真っ暗闇
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第3章です!
「大葉さん、遅くまで残ってもらって悪いんだけど、この書類も頼んでいい?」
「えっと……?」
「郵送の手配! 頼む! 明日の朝イチの便に乗せたいから」
半分照明が落とされた暗い社内。目の前にはパソコンのモニタ。
あれ……、私……何か、長い夢を見ていたような……。
なんだっけ……
「大葉さん?」
「……分かりました、では帰りに投函しておきます」
「助かるー! 俺、明日の朝は直行するから先に帰るね!」
「……お疲れ様でした」
どんなに頑張ってプレゼン資料を作っても、手柄は全て営業の男性社員のもの。
毎日残業なのに、私の評価は上がらない。
新しい顧客が獲得できた時、ハイタッチや拳を合わせて喜び合う中に、私は入れてもらえなかった。
表舞台にはいないけど、成約に繋げる資料を作ったのは……私なのに。
送り状を作り、封筒に宛名を印刷して郵便物を作る。
……認められたい。
私も向こう側へ行きたい。
来週は、待ち望んだグループ展だ。
私のぬいぐるみの写真が拡散されていく……通知がたくさん届く。
それだけで元気が出る。
だから私は頑張れる。
私を認めてくれる人たちが、世界にこれだけいたのだから。
「もっと、頑張ろう」
私を認めてくれる世界へ行くために。
『eriさんの作品ってさ、どこかで見たことあるよね』
『わかる! どこかで見たよね』
やめて。あのぬいぐるみは、私が自分でデザインして作ったオリジナルだ。
『売れたいからって、やることが酷くない?』
ちがう。私は誰かの盗作なんてしていない!
『真似っこ作家が同じイベント出るんだけど、どうしよう』
……恭子さん、自分から誘っておいて何を言ってるの?
逃げ出したい。
でも、私はぬいぐるみが作りたい。
好きな事だから。私が私でいられる時間だから。
もっと強くならなきゃ。
……こんな中傷に負けたくないから。
真夜中、見上げた空は真っ暗で、濁っていく心をミネラルウォーターで薄めながら家に帰り、お風呂に入って裁縫道具を出す。
針を手に取ると、血まみれの……大きな手……
……え?
この血は何? これは……誰の手?
「そうだ……私、人を斬ってしまった……」
え? まって、何を言ってるんだろう、私……
「この血は……確か、この手で……」
おかしい……私、こんなこと望んでいなかったのに。どうして……
「ちがう! ……私の手は、ぬいぐるみを生み出すためにあるんだから!」
『この世界を捨てて、逃げて行ったのはお前だろう』
「誰……」
『……お前の覚悟はそれで終わりか?』
「え……?」
『……本当に望んでない未来だったか?』
「誰……?」
『……この世界を変えて欲しい』
「世界を……」
『この世界じゃお前にしかできないことだぜ?』
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