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死にかけ女と猫のぬいぐるみ  作者: 明星 志
第3章 カルツの神殿
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おいしい薬

※エブリスタ・カクヨムにも投稿しています

 昇り始めた太陽が、室内を赤く染める。


「そうだ……これアイリスが作ってくれた薬」


 ()()()()に入った緑色の液体……。


 わぁ……あれも不味いのかな。


「自分で飲めるか? 無理そうなら、また俺が飲ませてやるけど」


 ……少し体を起こすのも億劫だし……


「じゃあ、お願い」


 子供の頃、高熱を出した時にお母さんが差し出した()()()()でリンゴジュースを飲ませてくれたことを思い出した。


「任せろ」


 オカンタイプのイケメンはそう言うと、自分で薬を飲もうとしている。


「まって、何でキージェが飲むの?」

「え? あぁ、これを俺が口でお前に」


 ……え? 口移しってこと? 


「な、な、な、なん、なんてこと……!」


 しかも「また俺が」って言ったよね……


「何って……意識が無かったんだから普通だろ」


 だめ、ダメ。ダメダメ色々ダメ。


「あ、あのね。多分だけど、器官とか肺に入ると危ないから、そ、そういうの良くないから」

「正規軍からしっかり講義を受けてるし、その辺は大丈夫だ。ちゃんと飲んでたぞ」


 えぇー……大丈夫じゃないよ、なにそのニッコリ顔。


「あああの、たぶんもう自力で飲めるから大丈夫。気持ちは……ありがとう」


 体を起こして()()()()を受け取って飲むと、少し甘酸っぱい優しい味がした。


「美味しい……。これ、サクト?」

「あぁ。アイリスがサクトの実と薬を合わせて作ってくれた」

「そっか……ちょっと気の抜けたオロナミンCみたい」

「オロナ……?」

「……夢で見た、元気が出る飲み物だよ」

「そっか。じゃあ、もう少し夢を見るといい。……ゆっくり休め」

「うん……」


 まだ顔が熱い。


 太陽のお陰で赤くなった顔を悟られずに済んだけど、本当にこの世界はやっぱり野蛮だ!




 ひと眠りした後で、アイリスとグランが帰ってくると、部屋は賑やかになった。


 私も、体を起こしてベッドに腰かけて話をできるほどになった。


「エリ、だいぶ良くなったね」

「あー、前に腹を切られた時は、目が覚めるまで3日かかったもんな」

「今って何日目?」

「まだ2日しか経ってないよ。無理はしないで」

「……前回は俺達も酷い無茶をさせちゃったよな」

「あの時は、すぐに記憶が戻ると思ってたから……。ごめんね」

「記憶……」


 皆は、やっぱり元のエリムレアの方が良い……よね。


「エリ、記憶は戻らなくても大丈夫だ」

「え?」


 あぁ、すごい気を遣わせちゃってるな……。


「エリはきっと末裔だということを隠したくて、無口だったのかなって思うんだ」


 あ……そうだ、あの時ガイダが言ってた。


「俺達にはもうバレちゃったわけだし」

「そう、誰にも言わないから」

「ちゃんと話して、伝えて、笑ってくれるならそれに越したことは無いよ」

「そうだな。カルツの糞尿の時にも言った通りだ」

「誰かを笑顔にしたいというなら、まずはエリに笑っててほしい」

「さすがエリートキージェ、良いこという!」

「アイリスは黙ってろ!」


 そうだね、私はエリムレアになる必要はない。


 ……体は借りたままになるけど、私は私だ。




「アイリスは、シャルに続いてエリに治癒魔法を湯水のように使ってるし、お前も落ちないようにもう寝ろ」


 いわゆるMP切れを起こさないように、ということかな。


「そうだね。また後でね!」

「アイリス、今回もありがとう」

「ううん。エリの方は、今はキージェが何でもしてくれるっていうから、どんどん(あご)で使っていいよ!」

「何でも……って……」

「あぁ。任せろ」

「エリ、なんで赤くなってんだ?」


 茶化さないで、グラン。余計に恥ずかしいから!


「キージェがエリを背負って出てきた時は本当に驚いたが……」

「え、キージェが一人で?」

「あぁ。呼びに行ってる間にエリが死んじまったら嫌だからな」


 背は()よりも高いけど、細身のキージェに無理させてしまったかな。


「ま、お大事にな。エリ」

「ありがとう、グラン」



 グランとアイリスが出て行ったあと、キージェは部屋に残って、あの神殿での出来事を話してくれた。


「シャルの部隊は、俺達が到着する数日前に、興味本位でカルツの目撃地点に行ってガイダに襲われたそうだ。他の2人は魔導士だったんで、それぞれが影魔法を使い、別の通路で生き延びていたよ」

「そっか……怖かったろうね」

「まさか、あのガイダが潜伏しているとは思わなかったな……」


 そのガイダは、どこから侵入してどこから脱出したのだろう……?


「西ルートを進んでいたアイカ達は、俺達が東へ進んでいる間に襲われて、囮になったアイカが死んだそうだ」

「……やっぱり危険と隣り合わせの仕事だね」

「ガイダはさすがに想定外過ぎだったな。……でも、探索そのものは楽しいだろ?」

「うん……」


 それは、否定できない。素敵な景色と皆との楽しい奇跡の瞬間が、私の心を掴んで離さない。

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(この展開すごい悩んだんですよ)

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