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死にかけ女と猫のぬいぐるみ  作者: 明星 志
第3章 カルツの神殿
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奇跡の瞬間

※エブリスタ・カクヨムにも投稿しています

 長い階段……。念には念を、と忍び足で階段を下りていく。


 まだところどころ光源結晶が突き出ていて、それなりに明るい。


「おかしいな、地図だとこの辺りはもうランタンが必要なはずなんだが……」

「確かに、5年前の地図には〝階段を20段ほど降りると暗闇だ〟と書いてあるな」


 来た道を振り返ると、もう20段以上は降りていた。


「光源結晶がまだ生えてるんだね」


 まだ先の方にも、ところどころに光源結晶が突き出ているのが見える。


「メモしておくね」


 そのまま階段を降りきり、もう地下3階だ。


 地下2階よりは暗いけど完全な暗闇ではなかった。足元にはまだ小さな光源結晶が突き出ていて、白い光を放っている。


「もう一度ここらの光源結晶を見てみよう」


 グランが足元の結晶を拾い、ルーペで観察をする。


 地下1階では明るすぎて分からなかったけど、足元の結晶は少し青みがかった光を放っていた。


「1階にあったのと同じもの、だとは思う」

「そうか」


 ……1階にあったものと同じと思われる、とメモ。


 なんだっけ……鉱脈? とかそういう感じで同じ場所に同じものが出来るのかな。


「ねぇ、グラン。カルツの()()も結晶でしょ? そもそもこの結晶ってどうやってできるの?」

「……太古の昔の天変地異によるもの、ということしか公表されてないんだ」

「それって、結晶学者もまだ解明できてないのか?」

「分からん。でも頻繁に調査用に各地の結晶採取の依頼がでてるんだ。さらなる手がかりが欲しいのが現状だよ」

「そういや、先日の骨青結晶も調査用だったな」

「その天変地異って何だったんだろう……」

「古ヨーンの都市もその時に滅んだって言われてるが……何が起きたんだろうな」

「西方の方にも、ヨーンほどじゃないけど遺跡があるんだ。もしかして同じ原因だったりして」


 地球の恐竜が絶滅したのは、隕石が衝突したから。


 イタリアのポンペイの町は、火山の噴火の火砕流で埋まってしまったから。


 古ヨーンも、何らかの天変地異に見舞われて滅んでしまった……


「この神殿は、地下に作ってあったからこれだけ綺麗なのかもしれないね」

「確かに、他の禁足地の遺跡は大体が地下に埋まってるもんな」

「何のために作ったのかが分かれば、色んなことが解明できるかもしれないね!」

「安全確認さえできれば、学者を含む調査隊も入れるし、楽しみだな」


 ……遺跡探索ってすごい楽しい。


 前にアイリスが言っていた通り、ヨーンは神秘の宝庫。まだ解明されていない謎がたくさんあるなんて、ロマンだなあ。




 バキッ!


「なんだ?」

「……何の音だ」


 バキッ!


「また……」


 音は反響して発生場所が分からない。


「ねぇ、あそこ見て」


 アイリスが示したのは、階段を下りて正面の壁。そこに円形にヒビが走っている。


「なんだ……?」

「俺が行こう」


 探索用だという小型の盾を構えてグランが忍び足で近寄る。


 好奇心に勝てない私たちも、少し距離を置きつつ後に続いた。


 バキバキッ!


「……ここが音の発生源だな」


 ヒビは微かに音をたて、壁は細かく砕けていく。


 バキバキッ!


 少し大きな音を響かせてポロポロと壁が剥がれ落ちると、光っている何かが出てきた。


「なんだぁ?」

「キージェ、下がれ!」


 壁に近寄ろうとするキージェをグランが右手で制し、盾を構え直して後ずさる。


 バキッ! バキバキッ!


 その瞬間、さらに大きな音を立て、壁の内部から結晶が突き出してきた。


「うわっ」


 しばらく動きを止め、耳を澄ます。




「……音が止まった……?」

「みたいだな……」


 みんな一斉に「ふう」と息を漏らす。


「グラン、助かった。あのまま近寄ってたら顔にあれが刺さるところだった」


 キージェが額の汗を袖で拭う。


 壁に突き出た結晶は30センチほどはあるかも。


「無事でよかったね」

「……なあ、俺達、今……すごいものを目撃したんじゃないか?」

「え?」

「すごいものなの?」

「あぁ! もちろんだ!」


 グランがガッツポーズ。


「結晶が生えてくる瞬間だ! 今までそれを見たという話しを、俺は知らない!」

「そっか! じゃあこれは」

「結晶学者にとっては朗報だ!」


 えーと……結晶が突き出た瞬間は一瞬明るく光った、とメモ。


「おっと……ちょっと騒ぎすぎたな」

「あ、そういえば……」

「念のため、影魔法をかけ直そう」


 私たちはもう一度円陣を組む。

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