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死にかけ女と猫のぬいぐるみ  作者: 明星 志
第4章 犠牲の灰
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キュストの闘志

※エブリスタ・カクヨムにも投稿しています

 アイリスはレイリーさんと逆で、戦場に出向いて疲労を回復したり負傷者をすぐに動けるようにするタイプの治癒士だ。


 だからこそ、真っ先に狙われる危険を伴う。


「さぁ、続けるぞ」


 すっかり復活したキュスト隊長は、さらに勢いを増す。


 これは、レイリーさんに治癒魔法を使う隙を与えてはいけないということだろうか。


 いや……もし私がレイリーさんに仕掛けたなら、キュスト隊長はその隙を絶対に――


「あっ!」


 一瞬の隙を突かれ、私は頭にキュスト隊長の剣をまともに喰らった。兜がある分、音が反響して予想以上に驚くし眩暈(めまい)まで……。


 はっ!


「ぐう……。ごめん、ナズナ」


 振り返ると、キュスト隊長は、仰向けに倒れたアイリスを踏みつけ、首に切っ先を突き付けていた。


「余計なことは考えるな。俺を倒すことが目的ではないはずだ。今はアイリスを守ることに専念しろ」


 はぁ、バレバレだ……。


「ごめん、アイリス」

「さすがに手厳しいね!」


 体に付いた埃をパタパタと払いながら、アイリスが立ち上がる。


「ナズナ、もし戦場で末裔と相まみえた時、奴らは今のような攻撃に加えてディプリミスを使って来る可能性があるんだ。勝敗はどちらが先にディプリミスを繰り出すかにかかっていると思え」


 そうだ、もし末裔と戦闘ということになったら、ディプリミスまで考慮しなければならない。


「ナズナ様、ディプリミスは敵より早く出さないと、その機会は二度とありませんよ」


 レイリーさんにも痛いところを突かれる。


「肝に銘じます」


 もしも今の場面が、本当の戦場だったら……


 アイリスは最悪殺害される。良くても拉致されて、どこかへ連れて行かれてしまう。


 ダメだ、そんなこと。


「さあ、もう一度行くぞ」


 また、闘技場中央にて向き合い、私がグリップを握り直している間に、キュスト隊長がアイリスを襲う。


「あ、ちょっと待ってください!」

「馬鹿か! 戦場でそんなこと通用するか!」


 その間にアイリスは素早く走り、闘技場を一周し、砂埃をあげて私の背後に滑り込んだ。


「いいか! アイリスが逃げ回っていいのは、お前が倒された時だけだ。守りを突破されて治癒士が逃げ惑うなど、末代までの恥だと思え!」

「く……」


 何も反論ができない。


「本来、治癒士は戦場で他の負傷者の手当てもしていることは分かっているな?」


 話しながらも、キュスト隊長は剣を構えたままだ。


「はい……」


 考えるのはやめよう。とにかく本当にアイリスを守りぬかなきゃ。




 飲水のための休憩時、アイリスが恐ろしいことを言いだした。


「キュスト隊長は、次は本気で僕を刺しに来るかもしれない」

「え?」

「キュスト隊長の特訓って、そういう感じだから……。ほら、今日はレイリーもいるし」


 ベテラン治癒士のレイリーさんがいるのを良いことに、私もピルーコ指揮官に斬りつけられたし、この闘技場でもそれなりに怪我もした。本当に、アイリスに剣を突き立てるかもしれない。


「……わかった。絶対に守って見せるから」

「ナズナも本当に気を付けてね。キュスト隊長のあの顔はヤバいよ」


 殺気立っているというのは、あのような状態を指すのだろう。あんな顔は今まで一度だって見たことが無い。

いつもお読みくださり、ありがとうございます。


最近、また序盤を含めて用語の統一のための修正をしています(ついでに誤字脱字も)。



最近、キージェ君とナズナちゃんのやり取りを書くのが楽しくなってきていたところで、どうしても今後の展開上必要なため第4章「犠牲の灰」を書いていますが、第5章までお付き合いいただけると幸いです。


お話が気に入っていただけたら、ブックマーク登録やいいねや星など、どうぞよろしくお願いします!

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