魔法のありよう
※エブリスタ・カクヨムにも投稿しています
レイリーさんに予告通り叩き起こされ、監視の元で身支度を行う。
「ナズナ様、良く眠れましたか?」
「えぇ、それなりには」
甲冑を装備して、地下へ行くと既にキュスト隊長が待っていた。
「どうだ、疲れは取れたか?」
「はい。大丈夫です」
体は本当に何ともないし、むしろ軽いくらい。
「レイリー、今日は適度に頼むぞ」
「あと4日です。時間はありません。お二人とも死ぬ気で頑張ってください」
レイリーさんがどんどん冷酷になっていく。
「もう死んでいますが、頑張ります」
「その調子です。新兵殿」
こういう場面で、とても優しい笑顔を見せたレイリーさんは、やっぱり末裔の事嫌いなんだなぁ……。
疲労は無いけど、色んな意味で本当に気が狂いそう。
「ま、やるしかないな。ひとまず飯のまえに手合わせだ」
少し諦めたようなキュスト隊長は、闘技場の中央へと歩いて行った。
本当に私に付きっ切りだし、キュスト隊長のためにも頑張るしか道はない。……ディプリミスをマスターしなきゃここからは出られないのだから。
「ナズナ様、いかがですか?」
「えぇ、もう大丈夫。ありがとうございます」
キュスト隊長を相手にしての長時間に及ぶ激しい打ち合いの後は、体のあちこちが痛むし、立ってるのがやっとだった。
それでも綺麗さっぱり痛みも疲労も消えてしまう。
「あの、治癒魔法ってどうやって傷を治したり疲労を消すんですか?」
「そういえば、ナズナ様は記憶を失っているんでしたね」
「あ、はい」
「では、少し説明しておかなくてはなりませんね。世間知らずの坊ちゃんを通り越してしまっては、ナズナ様の素性がバレてしまいますから」
そして、そのまま地下闘技場で、レイリーさんによる魔法の講義が始まった。
本当なら治癒魔法のことはアイリスに詳しく教えてもらう予定だったし、エリムレアが末裔かどうかを確かめるため、キージェに魔法を教えてもらうつもりだったのに。
「治癒魔法は、生命活動に直接働きかける魔法なのですが、生と死と維持、この3つの魔法があります」
どれもアイリスが見せてくれた魔法だ……。
「メーニスの古い言い伝えでは、氷で閉ざされたこの世界に落ちた星から、人を助ける力を得たと言われていますが、これは所謂おとぎ話ですね」
あれ? この話、どこかで聞いたような気がする。
「生も死も、そして維持も、一つの体の中で均衡を保っているんです。その均衡が崩れた時、私たち治癒士が元に戻すというのが正しいかもしれません」
「均衡を戻す……?」
「例えばナズナ様が大怪我をした場合、体の中の死が大きく膨らみます。そのまま大きくなり続けると、死に支配されて肉体は死滅します」
ふむふむ……。
「治癒魔法は一時的に生を大きくすることで、死を元の大きさに戻し、しばらくの間は大きくした生の力でケガの直りを早くするという感じですね」
……なるほど。なんとなくイメージは分かったかも。
「死を大きくする魔法は禁忌扱いですが、使える者は滅多にいません」
これは多分、アイリスが水を浄化する時に使っていた魔法のことだ。
「なので、メーニスは治癒に特化した一族といえます」
治癒魔法はメーニスの血を引く者にしか使えないというし、アイリスの家族も、もしかしたら治癒士として戦場にいるかもしれない。
「私たちは己の生命力を使って治癒魔法を使うので、使い過ぎは禁物ですが」
「え、それじゃレイリーが疲れちゃうじゃないですか」
「このくらい、使い過ぎにすらなりません」
レイリーさんが、自身の胸に手をあてニッコリ笑う。
「こう見えて、メーニスは人を助ける力には溢れておりますので」
そういえば、アイリスも体はとても華奢なのに、いつも元気いっぱいだし、私を助けるために必死で治癒魔法を使ってくれた後もケロッとしていた。
「魔導士の使う魔法は、私は使うことができませんので、概要をお話しするだけになりますけれど、それでもかまいませんか?」
「はい、お願いします!」
「魔導士たちは、主にステイラの力を用いてるそうです」
「あの……ステイラってそもそも何ですか? 星の光が届かないところでは使えない魔法があると聞いたんですが」
レイリーさんが肩を竦める
「本当に、色々なことを忘れてしまったんですね」
「え、えぇ……」
キージェから少しだけ説明はされたけれど、肝心なことは分かっていない。
「この機会に、色々教えてください」
今後……またキージェ達と一緒に行動できるようになったら、彼らを助けて援護したいから。
レイリーさんは静かに頷いた。
「ステイラは、人々の想いを利用して生み出す魔導士の力です」
「人々の想い?」
「我々の想いや記憶は、死んだ後に肉体から離れて星となって空を漂います。魔導士は過去の人間の想いを利用しているんです」
「じゃあ、空にあるあの眩しい星々は、すべて死んだ人間の……?」
「そういうことになります」
これが本当の話なら、文字通り星の数ほどの死者の想いが漂っているってことに……
「魔導士は、想いに共感をすることでステイラという己の力に変換します。ですから戦場に出てくるような魔導士たちは、多くの歴史や事件の記録、物語など、色々な書物を読み勉強するんですよ」
だから、キージェはあれほどの本を読んでいたんだ。
「あの青い幻炎の魔法って、具体的にどんな魔法なんですか?」
「幻炎魔法は、色に関わらず業火で死んだ人の想いからその当時の事象を再現している、ということです」
「その業火というのは……?」
「古ヨーンが滅んだ天変地異です」
「え?」
「しかし我々は、その当時の事は何も分かりません。たいていの教科書は、想像を駆使するよう指導しています。それをいかに想像し炎を創造するかが、戦場における魔導士の本領と言えますね」
「俺が小さな火しか出せないのは、俺には炎に対する想像力がないからってことだな」
「キュスト様は剣士ですから、それでいいのです」
クスっとレイリーさんが笑った。
魔導士の魔法は、星の光だけじゃなく、その事象を知らないと使えないんだ……。
「ナズナ様は、魔法に憧れでもあるのですか?」
「憧れというか……仕組みが分からなかったので」
異世界に来たのに魔法が使えない体、というのは少しだけ残念ではあるのだけれど。
「古ヨーンの末裔は、魔法は使えませんからね。……ですが、似たような力は持っていると思います」
「え……、どんな力ですか?」
「これは、想像の域ですが、恐らく祈りの力を剣に乗せているのではないかと思います」
「祈りを剣に?」
「彼らはカルツを信仰していて、カルツのために戦う民です」
「カルツのため……」
「生命の均衡を動かすメーニス、想いに共感してステイラから事象を創造する魔導士、神を信じる末裔。我々は元は同じ人間です。末裔だけが魔法を操る力がないはずがありません」
「なるほど……」
魔法の事についてはなんとなくだけど、理解できたような気がする。
だけど、肝心の末裔の力……。うーん……
「治癒魔法はメーニスにしか使えないように、ディプリミスは末裔にしか使えん。信仰の力じゃないかと一部では言われているようだ」
キュスト隊長もそうは言うけど、一体この体にどんな力が宿っているのだろう……。
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魔法について、昔から「どういう原理なんだろう」と思うことは多々ありました。
私のファンタジーなので、私が考えた魔法を構築していますが、「幻想の錬金術師」のほうでも少し触れているので、先にそちらをお読みくださっている方は「繋がっているってこういうことか!」と納得して頂けたかも?




