45話
「おお、王都の学園を卒業してからずっとですか。」
「えぇ。」
「それはそれは。さぞ色んな所を巡って見て来られた事でしょうな?」
「はい、それなりにですが。」
「いやいや、謙遜されなくても分かりますよ。お連れの方々もそうですが、長年の風格が出ておりますからな。これで私も人を見る商いをしております。多少見る目は有ると自負しておりますとも。」
「そんな風に見えますか?だったら嬉しいのですが。まだまだ知らない事もあります。」
「えぇえぇ、人生とは一生学び続けるものです。私もこの歳ですら未熟を感じる事もありますからねぇ。」
エナトは知り合った内の一人と食事の席についてお喋りをしていた。相手は60を越えた商人だ。エナトよりも年季があって経験豊かだ。年に2回サタールとマリンを行き来して、商品を売買している。本店はマリンにあるそうなので今は行った帰りになる。
他の場所では。
「よし勝ったぞっ。」
「あーーっ。」
「またかよ~。」
「強ぇな兄ちゃんっ。」
「もうちょっとだったのになぁ~。残念だぜ・・。」
「もう一回!」
「嬢ちゃん、おいらに一杯注いでくんねぇか?」
「嬢ちゃんではない。」
「んあぁ?・・あー・・嬢ちゃんじゃないって・・・んー・・そんなキレェな顔してんのにぃ?」
「ーー」
「ん~~・・・ まぁいっかぁ。 どっちでもいいからお酌してくれよ。」
「おしゃくとは?」
「んん? だからぁ、お酒注いで欲しいんだよ~。」
「成程。ではそのお酌だけなら許可しよう。」
「おお~。話が分かるね嬢ちゃんっ。」
「嬢ちゃんではない。」
「賊がですか?」
「そうなんだよ。一時期静かになったと思ったのに、また証拠にもなく出てきやがって。」
「でも噂だと脱獄犯じゃないかって話さー。」
「それでなくても早く捕まえて欲しいもんさねぇ。」
交流は仲良くなるにも情報を得るにも良い。
船は夜ごとに錨を下ろして停泊する。夜の海は暗くて静か。波の音も大きくなく船内までは聴こえない。星だけがキラキラと夜空を照らし美しいが、夜の海は少し怖い。
空気を吸いに外へ出たエナトは5分もすると中へと戻る。その時微かに聴こえた。
“ リィィィーン ” という音が。
「?ーーー」
その時は判らずに、気にしずに中へ入った。
翌日の昼間。船内が急に慌ただしくなってデッキに戦闘員達が集まる。
「オクトデビルだっ!」
「全員抜刀ーっ!!」
「一狩り行くぜぇーっ!」
「大物 大物♪」
「今晩は豪勢だなぁっ。」
何故か皆嬉しそう。現れたそれはウニョウニョとした動きを見せて船に絡みつく。太い触手には吸盤があり離さない。その手なのか足なのかを全員でぶった切っていく。
「ひゃっほぉーっ!」
「祭りだぜぇ~っ。」
狩って行く様は猟奇的。
「はぁいよっっとぉっ。」
「行くぞぉ~!」
「気を抜くなよー! そろそろ切り上げだー!」
「火と雷の術を放てーっ!!」
術で相手を攻撃して追い払う。
「スミ攻撃に気を付けろー!」
「足滑らせるなよ~!」
オクトデビルは堪らないとばかりに船から離れて海の中へ逃げる。
その後も暫く警戒は解かないままで注意し、もう来ないと分かると一息ついた。
デッキの上にはまだ生きているかの様に動く触手が。
「今回も大漁だなぁっ。」
「早く調理してもらおうぜっ。」
その様子を見ていたエナトは、え?それ食材なの? と驚く。
獲れたて?は刺身でも旨いと言われて若干引くエナト。
その夜は盛り上がって、エナトも出されたソレを恐る恐る口にした。
「・・・・・・、おいしい・・?」
オクトデビルは船上のご馳走らしく、街にも余れば卸される事があるとか。
弾力があってうま味もあり、なかなか美味しいと思った。
まだまだ知らない事は多い。




