奇跡の瞬間
※エブリスタ・カクヨムにも投稿しています
長い階段……。念には念を、と忍び足で階段を下りていく。
まだところどころ光源結晶が突き出ていて、それなりに明るい。
「おかしいな、地図だとこの辺りはもうランタンが必要なはずなんだが……」
「確かに、5年前の地図には〝階段を20段ほど降りると暗闇だ〟と書いてあるな」
来た道を振り返ると、もう20段以上は降りていた。
「光源結晶がまだ生えてるんだね」
まだ先の方にも、ところどころに光源結晶が突き出ているのが見える。
「メモしておくね」
そのまま階段を降りきり、もう地下3階だ。
地下2階よりは暗いけど完全な暗闇ではなかった。足元にはまだ小さな光源結晶が突き出ていて、白い光を放っている。
「もう一度ここらの光源結晶を見てみよう」
グランが足元の結晶を拾い、ルーペで観察をする。
地下1階では明るすぎて分からなかったけど、足元の結晶は少し青みがかった光を放っていた。
「1階にあったのと同じもの、だとは思う」
「そうか」
……1階にあったものと同じと思われる、とメモ。
なんだっけ……鉱脈? とかそういう感じで同じ場所に同じものが出来るのかな。
「ねぇ、グラン。カルツのアレも結晶でしょ? そもそもこの結晶ってどうやってできるの?」
「……太古の昔の天変地異によるもの、ということしか公表されてないんだ」
「それって、結晶学者もまだ解明できてないのか?」
「分からん。でも頻繁に調査用に各地の結晶採取の依頼がでてるんだ。さらなる手がかりが欲しいのが現状だよ」
「そういや、先日の骨青結晶も調査用だったな」
「その天変地異って何だったんだろう……」
「古ヨーンの都市もその時に滅んだって言われてるが……何が起きたんだろうな」
「西方の方にも、ヨーンほどじゃないけど遺跡があるんだ。もしかして同じ原因だったりして」
地球の恐竜が絶滅したのは、隕石が衝突したから。
イタリアのポンペイの町は、火山の噴火の火砕流で埋まってしまったから。
古ヨーンも、何らかの天変地異に見舞われて滅んでしまった……
「この神殿は、地下に作ってあったからこれだけ綺麗なのかもしれないね」
「確かに、他の禁足地の遺跡は大体が地下に埋まってるもんな」
「何のために作ったのかが分かれば、色んなことが解明できるかもしれないね!」
「安全確認さえできれば、学者を含む調査隊も入れるし、楽しみだな」
……遺跡探索ってすごい楽しい。
前にアイリスが言っていた通り、ヨーンは神秘の宝庫。まだ解明されていない謎がたくさんあるなんて、ロマンだなあ。
バキッ!
「なんだ?」
「……何の音だ」
バキッ!
「また……」
音は反響して発生場所が分からない。
「ねぇ、あそこ見て」
アイリスが示したのは、階段を下りて正面の壁。そこに円形にヒビが走っている。
「なんだ……?」
「俺が行こう」
探索用だという小型の盾を構えてグランが忍び足で近寄る。
好奇心に勝てない私たちも、少し距離を置きつつ後に続いた。
バキバキッ!
「……ここが音の発生源だな」
ヒビは微かに音をたて、壁は細かく砕けていく。
バキバキッ!
少し大きな音を響かせてポロポロと壁が剥がれ落ちると、光っている何かが出てきた。
「なんだぁ?」
「キージェ、下がれ!」
壁に近寄ろうとするキージェをグランが右手で制し、盾を構え直して後ずさる。
バキッ! バキバキッ!
その瞬間、さらに大きな音を立て、壁の内部から結晶が突き出してきた。
「うわっ」
しばらく動きを止め、耳を澄ます。
「……音が止まった……?」
「みたいだな……」
みんな一斉に「ふう」と息を漏らす。
「グラン、助かった。あのまま近寄ってたら顔にあれが刺さるところだった」
キージェが額の汗を袖で拭う。
壁に突き出た結晶は30センチほどはあるかも。
「無事でよかったね」
「……なあ、俺達、今……すごいものを目撃したんじゃないか?」
「え?」
「すごいものなの?」
「あぁ! もちろんだ!」
グランがガッツポーズ。
「結晶が生えてくる瞬間だ! 今までそれを見たという話しを、俺は知らない!」
「そっか! じゃあこれは」
「結晶学者にとっては朗報だ!」
えーと……結晶が突き出た瞬間は一瞬明るく光った、とメモ。
「おっと……ちょっと騒ぎすぎたな」
「あ、そういえば……」
「念のため、影魔法をかけ直そう」
私たちはもう一度円陣を組む。
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