グッドボーイ
どうもお久しゅうございます。
スマホが水没して壊れましてね。
修理出してました。直って良かったですわほんま。
「チュンチュンぴrrrrrrrrrrrrrrrrrr」
上から鳥の鳴き声が聞こえた。
だが空を見上げても何もいない。
見渡す限りの地平線。2度目もそんなところに迷い込むことになろうと誰が思った。少なくとも俺は全く思っていなかったよ。
俺は今、遭難している。
この砂漠のド真ん中で。
……数時間前………
とてもまずい!他の拷問官が集まってきた。足首…いや、下半身を肉爆弾に変化!
「あばよ!!!」
パァァァンッッッ!!!!
これはすごい!ノリでやったけど本当に飛べた!だがこのままではただの垂直跳びだ。どうすれば自在に飛びまわれる……あ、そうだ!足首と手首を定期的に爆発させて推進力を得れそうじゃないか?と決まれば。
「……ふんッ!」
パァンパァン…パァンパァンッッッ!
「おぉ!すごい推進力だ!もうガラスの城が見えなくなったぞ。しかしどこに降り立とうか…街はダメだし…
…あれ?なんか?
まずい!落ちる!幸い街は抜けて…なんだこのだだっ広い砂漠は!!ここもまずい!!
でも………駄目だぁ!
ギャアァァァァァァ……」
グチャ……
………現在……………
で、ソレ以来肉体の操作がうまく効かなくなってかれこれ砂漠を彷徨っている。
今は彷徨うのをやめてただ、砂漠のど真ん中に座り込んでいた。
なぜ急に使えなく……ああまさか!!!!。
思い立って腹を掻っ捌く。
「…ない!!!」
アマンが入れてくれた球体…それと魔導具?…がない。
痛みに耐えるのに必死で気が付かなかった。
これ、大分ヤバくないか。
必死に探した。腸の間に挟まったりしてないか、肺の方まで登ってたり……あ、
そういえばあの箱用のおとりで全身置いてったっけ?…箱に忘れてきた?
「いやいやいやいや」
馬鹿な。体内の魔導具がなかったら俺はとっくにただの死体になはず。だのに生きているどころかあんな意味のわからないのトンデモ能力まで使えるなんておかしい。
そういえば、アマンは再生能力について特に言ってなかったが、もしや俺自身の能力…?!
いや、ない。最初、アマンにやられて出血で死にそうな感覚になったが後にも先にもあの感覚はあの時だけだ。確実にこの世界に来た時にそんな力はなかった。再生も不死もアマンによって獲得した。間違いない。
というか、拷問の時点で腹を掻っ捌かれたりしたはずだが…特段ハデスは何の反応もしてなかったぞ。
これ以上腐らない魔術と自律思考できる魔術と、アマンの腐ってるものを操る魔術…あと……あ、自律して行動できる魔術…を搭載した魔導具。そして、これらを駆動するためのアマンの30年分の魔力。これらは実質俺の生命の全てだ。
俺の活動にどれもかけてはならない必須なもの。
だから、どれが欠けても動けないはず…何故…全て見当たらないのに俺は生きていられるんだ。
ソレに完全に何となく使ってたが、この能力も何だ。どういう原理で…どこからこんなエネルギーを得ていたんだ?
…まぁいいか。良くはないが。
取り敢えず生きてるし。俺みたいな馬鹿がいくら考えても仕方がない。
取り敢えず能力が、完全に消えたわけじゃない。これだけ覚えてればいい。
ソレより目先のことを今は考えよう。
絶賛迷子…いや遭難中なのだから。
ひとまずは、この
【VIPサービス:1週間無料宿泊券】
これを使うために目的地に急がねば。期限がもうあと2日しかない。でも場所がよく分からない。一応もう一枚の紙に地図はあったが、…こんな砂漠のド真ん中ではまず役に立たない。
てことは、ひたすら歩くしかない…?
