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死にかけ女と猫のぬいぐるみ  作者: 明星 志
第2章 陰謀の足音
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新しい家

連載再開です! 第二章として公開していきます!


第25部分の終盤を削り、続きを開始できるようにしました。

 革工房のルートンさんの家は、職人街の中央通りから一つ入った通りで、ちょうど中央通りの工房のすぐ裏手にある。工房の裏口から出るとすぐ目の前だった。


 敷地の中に(はな)れがあり、以前はそちらにルートンさんとマヨーさん夫妻が住んでいた。


 当時の店主だったお父さんが亡くなった後、母屋にルートンさんたちが引っ越したので、離れはしばらく空き家になり、そこに私がお世話になる。




 この離れの建物は、ルートンさんのひいおじいさんが立てた最初の革工房で――


『やだぁ……すごいいい男……』


 運び込もうとしていた荷物を落として、その姿に見入った。


 革の鎧や手甲、靴など身に着けるものを多く作っている工房とあって、壁に姿見……大きな鏡があった!


 探索用の地味な服(ふだんぎ)を着ているのがもったいないくらい。漫画やアニメとかゲームの主人公みたいに鮮やかでスタイリッシュな装備とかあったらいいのに!


『あぁん……スーツやカジュアルな服装とかも見てみたい……!』


 (ナズナ)は本当に平凡な容姿だったので、鏡を見るのは化粧や髪をいじったり、身だしなみをチェックするくらいだったから、こんなにじっくり鏡の前に立つことなんてなくて。

 ビジュアル系のジャケ写のようなポーズや、アイドルグループのセンター張りの決めポーズなど、地味な服装なのに何をやってもどんな表情でも決まる。これがイケメン効果……やばい。


 はぁぁ……


「エリ……何をやってんだ?」


 剣を抜いて決めポーズをしているところに背後からルートンさんの声。


「えっ、これはその、えっと……た、正しい戦闘のためには型も大事だと思うのです!」

「それを今……?」

「ちょ、ちょっと急に思いついちゃったので……」


 冷静を装いつつ、私は剣を鞘に納めた。


「はぁ……俺は職人だからその辺のことはからっきしだが、頼りにしてるぞ」

「はいっ!」

「メシが出来た。今日はお前さんの歓迎会だ」




 引っ越しは本当にすぐ終わり、好きに使って良いとは言われているけど一応家賃は幾分か支払うことで話が落ち着いた。


 私が寄宿舎のエリムレアの部屋で過ごした時間はとても短く、その後はアイリスの部屋にお世話になり、この世界に来て3つめの住居。


 エリムレアの衣類や装備品、探索に必要な持ち物と、あとは私のぬいぐるみの資材を入れた木箱をそれぞれの場所へ納めて引っ越し完了!


 こうして、私はナズナ時代よりも広い家に住むことになった。


 久しぶりに一人で家のお風呂に入ろうと思ったら……なんと家にお風呂は無く、庭にある水浴び場の中で温水を浴びて体を洗うだけ……。ぐぬぬ……。




 探索に行かない日は、革工房を手伝いながら色々勉強させてもらい、食事は奥さんであるマヨーさんの手料理を一緒に食べている。


 ルートンさんは夫婦二人暮らしで、お子さんは()()居ない。


 革工房を継がずに冒険者になった娘さんは、不幸にも禁足地で帰らぬ人になったのだそう。

 会話の距離感を見誤ったのは完全に私の落ち度だった。


 ……エリムレアが無口だったのは、もしかしてそういう哀しいことに触れてしまうことを避けるためだったのだろうか。


 初めて鏡でエリムレアを見た時は、あまりのカッコよさにテンションが上がってしまったけど、あの前を通るたびに鏡の中のエリムレアに何があったのかを尋ねてしまう。

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