手がかり
※エブリスタ・カクヨムにも投稿しています
「警備兵に通報するのはダメなの?」
「……それも考えた。でも、もし警備兵がグルだったらもみ消されるかもしれない」
「そっか……。でも、店番って……さっきの商人が1人で来ているってことは?」
「荷台の横に、木箱が積み重ねて置いてあって通路を塞いでいたんだ。普通は出店の近くで荷を下ろしてからあの壁際へ駐車するし、色んなことが不自然過ぎる」
確かに……。お茶屋さんも店のブースの後ろに木箱を置いていた。各自のノイ車が乗り入れられるなら、できるだけ近いところで積み下ろしをするのが一番だ……
「1台のノイ車を使うような商人が、1人で来るのも不自然だしな」
「じゃあ、やっぱり2人以上で……」
「そう考えるのが妥当だと思うんだがな」
でも、大勢いる商人たちからどうやってあの荷車の主をみつければいいんだろう。それに、もしかしたら客に変装しているかもしれないし。
「絶対、どこか不自然な奴がいるはずだ。探そう」
「……分かった」
治癒士を攫う目的は、その不足を補うためだと考えれば、殺されることは無いはず。
……私がお茶を買いたいと言ったばかりに。アイリス、ごめん。絶対に助けるから待ってて。
「泣きそうな顔なんかするな。大丈夫だ」
「キージェ……」
そうだ、このイケメンにそんな顔は似合わない。もっとしっかりしなきゃ!
私たちは少しばらけつつ、そして距離を保ちつつ、あまり出店には近寄り過ぎないように、いかにも何か買うものを探す振りをして、あたりを見回しながら歩いた。
木箱をたくさん置いている店は規模が大きいし、きっと乗り合いじゃないくらいの在庫を持ち込んでいる……。さっきの生地屋さんや本屋さんとかがそうなんだけど、どこからどう見ても善良な人たちだった。
「おい、キージェ、エリ、あそこ」
グランが指した方向には、前に私が殴った小隊長モデトンがいた。黒服の商人の男とコソコソと話をしている。
私たちは積み重ねられた木箱の陰に身を隠し、様子をうかがう。
そこにもう一人、商人がやってきた。
「あの服……さっきの荷台にいたやつじゃないか……?」
赤い上着にチョビ髭の男は黒服の商人の横に並び、モデトンの向かいに立った。
「あれ? あいつ……変なチョビ髭なんかつけてるが、あいつは俺が前にいた小隊のサーギルだな」
「え? 今来た男が?」
「あぁ……」
「まさか、モデトンと共謀して……」
「恐らく」
一旦、このままモデトンとサーギルの動きを見張ることにした。
「アイリスはな、行商人に自分の家族の手がかりを尋ねていたんだ」
「あの、生き別れたっていう?」
「あぁ。だから必ず市場には顔を出していた。買い物の内容からアイリスが治癒士だということは行商人の間にも知れていたんだろう」
「で、噂を聞きつけて行商人のフリをして、誘拐しに来たってことか」
「もしかしたら、モデトンが手引きした可能性もあるが……」
二人の推理は、きっとどちらも正しい。
「サーギルが、アイリスに『君の家族を知ってるという者がいる』って言い寄って、人買いに斡旋でもしたんだろう」
「じゃあ、黒服の男が……?」
「たぶんな」
モデトンはこちらに背を向けて話をしているけど……こちらから見える黒服の商人とサーギルの顔は歪んでいて、いやらしい笑いを浮かべている。
ワハハハと、モデトンがふんぞり返って笑った後、3人は歩き出した。
「どこか行くみたいだぞ」
「……ついて行こう」
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