「………あーーーーーーーーーーーー」
誰も答えない。静寂が辺りを包んだ。久々の一人の時間だ。
移動の前に1つ試してみよう。
「ふんっ!!」
ムキッ
「おぉ!」
肉を自切したり超高速再生させたり、肉片を動かしたり爆発させたりはできないが、意図的に筋繊維を傷つけて急速に肥大化させることはできるようだ。
となると何かエネルギー的な問題だろうか。ご飯食べればまたできるようになるだろうか。エネルギーの使いすぎという話ならば分かりやすい話だ、ひとまず砂漠を出て何か生き物を食らいたい。身体の糧に。
「……あつー………」
拷問で箱に閉じ込められて、最初考えてたことがある。この世界は実に物騒だ。俺が人間である限り、ここでマトモな暮らしも、幸せも掴めやしない。
だが、もし、俺が魔族だったなら?
要は見た目の問題である。ここに来て魔族をみてきたが、おそらく近世レベル以上の文明社会があるとみた。服装も何やらそれらしいし、拷問専属の組織、都市の存在、ガラスの建物、それに拷問で閉じ込められたあの箱。そしてこのVIP券。
それなりの生活を送れていそうな雰囲気がする。
先ほど俺が手に入れた能力。
肉体の再生。
肉体の意図的な損傷。
自切した肉体の操作。
これらを応用した【肉爆弾】【筋肥大】【骨操作】
が今のところ使ったもの。
だが。この能力もっと応用すれば、肉体を思うがままに変化、変身させることが可能なのでは?
そう、
魔族に変身することができるのではないか?
「……ンッ!」
ゴキャ…メキャッ…グチャ…
「…よし。……あ、自分の顔が分かんねぇや」
せっかくやってみたがただ痛いだけで終わった。
なんか顔がめちゃくちゃになった気がする。
視界に鼻先があるが、多分三センチくらい伸びている。
やはり自分の姿が見えないとめちゃくちゃな変身になってしまう。
水たまりでもなんでもいいから魔族に会う前に鏡のようなものを見つけて変身しなければ。
「……水たまり?」
人間としてどうかと思うことだが、頭に浮かんできてしまった。こんなテンションが下がるひらめきはあるまい。
今の俺は死なない。故に、血溜まりを作って水たまりを作ることも可能だ。
時間はかかるが落下後も完全に再生はしている。
手首に切れ目を入れ大量出血し血の水たまりを作れる。
「…まぁ…うん…うん……えー…いやぁ…………いやぁ〜〜〜〜………」
何となく、嫌だ。別に痛みが問題なわけでもない。今更この程度躊躇う理由にならない。
うまく言葉にできない複雑なものからだ。これは。
…いや、まぁ、今更だろう。言葉にもならないようなことを気にしたって無駄だ無駄。思い切りが大事なんだ結局。
「…」
ブッシャァァァ…
どんどん血がでる。その血は砂漠の砂へ吸い込まれて消える。大量に出血しているが、全て嘘だったみたいに赤いシミだけが残る。
しまった。砂ってそういうものか。
砂をくぼませ、脱いだ服をくぼみに合わせる。
そこに血液を流し込む。
溜まった。だがいずれは染み込んでしまう。
今のうちに早く変身しなければ。
ゴキャ…メキャッ…メキャッ……パキパキパキ…
………数十分後………
大分様になった気がする。
特徴的なトンガリ耳と鷹のような目。そして、厳しかった天使の輪みたいなものも骨を加工して、操作して浮かせることでそれらしくなった。
問題は肌の色である。
あの紫色は肉体の操作ではどうしようもない。
こればかりはあえて日焼けして真っ黒になってみたりしたのを言い訳にするしかないだろう。
よし!これで今度いつ魔族に見つかっても仲間として受け入れられるはず。
あとはこの砂漠から抜け出すだけだ。
「ふんっ!」
脚を【筋肥大】して一気に砂漠を突っ切る。
【肉爆弾】のために砂漠の生き物をセコセコ探すよかこっちの方が断然早い。
【筋肥大】も今まで以上にうまく使いこなせている気がする。スピードが前と比べて段違いだ。
どこに着くか分からないが、ひとまず砂漠よりはマシだ。魔族がいるところに行けばVIP券の場所について話を聞けるはずだ。
おや?
