やっぱり大事、理科の授業
お久しゅうございます皆様方。
「で、兄ちゃん名前はなんていうんだよ?」
一通り落ち着いたところでヤンチャそうな男の子にそう聞かれた。思えばこの子どもたちは俺の名前も知らない。その上会ってすぐの俺を仲間に入れてくれるなど、警戒心が弱いのか、それともよほど俺に警戒に値する何かがないのか。
ひとまず名乗ることにする。
「一義燬犖始だ。」
「長!どういうこと?意味は?」
「親が変わってただけだよ」
「いちいちニノマエギャラクシーって呼ぶのも何だか不自然な気がするね…」
「きゃらくしー…くしちゃん…」
「くしちゃん…イイね…。ペレ、それ採用!」
「くしちゃん…呼びやすいですね!」
「じゃあくしちゃんって呼んでくれ」
くしちゃんか。悪くない響きである。ペレ…不思議君のことだろうか。そう言えばこの子たちの名前を知らない。
「てかそう言えば…みんな名前は?」
「あ、私はモラです。宜しくお願いします」
「ペレ、1番強い、踵がとても硬くて綺麗」
「マナだ。」
「カパよ。」
「ン……ンマです…。どうぞよろしく…」
俺とは違って覚えやすい名前だ。全員二文字。
モラが一番しっかりしてそうな女の子。
心なしか目つきが他の子より鋭い。
ペレが不思議君。
両頬に大きい傷跡がある。
マナがやんちゃだけど優しい小僧。
顔が女の子みたいに可愛らしい。地雷系みたい。
カパが勝ち気な女の子。
他の子より2回りくらいデカい。
ンマがおとなしい女の子。
ひびのはいった眼鏡をかけている。
全員が肩甲骨あたりまでまで髪を伸ばしており、個性を主張しつつも統一感がある。
しかしそうなると短髪なのは俺だけだ。今なら能力を使っていくらでも伸ばそうと思えば伸ばせるかもしれないが、短髪が楽だし好きだ。別にいいか。
「さて!自己紹介も終わったことだけれど…どうする?結局遭難したまんまよ、アタシたち。」
カパがそう言った。まったくその通りである。この砂漠のド真ん中。方向感覚が狂う中で脱出しなくてはならない。
と言っても、砂漠からの脱出自体はいくらでも手があるように思える。
「あのよく分からないキモい生物使えばいいんじゃないのか?アレに荷車引きずって貰えばずっと進んでいけば何とかいずれどこかには着くだろ?」
いい案だと思ったが…モラが言うには、
「それは厳しいですね…あの生物はおそらく人間界の動物。凶暴で強力な上、人間に調教されている以上魔族の私たちにどうこうできるものでもないと思います。」
とのこと。
人間界はとんでもない魔境だということが分かった。まるで魔境。いや、人境?
しかしそうなるとどうするか。
「そもそも、アタシたち街に帰れないしね」
「え、なんで?」
「孤児院の連中が探してるのよ。顔が広い上に一応外面はいいから多分アタシたち街に戻った時点で連れ戻されちゃう。
アタシたち優秀だったからね!」
「まぁ優秀だったからこんなやべぇ状況なんだけどな。くぅ~!優秀さが憎い!」
「ま、真面目に考えようよ〜……」
カパ&マナの馴れ合いにンマが、あたふたしている。
やっぱ可愛いなコイツら。だがこの子らの言うことが本当だとしたら少々面倒だ。
「砂漠から出るだけならお前らをおぶって突っ走れば解決なんだがなぁ…」
「5人もしょってけるわけないだろぉ。いくら大人でもサァ。」
マナがコメカミを人差し指でトントンしながら言う。
あー。この能力は特異魔術とやらってことにしようか。その方が都合がいい。
「やかましゃあ。俺の特異魔術ならできるかもしれないってことだ。」
「そう言えばこれも聞いてなかったわね。」
「興味津々津々浦々」
「そこまで言うなら見せてやろう」
「そ、そこまで言ってませんけど……」
全身を肥大化させる。ミチミチと筋肉が弾ける音とともに、俺の影はやがてみんなを覆った。
呆気にとられた、といった様子だ。
無理もあるまい。
「……」
「うぅ……」
ンマが泣いてしまった。急いで元に戻す。
「…ごめん。」
「その姿、筋肉製の暴力の化身、さながら」
「ぜ、ゼーンゼン余裕だったぜ!!怖くないんだぜ!クソが!!」
「うぅ…」
「よしよし…怖かったね…」
「もうちょい詳細に説明しときなさいよ!」
みんなに怒られてしまった…。そう言えば化け物みたいな姿だったことを忘れていた。使い勝手はいいが、見た目に難ありの能力だ。
「ごめんよ……
とまぁ、あぁなると相当のスピードでずっと走り続けられる。背中も広いから全員を服で俺の体に固定したらいい移動手段にはなると思う。どう?」
「…インパクトに全部持ってかれましたけど、案としては悪くないかもしれませんね。でも…」
「街に帰ったらヤバいしなぁ。」
「うーん」
