休息と妄想と
※エブリスタ・カクヨムにも投稿しています
それぞれ自分のノイに寄りかかって一緒に寝ている。
私のノイも、私に付き合って横で寄り添ってくれている。こんなに人間と仲がいい生き物なんだね。
移動で疲れていたからか、みんなが完全に寝静まるまでは時間がかからなかった。私はみんなの寝息をBGMにノイをスケッチしている。
名前……つけてあげたいって思っていたけど、もしもそれがまた非常識な行為と思われたらいけないし、帰ってからキュスト隊長に色々なことを相談してからにしようかな。
ノイの鼻づらを撫でてあげると、大きな目を細めた。
「ありがとう、お前も早くおやすみ」
ラクダやアルパカみたいにまつ毛が長い。
はっ! ……まつ毛と言えば!
普段は銀縁のメガネをかけているキージェが、すぐ隣でメガネを外して眠っている。
まつ毛……本当に長くて綺麗だなあ。
いつもはきっちり整えている金髪も少しばらけているし、無防備な姿は普段とのギャップが激しい。……これはなかなか見れない光景です。
はっ! ……いけない。これでは変態だ。
思えば、私がこの世界に来て初めて目にしたのはキージェの姿だ。……正しくは目をこじ開けたられたからなんだけど。
つい目で追ってしまったりするのは、オカンタイプのイケメンだし、私は刷り込みされた雛鳥のようなもの……なんだと思う。
反対隣で寝ているアイリスは、部屋に居候させてもらっていたから、その寝顔が可愛いのは知っている。見てるとニコニコしちゃう。可愛いけどしっかり者だね。
グランの寝姿はかなり豪快。私やキージェのノイよりも大柄なノイがしっかり彼の体を受け止めている。
……最初の頃は私の代わりになるために仲間になったのかと思ったけど、そういう意味じゃ全然なくて、本当に協力し合える仲間として助けにきてくれた。
仲間として認めてくれたグータッチ、凄く嬉しかった。
『はぁ……よく考えたら、ここはエリムレアも含めてイケメンパラダイスだな……』
傍らの剣を鞘から引き抜き、顔を映してみる。
『はぁぁん……いい男』
ナズナとして、ここにいる4人を眺めていたかったなー。
……でも、非力なナズナはここに居場所はない。だから私は強くならなくちゃいけない。
強くなくちゃいけない。
さっき見ていた依頼書や地図はまだ広げられたままになっていて、私はそれを手元に引き寄せた。
『伝説上の生き物か……』
カルツは本当に猫によく似たシルエットだ。本物は、いったいどんな生き物なんだろう。
もし出会えたら、本物のカルツのぬいぐるみをデザインしたくなっちゃうかもしれないな。
デフォルメして、お洋服を着せたりアイテムを持たせたりするのもいいかな。
今はボタンで代用している目も、透明な半球状のガラスで作れたら良いんだけど。
でも、まずはスケッチさせてもらえるかが重要だよね。
会えたらいいなぁ。
可愛いといいなぁ。
ネコチャンを囮に使って、カルツに近寄れたりしないかな。触らせてくれるかなぁ。
ふわふわのキャンピィの毛皮は、何を作ろうかなぁ。
生きている状態のキャンピィはほんの少ししか見れなかったけど、あの体の構造とかもう少し観察してみたいな。帰り道にもう一度見れるかな。
ノイも、厩舎に帰ったら改めてじっくりスケッチさせてもらうんだ。
生地屋のおじさんが教えてくれたワドレンの原毛も手に入るといいな。
大きめのラニゴのぬいぐるみを作ってキージェに抱っこさせたいなぁ。
はー、可愛い動物のぬいぐるみ作りたいなぁ。
置いて来た動物の本、早く読みたい!
色んな妄想をしながら、ひたすらぬいぐるみのデザイン画を描いていた。
「何ニヤニヤしてんだ」
不意に聞こえた小さな声で、自分の置かれた現実に引き戻された。
「……カルツに会えたらいいなって、考えてた」
「そうか」
身を起こして、一度伸びをしてメガネをかけ、そしてアイリスがくれた薬を飲んで顔を顰める。
「うぇ……やっぱり不味いなぁ、これ」
キージェもそんな顔するんだね。
「おかげで全然眠くならなかったよ」
「よく効くんだよな、これ。……さ、エリも寝ろ」
「うん」
寝袋にすっぽり納まってノイに寄りかかり、その体温の恩恵に与る。
あったかいなぁ。
……目を閉じてみたけど、まだアイリスの薬の効き目が切れないのか、なかなか眠れない。
時折、紙を繰る音がサラリサラリと小屋に響く。
そっと目を開けると、キージェはもう本に没頭していた。……また魔法の本かな。
キージェはエリムレアの相棒だと話していた。そんな人が入れ替わりに気づかないわけがない。何か事情があると思って気づかないフリをしてくれているのかもしれない……
でも……自分から打ち明けるのは、どんなに勇気を振り絞っても絶対に無理だ。
哀しむ顔を見たくない。そして……怒らせてしまうかもしれない。それが怖くて言い出せない……。
私は、自分勝手な臆病者だ……
翌日の明け時、私たちは次の目的地、南ヨーン前哨基地へ向けて出発した。
「この調子なら正午には着くかな」
キージェが、革の手袋の甲に埋め込まれた小さな時計を見ながら言った。
冒険者たちは小さな時計を必ず所持している。
夜が長すぎるこの世界では、時計が無いとすぐに時間の感覚が分からなくなるのは、私だけじゃないのかもしれない。
アイリスは懐中時計を太めの革ひもでベルトに括り付けて、本体をポーチにしまってある。
エリムレアとグランの場合は、ベルトにつけている小型ポーチのフラップに縫い付けている。みんなそれぞれ使い勝手の良いようにアレンジしているんだね。
『……そういえば、エリムレアはスマホとかパソコンとか使えるようになったかなぁ』
日本の昼の長さや、日中の明るさにも慣れた頃かな……。
いつも読んでくださりありがとうございます!
最近読み始めてくださった方もありがとうございます!




