おいしい薬
※エブリスタ・カクヨムにも投稿しています
昇り始めた太陽が、室内を赤く染める。
「そうだ……これアイリスが作ってくれた薬」
吸い飲みに入った緑色の液体……。
わぁ……あれも不味いのかな。
「自分で飲めるか? 無理そうなら、また俺が飲ませてやるけど」
……少し体を起こすのも億劫だし……
「じゃあ、お願い」
子供の頃、高熱を出した時にお母さんが差し出した吸い飲みでリンゴジュースを飲ませてくれたことを思い出した。
「任せろ」
オカンタイプのイケメンはそう言うと、自分で薬を飲もうとしている。
「まって、何でキージェが飲むの?」
「え? あぁ、これを俺が口でお前に」
……え? 口移しってこと?
「な、な、な、なん、なんてこと……!」
しかも「また俺が」って言ったよね……
「何って……意識が無かったんだから普通だろ」
だめ、ダメ。ダメダメ色々ダメ。
「あ、あのね。多分だけど、器官とか肺に入ると危ないから、そ、そういうの良くないから」
「正規軍からしっかり講義を受けてるし、その辺は大丈夫だ。ちゃんと飲んでたぞ」
えぇー……大丈夫じゃないよ、なにそのニッコリ顔。
「あああの、たぶんもう自力で飲めるから大丈夫。気持ちは……ありがとう」
体を起こして吸い飲みを受け取って飲むと、少し甘酸っぱい優しい味がした。
「美味しい……。これ、サクト?」
「あぁ。アイリスがサクトの実と薬を合わせて作ってくれた」
「そっか……ちょっと気の抜けたオロナミンCみたい」
「オロナ……?」
「……夢で見た、元気が出る飲み物だよ」
「そっか。じゃあ、もう少し夢を見るといい。……ゆっくり休め」
「うん……」
まだ顔が熱い。
太陽のお陰で赤くなった顔を悟られずに済んだけど、本当にこの世界はやっぱり野蛮だ!
ひと眠りした後で、アイリスとグランが帰ってくると、部屋は賑やかになった。
私も、体を起こしてベッドに腰かけて話をできるほどになった。
「エリ、だいぶ良くなったね」
「あー、前に腹を切られた時は、目が覚めるまで3日かかったもんな」
「今って何日目?」
「まだ2日しか経ってないよ。無理はしないで」
「……前回は俺達も酷い無茶をさせちゃったよな」
「あの時は、すぐに記憶が戻ると思ってたから……。ごめんね」
「記憶……」
皆は、やっぱり元のエリムレアの方が良い……よね。
「エリ、記憶は戻らなくても大丈夫だ」
「え?」
あぁ、すごい気を遣わせちゃってるな……。
「エリはきっと末裔だということを隠したくて、無口だったのかなって思うんだ」
あ……そうだ、あの時ガイダが言ってた。
「俺達にはもうバレちゃったわけだし」
「そう、誰にも言わないから」
「ちゃんと話して、伝えて、笑ってくれるならそれに越したことは無いよ」
「そうだな。カルツの糞尿の時にも言った通りだ」
「誰かを笑顔にしたいというなら、まずはエリに笑っててほしい」
「さすがエリートキージェ、良いこという!」
「アイリスは黙ってろ!」
そうだね、私はエリムレアになる必要はない。
……体は借りたままになるけど、私は私だ。
「アイリスは、シャルに続いてエリに治癒魔法を湯水のように使ってるし、お前も落ちないようにもう寝ろ」
いわゆるMP切れを起こさないように、ということかな。
「そうだね。また後でね!」
「アイリス、今回もありがとう」
「ううん。エリの方は、今はキージェが何でもしてくれるっていうから、どんどん顎で使っていいよ!」
「何でも……って……」
「あぁ。任せろ」
「エリ、なんで赤くなってんだ?」
茶化さないで、グラン。余計に恥ずかしいから!
「キージェがエリを背負って出てきた時は本当に驚いたが……」
「え、キージェが一人で?」
「あぁ。呼びに行ってる間にエリが死んじまったら嫌だからな」
背は私よりも高いけど、細身のキージェに無理させてしまったかな。
「ま、お大事にな。エリ」
「ありがとう、グラン」
グランとアイリスが出て行ったあと、キージェは部屋に残って、あの神殿での出来事を話してくれた。
「シャルの部隊は、俺達が到着する数日前に、興味本位でカルツの目撃地点に行ってガイダに襲われたそうだ。他の2人は魔導士だったんで、それぞれが影魔法を使い、別の通路で生き延びていたよ」
「そっか……怖かったろうね」
「まさか、あのガイダが潜伏しているとは思わなかったな……」
そのガイダは、どこから侵入してどこから脱出したのだろう……?
「西ルートを進んでいたアイカ達は、俺達が東へ進んでいる間に襲われて、囮になったアイカが死んだそうだ」
「……やっぱり危険と隣り合わせの仕事だね」
「ガイダはさすがに想定外過ぎだったな。……でも、探索そのものは楽しいだろ?」
「うん……」
それは、否定できない。素敵な景色と皆との楽しい奇跡の瞬間が、私の心を掴んで離さない。
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(この展開すごい悩んだんですよ)