見たことのない生き物が大きな荷車みたいなのをひいている。首のない、全体的にツルツルとした四足歩行の生き物。脚はそこそこ長い。すごく気味の悪い形だ。
だがあの荷車の中、おそらく誰かいるに違いない。このチケットの場所がある方角くらいなら教えてもらえるんじゃないだろうか。
「おぉーい!すみませぇーーーん!!」
全速力で逃げていく。…あ、身体がバキバキのままだ。これはいけない。もとに戻さなくては。
「ちょっと待ってください!!道を!道を教えてください!!!」
バキッゴキャっ…メキャッ……
しまった。変身に力を使っているせいか身体の制御が少し難しい。逆に大きくなってしまった。
「ウワァぁぁぁ!!?!来るなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
近づいてみると荷車の後から複数人影が見えた。魔族だ。だが見たところ子供のようだ。今しがた聞こえた叫び声は大人のそれだったが、どこにいるのか。
「これでもくらいやがれッ!化け物がっ!」
俺は驚いた。
荷車の中の影から出てきたもの。
そいつは、魔族じゃなかった。
「!!!」
驚きも束の間、何かキラキラしたものが俺に飛んできた。星屑の様に満遍なく視界に広がったキラキラは約1秒後、彼の身体に次々と入り込んだ。
「って」
すぐに体外へ排出した。手のひらにキラキラを乗せて見てみると、どうやら透明な直径3ミリ程の砂粒のようだ。それを大きな力で大量に投げつけてきたのだ。
「な、何だコイツ!バケモノじゃねぇか!」
「勝手に驚くんじゃねぇ。助けを求めただけだろうがよ。確かにこんな不気味な身体だけどさぁ、何も攻撃までしてくることはないだろ。」
「うるせぇ!魔族の分際で!つか魔族なのかも怪しいなぁ気持ちわりぃ。
おい!お前ら!コイツ手強そうだ。手伝え!」
目の前の男がそう言うと2人の男女が荷車の奥から出てきた。
「ナッサケネェナァ兄弟。魔族ゴトキニヨォ。」
「いや流石にありゃ他とは別格でしょどう見ても。この脳筋。」
「べらべらやかましゃあ!!口以外を動かせ!!」
まさか砂漠で戦うことになるとは思わなかった。しかしどういうことだろうか。
「1つ」
「「「あ?」」」
「1つ聞かせてもらいたいんだが」
コイツら、
「お前ら人間って、みんなそんな化け物級のムキムキばかりなのか?」
そう、そいつらは男女両方がまるで世界ナンバーワンボディビルダーをはるかに上回るかのような筋肉の化け物だ。
「オマエには言われたくねぇなぁ。」
「バケモノハオマエダヨ」
「こんなムッさいのと同じにしないで欲しいわね」
もはや俺の知る人間ではない。今までの奴らはよく俺のことをコイツらと同じ人間として見れたな。
というかど田舎にいた女の人はこんなんじゃなかったぞ。…いや、あのあと襲ってきた人間の中にもちょくちょくガタイがいいのはいたか?
もともとはそっちがデフォルトなのか?
