46話
その日の夜も熱気を冷ますため外へ。
“ リィィィーン・・・ ”
「?」
“ リィィィーン・・・ ”
「(何だろう?この音?)」
見張りの人を見るが特に気にした様子は無い。耳を澄まして聴くと、何だか気になる声に聴こえてくる。
「(音じゃなくて声・・?)」
思考したエナトは翻訳機を取り出して身に付けてみる。すると・・。
“ ・・・来るよ・・・ ・・・来るよ・・・ ”
「!?・・・」
“ ・・・来るよ・・・ ・・・水が・・・ ”
“ ・・・来るよ・・・ ・・・風が・・・ ”
“ ・・・来るよ・・・ ・・・光が・・・ ”
「??ーーー」
まるで謎かけだ。何が言いたいのだろうか?と首を傾げて考える。何か教えてくれてるようなのは分かるので、他の者に聞いてみることにした。そうすると。
(それは人魚の唄ではないですか?)
「(人魚の唄?)」
(はい。漁師達や航海士達の間では大昔からそう言う言い伝えがあるそうです。)
(あぁー。なんか聴いた事がありますよ? 唄に耳を貸すと海の波に攫われる、とか?)
(それもありますし、人魚の唄が聴こえたら大波が来るとか、嵐になるとかですね。)
「( 大波・・・ 嵐・・・。ーーー それだ!)」
(それって・・え? ホントに人魚の唄を?)
「( 水・風・光。 つまり 大波・強風・雷。 嵐が来るって言いたかったんだっ。)」
(えぇ~? いやいや、めっちゃ天気良いですよ?)
クレイは小窓から確認しているらしい。
「(昨夜も聴こえた気がするから、直ぐではないのかもね。)」
(船員の方に伝えてみますか?)
「(うーん、そうだね。念の為に伝えておくよ。)」
エナトは見張りをしている一人に声をかけてそれを伝えた。船員は半信半疑で首を捻っている。
そこに大柄の船員が割り入って来た。
「その話もっと詳しく聞かせてくれねぇか?お客人。」
「! せっ、船長っ?」
なんと船長だった。
「すまんな。こいつはまだ新人で知らないもんだからよ。」
「船長、信じるんですか?」
「信じるも何も、現に聴こえてるだろうが。他の奴らからも報告が来てるからわしも出て来たんだよ。」
「えぇ~?」
新人の船員は本当に?と目をパチパチさせている。
「こう言うのは経験で積め。 で? お客人は船旅は初めてみたいだったが、何で嵐が来ると分かった?」
「? よく初めてだと分かりましたね?」
「そりゃあ あんだけ目をキラキラさせて海を見てたら分かるってもんだ。ははは!」
「あぁー。」
子供みたいなところを見られていたようだ。ちょっと恥ずかしい。
「それで?」
「あー、その・・。 昨夜も実はチラッと聴いたのですが、その時はそんなに気にしてなくて。仲間に聞いてみたら、それは人魚の唄かもしれないと。言い伝えも聞いて知りました。それで今晩も聴こえてきたので、よく聴いているうちに、これは音じゃなくて声なのではないかと思ったんです。何かを伝えているもののように感じました。」
「ふむ。ーーー。まぁ そう言う事にしておこう。 恐らく明日明後日頃に天候が崩れ始めるだろうな。荒れてる間は外に出ないようにしてくれ。」
「・・はい。」
「え?船長、本当に来るんですか?」
「あぁ。わしにもそう聴こえてるからな?」
と最後は意味ありげにエナトを見た。
見張りの新人に、ちゃんと見ておけよ、と船長は言って立ち去った。エナトも船内に戻る。
「ただいま。」
「お帰りなさい。どうでした?」
「うん、伝えてきたよ。」
「反応はどうでした?信じてくれました?」
「うん。ここの船長さんは心得ているみたい。ちゃんと聴こえてるって。大丈夫だと思うよ。」
「そうですか。」
「ふーん。 って、船長に直接言いに行ったんですか?」
「行ったと言うか、デッキに出て来てた。始めは見張りの人に言ったんだけど、新人さんだったらしくてね。でも他の船員さんも経験者は気が付いてたみたい。」
「なら安心ですかね?」
船長は訳知り顔だったので、何か知っていて確信を持っているのだろう。