確かに闇雲に走って街にでたらまずいのか。どこか誰もいない場所に出なくては…もしくは孤児院の連中の手が届かないところ。
…あそうだ!!チケット!忘れてた
「場所についても1つ目星がある。」
俺はVIP券を取り出した。
「な、なんです?それ」
ンマが若干警戒している。
「安心しろ。ただの紙切れだから。」
「ほっ…」
ンマは胸をなで下ろしたようだ。
「だが!ただの紙切れじゃない!」
「どっちなんですか!!!」
久々の交流で舞い上がってしまったようだ。
気を取り直して…。
「オホンっ…これはリゾートの1週間宿泊VIP券だ。期限は明後日まで。ひとまずここならみんながいるなんて思わないだろうし、いい休憩ポイントくらいにはなるんじゃないか?」
「いいじゃん!なぁんだ最初から出しとけよぉそれ」
「あー…ただ問題もあってな…」
「「「「「?」」」」」
「地図はあるんだが、砂漠のド真ん中じゃあどっちが目的地か全く分からないってことだ。」
「「「「「あー…」」」」」
「くしちゃんが砂漠から1人で脱出せず荷車に声かけたのって…」
「モラの想像通り、ここに行くのが当初の俺の目的だったからだ。方角さえ分かればこっちのもんだから…」
「…つまり、結局状況は何も変わってないってこと?」
カパの言うとおりである。結局動けないことに変わりはないのだ。
「いえ、少なくとも明確な目的が定まったのは確かだと思います。
2日以内にリゾートに行くこと。
そのために方角を知る必要があるということ。
まず何をしたらいいか分からなかった時よりは状況は好転していると考えていいと思います。」
敬語交じりにモラが言う。
確かにその通りだ。
「確かに…方角さえ分かれば…」
「方角…」
「方角…?」
全員で一生懸命頭をまわして考える。
太陽…この世界でも西から東なのだろうか。
空を見上げる。
太陽が2個ある…
「くぅ〜…」
「どした?くしちゃん」
「あ〜何でもない。」
全員が目をぎゅってして考えてる様子を見る。
インテリっぽいモラでさえ苦労しているようだ。
「あ!!」
カパが急に大声を出した。
「何か思いついたの?」
ンマがそう聞くとカパは興奮気味に
「ペレよ!ペレの特異魔術!」
「ペレ?」
彼の特異魔術…が、何か鍵を握っているのだろうか。
「ほら、方位磁針って磁石でしょ?確か。
だからペレを、こう、上手いことやって…ね!!」
「んーー…」
「確かにできそうな雰囲気ですけど…」
「どう?ペレ」
「分からんよ」
何やら四苦八苦してる様子だ。
「ペレの特異魔術がどうしたんだ?」
「ペレは自分のことを強力な磁石にできるのよ」
「え!磁石に!?ってことは……………っ!!………?」
なんてことだ。絶対上手いことやれば方角分かりそうなのに、
学がないからどうすれば上手いこと利用できるかさっぱり分からない。
「確かになんか上手いことやれば何とかなりそうだけど…」
「わ、私たち戦闘訓練ばっかだったから、こう言う座学…簡単なことしか…わ、分からないです…!」
「くっ…!」
「困りましたね…」
全員そんな感じらしい。
「方位磁針…てさ、磁石でやるんじゃなかったっけ?」
「細い鉄の棒をペレで磁石にして、方位磁針の針に…」
「俺、鉄、球体しか持ってネェ、不覚。」
「球体かぁ…」
…………3時間後……………
「よし…モラの特異魔術の炎でペレの持ってる鉄球を熱して、俺がそれを伸ばす。冷めたらペレにくっつけて、磁石にして、方位磁針を作る…指示役はマナ…これでいいか…?」
「多分…いけると思います…」
「もう何も思いつかないわ…」
「いけんだろ…多分」
「あ、頭おかしくなりそうです…」
「あばば」
「よし…いくぞ!モラ!」
「はいっ…そりゃぁぁ!!」
「モラ!炎ストップ!くしちゃん!今だ!伸ばせ!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「よし!置け!」
ぽいっ
「よし!みんなでフーフーだ!!」
「「「「「「フー…フー…」」」」」」
………30分後…………
「よし…ペレにくっつけるぞ…」
「…来い」
ペタ…
「もういいぞ…」
「おぉ」
「Nどっちだ?」
「こっち」
「あとは指の上に乗っけて…」
「「「「「「………(ドキドキ)」」」」」」
クルッ!
「回ったぁ!!!!」
「っシャアオラッ」
「燃え尽きました……」
「よ、良かったぁ」
「やったのね!アタシたち!」
「ハハハハハハ!!!これが磁石ゥ!!パワぁーー!!!」
そりゃもうみんなで大いに喜んだ。
笑い、踊り、肩を抱き合いながら喜んだ。
さながら初めて火を発見した人類のように。
見てくれてありがとうございます。
登場人物増えるともう文章書くのがとにかくムズいですね!この後人間失格とか読んで勉強しようかな。