「とにかくだ。多対1ならお前ら魔族は確実に無力だ。魔術で偽りの力を得ようと、真の力には及ばねぇ!」
最初砂を投げてきた男が殴りかかってきた。
だがこの程度ならかわせる。
「甘いわ!」
「オツム残念」
いつの間にか女が背後に回っている。
「クソっ」
腕を抑えられ、がっちりと固められた。
そしてその隙をついたカタコトの男と砂の男が顔と金的に一撃を食らわしてくる。
顔は崩れ、金的は潰れただろう。
だが攻撃は止むことなく続く。
身体を、徹底的に破壊せんとする勢いだ。
なかなかのコンビネーション。
そして容赦のなさ。
これは大変大きい差だ。
魔族も身体能力が低いわけではないが、多対1いや
扱う魔術によっては1対1でも十分負けるだろう。
人間が魔族と渡り合える訳だ。
既に内臓はまろびでて、全身がグチャグチャだ。とどめ、とでも言うかのように頭部への打撃が放たれ、俺の頭からボロボロと骨や血や歯や脳が溢れ出た。
猛攻は止んだ。
「やれやれまさかこんな砂漠のド真ん中でバレるなんてよぉ」
「ヤッパソンナアマクナイヨ魔族」
「もーまた新しい服血まみれよー。いい加減にしてよね血って落ちないんだから。」
「定期的に無理して買ったパッツパッツの服自分で破ってるだろうが。誤差誤差。今回の謝礼金で勝手に買っとけ」
「なんですってー!」
メキャッ……
「「「……?」」」
「イ、今死体ノ方カラ音シナカッタカ?」
「馬鹿言うな!あそこまでやって生きてるような魔術持ちの魔族がこんなとこで遭難してるわきゃねぇだろうが!」
身体を再生するうちに徐々に戻って来る感覚たちが、奴らのウザったいじゃれ合いを次々と脳に放り込んでくる。
「ちょっと!アイツなんかどんどん…キャア!!気持ち悪い!」
「おいおいおいおい」
しかし。
いや、このことに俺自身も大層驚いたのだが、
なんと俺の中には憤りが欠片もなかった。
初対面でこんなことをされたら今までの俺ならば即座にブチギレていた。
受けた痛みに正気を失ったように怒り狂い発散していた。
今思えば、ガキだった。
結局は理性を失った理由なき、雑な、美しさにかけるただの暴力。
それがどうやら痛みを克服したことで、力を手にしたことで、心に余裕が生まれたようだ。
そして俺の中に初めての行動パターンが生まれた。
一回落ち着いて話す。頭を回しながら怒る、ということができるようになったのだ。
「ナァ。おれバァ…おばエラにナニガジダカア?」
「う、ウワァぁぁぁぁ!!!!」
「バケモノ!!」
「イヤぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
3人衆は逃げていった。荷車を置いて。
俺は暴れなかった。
俺の中に新たな理性の誕生を感じた。
喧嘩に勝つこととは別種の達成感に似た喜びを確かに味わった。
身体が完全に再生した。おそらく顔ももとに戻っているだろうから戻しておこう。あとあえて瞬時に日焼けする。要領は覚えた。
メキャッゴキャ…
「よしっ」
中には確かまだ魔族がいるはず。そっちになら話が通じるかもしれない。
荷車に向かい、中を確認した。
「…!!!!!」
やはり、あいつらは多少痛ぶっておいたほうが世のためだったかもしれないと、掌を返し、思った。
荷車に詰められた魔族の子供たちはよく見れば両手両足を縛られ、口輪と目隠しがされている。身体中がアザだらけだ。震えている。
聖人君子でなくとも、こんな状態の子供が目の前にいて、その張本人がいたら、そいつに対して憤りを覚えるだろう。
奴らは持ち前の身体能力で既に地平線の小さな点になっていた。
俺は砂をすくい、それを思いっきり握りしめた。手を重点的に【筋肥大】させ、握力を増した。
砂はやがて岩のような塊となった。
3回、その行程を繰り返した。
「…クソっ」
こんなことをした所でどうにもならないことは分かっている。でも身体が言う事を聞かなかった。
まだまだ俺はガキに過ぎなかったということだ。
「アァァァァァァァッッッ!!!!!!!」
思いっきり3回、点に向けて投げた。当たったかどうかも分からない。気持ちも晴れなかった。
「クソォォォォォォ!!!!!!!!」
どうしょうもない、気持ち悪いものが俺の心に染み込んで離れない。さっきまでの成長したという思考が恥ずかしくなる。結局理性的であろうがどうであろうが自己満じゃないか。
現実は何も変わっていない。
俺自身も何も変わっていない。
ここから先はどうにもならない思考の繰り返しだった。
そして、その思考の中に1つの石が投げ込まれた。
「ふぁ……」
弱々しくも、確実に荷車の子供の声だった。
口輪が邪魔してマトモに喋れていない。
ドガァッ!!
