無茶苦茶
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ようやく、キュスト隊長が私の拘束を解いてくれた。
「……ありがとうございます」
「いや、すまん」
ピルーコ指揮官が席を立ち、私の前までやってきた。
「エリムレア、君の死の筋書きはこうだ。まず、君は先日の遠征でガイダを手引きして、遺跡で特命のパーティを襲わせた。そしてあたかも自分も襲われたと見せるため、死にかけた」
「え、もしかして私が仕組んだことにするってことですか?」
「その通りだ」
いくらなんでも無茶苦茶過ぎる!
「キージェにはガイダとのやり取りを見せ、ヨーンと末裔の関係を考えさせる一場面を作る。そして君たちは皆で政府に働きかけた、という流れだ。ここまで良いか?」
「あの報告書も利用するんですか……。というか、もう報告書が上層部まで行ってたんですね」
「特命は政府も大いに絡んでいる依頼だから当然だ。それに、君自身が政府宛てに熱心な報告書を書いたんだろう?」
確かにそうなんだけれど……まさかこんな方向に転がるなんて……。
なんだか嫌な予感しかしない。
「そして、その熱心過ぎる報告書から、ガイダを手引きした謀反の容疑が浮上し――」
「私が、古ヨーンの末裔だったから、処刑ってことですか」
「ほぼ正解だ。察しがいいな」
「確かに、ガイダはどこから侵入してどこから脱出したのかが分からないんです。だから、誰かが手引きしたと考えるのが一番自然ですけど」
「そう、だからこそ君に一度死んでもらうんだ」
「だから、どうしてですか?」
なぜ死ななきゃならないの……。
「お前を狙っている者が手引きした可能性があるからだ」
キュスト隊長が、信じられないことを言う。
「でも……キージェにも同じようなことを言われましたけど、私は特に今まで何も」
「何等かの理由があって狙われていたが、君は記憶を失っている」
あ、そういうことか。
「お前が記憶を失う前、既に何かに巻き込まれていた可能性が高い」
「だから、ガイダが潜入していたのも、ただの偶然ではないと考えている」
「……結局、まだ狙われていることに変わりはない、と」
「その通りだ。そこで、お前をそのまま自警団や正規軍に参加させるより、別人に成りすましてもらった方が、その分けの解らぬ危険を免れることができるという考えだ」
今だって成りすましているようなものなのに、なんだかややこしいことになりそう。
「肩書きは、ピルーコ指揮官の甥で、新任の正規軍の兵士。名前はそうだな……」
「ナズナ……。ナズナでお願いします」
慣れない名前で呼ばれても反応できないと思うし……。
「わかった。では、この後はナズナと呼ぼう」
「この計画については、ほんの一握りの者しか事情を知らせていない。言動には気を付けるように」
訓練施設にピルーコ指揮官が直々に来たのも、人払いしたのも、一番の理由はこれだったのか……。
「しばらくの間、我慢してくれ。頼む」
我慢って……そう簡単にいうけど。私の生活はどうなるの?
いつ家に帰れるの……?
「あの……私の家、どうなりますか? 革工房のルートンさんにお借りしているんですが」
「作戦終了までの間、表向きは謀反人の住居として、政府が調査のために一時的に差し押さえる」
謀反人か……ルートンさんたちにすごい迷惑をかけてしまいそう。
「荷物を……机の上に置いてあるもの一式と毛皮を数枚持ち出したいのですが。必要なものなんです」
「分かった。すぐに担当部署とともに証拠品として回収してこよう」
キュスト隊長は、そう言い残して部屋を出て行った。




