バイト巫女と巫女系動画配信者④
何とか報告も終わり、私はキノちゃんと啓太と共に役所の外へ出た。
「キノちゃんありがとうございました。私、こんな大事だとは思っていなくて……」
裏サイトに私の情報が出回っているかもという話になってからの大人の動きは早かった。これまで私がちゃんと報告していなかったこともあり、危険性はそれほどないと思われていたようだ。
実際、古雅がいるので怖いと思ったことはなかったけれど、盗撮以上ことが起こってしまったら、本当に無事だったかは分からない。
「いいよ。でも今度からはちゃんと言わなきゃだめだよ。自分が我慢すれば大丈夫なんてことはないんだから」
「はい。ありがとうございます。あの……何かお礼したいのですけど。啓太君にも」
私の話を大人が真剣に聞いてくれたのは、キノちゃんと啓太君がいたからというのもあると思うのだ。……金髪女子高生と赤髪中学生が後方でにらみを利かせているって、見た目的に威圧感があると思う。
私一人だと喋り下手も相まって、今まで問題がなかったから大丈夫だよねという結論で終わってしまったと思う。
「そんなの別にいいよ」
「俺も大丈夫」
「いや、でも……。よければファミレスでドリンクを飲みませんか?」
遠慮するよねとは思うけれど、私も何かお礼をしたい。でも中学生に奢られるのも微妙かなと思うと悩む。……自販機のジュースとかが妥当かなぁ?
「私はこの後仕事もあって……。そうだ。だったら、今回の私の仕事に協力してくれない? それでチャラってことでどう?」
「仕事ですか?」
「何させる気だよ」
キノちゃんの仕事を手伝うぐらいならと思えば、返事をする前にずずいっと啓太が間に入った。
「もちろん動画撮影には映らないようにするよ。制服だしね。手伝って欲しいのは、幽霊を見て欲しいの。私、そんなに目はよくなくてさ。でも華那子ちゃんはしっかり見て、話までできるんだよね?」
キノちゃんの言う、目というのは、見鬼の力という方だろう。
確かに古雅が光って見えるぐらいだと、あまり見る方の力は強くなさそうだ。もちろん光ってでも古雅が見えるのだから、全く見えていないわけではないだろうけど。
「いいですよ」
「いや。危ないとかないのか?」
お手伝いがいいのならそれでいいかと了承すれば、すぐさま啓太が聞いて来た。
「私の場合は古雅がいるから大丈夫。今までも、同業者の応援に入ったりしたこともあるし」
「あっ、やっぱり華那子ちゃんは優秀なんだ。同業者の応援を任されるのは、かなり能力が高くて信頼されてないとないから」
「私の場合は古雅がいるからなので、優秀かは分からないのですが、前の担当者さんからは年齢がぁぁぁってよく悩ませていました」
遅い時間帯は駄目だし、年齢的にお願いできない場所もあるとため息をつかれた。あと、仕事量も色々配分しなければならないそうで、なんでもかんでもは回せないのが辛いと言われたことがある。
「年齢? そういえば何歳からやっているの?」
「小学校一年生からですね」
「若っ。今中学だったら、私より、ずっとベテランじゃん」
制度的には小学生からできるけれど、実際にはあまりいないとも聞いている。
実際、私も同年齢の同業者には会ったことがなかった。
「普通は何歳ぐらいからやるものなんだ?」
「えーっと、私が知っている人だと高校生ぐらいかも」
「一番多いのはそれぐらいだよ。私は中二からで、中三の時は受験優先で、ほぼ休んでたかな。それで高校になってから動画配信しながら、活動を再開した感じだし」
「へぇ」
元々学業を優先なので余計に受験前は仕事を休む人が多いのだ。
後は高校生になると他でもアルバイトができるようになるので、効率のいいバイト先という感じで、能力さえあれば選ぶ人が増える。
「実は今回問題になっているのはゲームセンターなんだけど、雑念が多くていまいち、本当にいるのかどうかも分からなくてさ。それで朝の開店前に確認させてもらったけど、やっぱり私では居るのかどうかの判別がつかないんだよね。悪鬼ぐらいはいそうだけど」
「でも時間帯が悪いと、見えないこともありますよ? 活発になる時間帯が決まっているタイプもいるので」