自分を殴った。あれこれ考える前にまずはこの子たちをどうにかするのが先だ。またしょうもない自己満思考繰り返してる場合じゃない。
「大丈夫!?あいつらは追っ払ったよ。安心して!」
不器用に声をかけながら子供たちの拘束を解いていく。拘束を解いて俺の顔を見ると、安心したのか全員泣き出した。男の子2名女の子3名総勢5名。
お互い抱き合って泣きじゃくっていた。
どうすればいいのか分からなくて、俺はそれを暫く、何も出来ないまま眺めるしか出来なかった。
やがて子供たちは泣き止み徐々に落ち着きを取り戻していった。頃合いと思って俺は話しかけた。
「お、落ち着いたかい?」
「「「「「…うん」」」」」
「良かった…ひとまずあいつらは追っ払ったから安心してほしい。」
「「「「「…」」」」」
「それで…あー…と、取り敢えず!君たちを親元へ返そうと思うんだけど」
「俺たちに親はいないよ」
男の子が声をあげた。
「え、あ、そっか…」
「私たち孤児院にいたの。それでね、…抜け出してみんなで人間の街にいったら攫われて…」
「バカっゆうなって!」
「うるさい!ちゃんと説明しないとお兄さん分かんないでしょっ!」
「うるさいって何だよ!もっと言い方あるだろ!」
「君たち、思ったより元気?」
やんちゃそうな男の子と勝ち気な女の子が口喧嘩し始めてしまった。残り3人の子たちが頑張ってなだめようとしている。内心どうかは分からないが、ぱっと見は大丈夫そうだ。とにかくだ。この子たちを助けてしまった以上、孤児院に返さなくては。
「おっほん!…取り敢えず、俺は君たちをその孤児院に返す。」
露骨に微妙な顔をし始めた。
「嫌なの?」
「…うん」
「そりゃ」
「なぁんで?」
「「「「「…」」」」」
「怒られるから?」
全員黙って頷く。
「孤児院の人は君たちを怒るとき、君たちをボコボコにするの?」
全員黙って頷く。
完全に予想外。
「あ、そう…………そのアザってさ、あの、人間にやられた?」
「人間にもやられたけど、大体はあのクソジジイだよ」
「孤児院の、院長がいるんです。その人すっごく怖くて…」
「あいつらはアタシらのこと強力な兵器としてしか見ちゃいないのよ」
「耐えられなくなって、この5人で抜け出してきたんです。私たちは他の子たちみたいに物心つく前から居たんじゃなくて、もともと路地裏生活していたところを拾われた身だったから…」
「………世は、仏は、神は、実にボケカスである」
「…そう……そっかぁ…大変だったんだね。頑張ったんだね。…ほんっっとに偉い。」
てっきり子供ながらの好奇心で勝手なことしたパターンだと思ってた。そのパターン想定した叱る準備してたのに…こんなフィクションみたいな悲劇に巡り合うことになろうとは。
少し涙が…溢れないようにしないと。
しかしどうしたものか、返す場所がないとなると…どうすればいい?
