!)


 私から見れば……セインとの十四歳の年齢差さえ、成熟した大人の魅力にしか思えないのに。

 急に機嫌が悪くなった可愛い夫の唇に、私はもう一度……愛情をたくさん込めてキスをした。


「ふふふっ……可愛い人!」 

(いつまでも恋人のように、名前を呼んで欲しいなんて! 大好き!)


「マリエル……揶揄わないでくれ」 




 ──突然。忙しい夫と過す貴重で贅沢な時間を邪魔する者が現れる。

 私は執事からその名を聞いた瞬間、ビクッと身体が強張った。


「失礼します、旦那様。騎士のギリス・モリダール様がいらっしゃいましたが、いかがいたしましょうか」


 侯爵家の執事が客の来訪を伝えに来た。


「……ギリス・モリダールだって⁉」


「……っ!」

(なぜあの人がここへ来たの? 彼は王立騎士団を辞めたから、二度と会うことはないとホッとしていたのに)


 私の動揺を感じ取った夫のセインは、眉間に深いしわを寄せた。



「旦那様、お断りしますか?」

 来訪者の名前を聞き不快そうな表情を浮かべた私たちに、有能な執事は『会わずに追い返しますか?』 ……と先に提案する。



「ああ、頼む。今日は休日だから私に会いたければ、王立騎士団の執務室へ来いと伝えてくれ」





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