幽霊は普段は動かないけれど、スイッチが入ると突然活発になるということがある。そのスイッチが時間だったり、行動だったり、人だったり、と幽霊によってバラバラで分かりにくい。たぶん生前の環境、死んだときの状況などが合わさっているからバラバラなのだと思う。
そして普段は動かず、いるかいないのかも分からなくなっているのは、エネルギーの温存のためじゃないだろうか? と私は思っている。
「それは分かってるよ。だから視えたらでいいよ。少なくとも、私よりは見えると思うから。そっちの神様にも確認した方がいい?」
キノちゃんは私の頭上辺りを見た。
『俺は華那子の好きな方でいいよ。ゲーセンとか初めてだし』
見た目はヤンキーでも、ずっと神社に引きこもっていたヤンキーなので、不良のたまり場っぽいイメージのゲームセンターも行ったことがないのも納得だ。
「古雅もゲームセンターに興味があるみたいなので大丈夫です。あー……啓太君へのお礼はまた別日でもいい?」
「それはいいけど、俺もゲーセンに行く」
「え゛?」
まさか幽霊が出る場所にまでついてくると言うと思わず、変な声が出てしまった。それを否定と見たのが、眼光を鋭くする。
「何だよ。駄目なのかよ」
「ち、違うよ。駄目とかじゃなくて、申し訳ないというか……。啓太君は別にゲームセンターに行ったこともあるだろうから古雅みたいに興味があるわけじゃないと思って」
それに啓太から幽霊を見てみたいな興味本位な言葉を聞いたことがないし、特にそういう現場に興味があるわけではないと思う。
つまりは私を心配して引き続きついて来ようとしているのだ。それは、本当に申し訳なさ過ぎる。
「別に俺も最近ゲームセンターに行ってないから行きたいだけ」
絶対そんなはずないだろう。
「ナイトだねぇ。いいよ。仲間外れはよくないし、全員で行こう」
申し訳なさすぎるし何とかお断りの言葉をひねり出そうとするが、その前にキノちゃんが止めてしまった。
「華那子ちゃんも心配しなくていいよ。別に凄い悪さをする悪霊がいるゲームセンターというわけじゃないから。ただよくある、電気が突然点滅したとか誰もいないのにエレベーターが開閉したとか、勝手にクレーンゲームが動いたとか、格闘ゲームが動いていたとかっていう噂が流れていた場所なの」
「いや、良くはなくね?」
「そうかな? ほら、学校の階段とかで、誰もいないのに勝手になるピアノとか、誰もいないのに体育館でボールをつく音がするとか、天井に何故か足跡が残ってるとかあるじゃない? そんな程度のものだよ」
確かに小学生のころに、なんであんな所に足跡があるんだろってことはあったが、古雅も霊的なものじゃないから、誰かが上履きを天井まで投げてついたんだろと言っていた。
でもそれが怖いと怪談話になっていた。
つまりは、気のせいみたいなものも、誰かが怪談話にしたということか。確かに電気が切れかければ点滅することもあるし、エレベーターに乗ってボタンを押したけれどやっぱりやめたと降りてしまえば、別の階で無人なのに扉が開く。
「そういう怪談話があるだけでお祓いの話が入ったんですか?」
「わざわざ入ったのは、怪我人が出たからかな。怪我をしたのは、店員と若い女。店員はある日、店のお金を集金中、突然地震がおきて、棚の上のものや椅子が飛んできて複数個所打撲して骨折したの。でもその日、地震はなかったからポルターガイストが疑われている。若い女性は店から出る時、突然誰かに足を掴まれたらしくて変な形で転倒して、顔面の鼻を骨折。でも足を掴んだ人なんていなかったの」
私は想像して鼻を押さえた。
どう転んだのかは分からないけれど、顔は辛い。
「怪我人がいるなら危なそうですよね?」
人を傷つける悪霊となると、結構力が強いタイプだと思う。ポルタ―ガイストなんて、めったにない。
「それがね、この怪我人は二人とも悪い奴なの。店員は、売り上げを盗もうとした時に起きて、若い女性は客の荷物を置き引きしようとした時に怪我をしたの。つまりそこで悪さをしなければ、何もされないという見解なんだけど、幽霊はどう変異していくかわからないじゃない? 人に手を出し始めたら、一応確認しておかないとっていうのが、上の人の考えってわけ」
もしかしたら警察から連絡が行って、危険ならばお祓いするようにということだろうか。
結局啓太はこれを聞いても止めるという選択をせず、三人で一緒にゲームセンターへ移動することになった。