「どうしたんです?お兄さん。」
「いやぁ…ごめん。何でもないよ」
どうすりゃいいか分からんなんて言えるか!こんな小学校低学年くらいの子供たちに。
いやでも分からん…分からんぞ…
「その孤児院に人たち、国に言ったらひっ捕らえられたりしないの?」
「無理だぜ。なんか知んねぇけどこの前こっそり警安隊に言いに行ったらガン無視されたし。」
「完全に違法なはずなのに何故か…」
「そんな街の中でどれだけ逃げ回ってもどうせ捕まるわ。だからアタシたち人間の街に逃げてきたのよ。」
「私たち何も悪いことしてないのに…」
「国も、法も、あるのに、ない。まるで、幻。スッカスカ。どいつもこいつも、脳スッカスカ。」
「よほどだね…」
「あんた偉い人だろ!そんでいい人だろ!頼むからあのクソ孤児院ぶっ壊してくれよ!」
「あ?!、俺はただのトラック運転…いやここじゃ無職だよただの。」
「嘘言うなよ!あの人間追っ払えるくらいつえぇのに無職なわけあるか!!」
「わりんだけどマジで無職でどうしょうもないんだよ。」
「無職がなんで砂漠のど真ん中にいんだよ!!」
「俺が聞きたいよ!!!」
「落ち着いてください!!!!」
しっかりしてそうな女の子が場を鎮めた。俺、暴行被害を受けた女児以下の精神年齢なのか…?
「悪かったな…大人なのにムキになって」
「俺こそ…ごめん」
なんていい子なんだ。すぐ謝れて。大人の俺を収めて。それに比べ俺って奴は
「うっ…」
「な、泣いてる…」
「アタシ泣いてる大人初めて見たわ…」
「弱男、泣くな、がんば」
「泣いてねぇ…し…!」
みんなが肩とか背中ポンポンさすってくる。
プライドが、ぶっ壊れてしまう。
俺は頑張って立ち上がった。
「いや、失敬失敬。もう大丈夫!」
「嘘つけ弱男」
「無理しちゃ駄目よ弱男」
「大丈夫ですか、よ、弱男さん」
「ゆっくりしゃべりましょう弱男さん」
「弱男流行っちった、マジウケ」
「ガキめら!!!」
「「「「「キャッキャ」」」」」
癪だが笑ってくれるなら良かった。癪だが。
だがまぁ雰囲気が柔らかくなったお陰でこちらも言いにくいことが言いやすくなった。
「取り敢えず!聞いてほしいことがある。
………ニヤニヤするな!」
いじりやすいおじさんみたいな感じになってしまった。すげぇニヤニヤしてる。緩みきりやがって。
「俺には、家、金、職、地位、知り合い、友人、家族、何もない。砂漠にいるのもこのチケットをたまたま拾って行こうとしたら迷子になっただけだ。だから、君らのことを面倒見てやれないんだ」
全員一気に無表情になった。
「嘘…じゃ…ないのか?」
「すまない…」
「「「「「……」」」」」
全員が顔を見合わせて何か示し合わせている。
すると俺のほうに寄ってきて、俺を抱きしめた。
「オマエ、今日から俺等の仲間だ。」
「え」
「仲間が辛いとき、みんなで抱きしめるんです。和らぐんです。何かわからないけど。」
「大丈夫です…」
「誰も、君を、見捨てない」
「辛かったわね…可哀想…そんな年になるまでずっと……大丈夫…」
「ちょ、…まっ」
いけない。いい子すぎるこの子たち。
まずい感動して…このままでは泣いてしまう。
でも…今泣いたら、
なんかまるで辛いことが一気に溢れ出したみたいな感じになる!
それはこのグループに入ったも同義!クソっ。まだおっさんって年でもないのになんでこんなに涙腺が。
ヤバい。ヤメロ。でるな。
………………あぁ…
「うっ…うっ…!」
「「「「「よしよし」」」」」
この日、俺はこの子どもたちの仲間になった。
読んでくれてありがとうございます。投稿してない日に2、3人ちょこちょこ読んでくださる人がいるって言う事実にマジで泣きそう。
ありがとうございます




