24話 それぞれの想い
行き倒れたところを助けてもらった。
数々の知識と経験を叩き込んでもらった。
執事というポジションをもらった。
フィロ・オロスという新しい名前をもらった。
なにより、願いを託してもらった。
もうすぐ生まれてくる王様の息子を導くこと。
成長した先で、その彼と二人魔界を救ういつかの未来。
与えてもらったものは有り余るほどだ。
だからどんな理由であったとしても
応えたいという思いは変わらなかっただろう。
でも、彼が僕を見込んだ
一番の理由は、僕が転生者だからではなくて。
「いいやつだから、って…そんな理由…」
僕は呆気にとられていた。
想像すらしていなかった、シンプルすぎる理由。
あまりの衝撃に、他の言葉が出てこない。
「『そんな』なんて言うなよ」
王様は眉をしかめる。
「心から相手をいいやつって思えるって大事だろ。特にこの魔界では」
かつて魔界に君臨していた王の言葉とも思えない。
考え方がきれいすぎる。
「我らが王が被るは冠にあらず」
「『欲』と『力』こそ現王の冠なり」
突然、王様は歌うように語りだした。
その言葉には、酷薄な響きが含まれている。
「…ってな。多くの魔物たちは今の魔王を影でこう語ってる」
現魔王フィクスター。
魔界を支配する彼は、欲と力こそ全てと言って憚らない。
だからこそ力あるものが弱者を虐げ、欲のままに利用するのが当たり前。
奴隷の扱いがその最たる例だろう。
今の魔界では彼こそがルールだ。
「全てを否定はしない。何かを成すときに欲や力は大事だろう」
僕は、その言葉に小さく頷く。
欲がなければ、人は行動を起こすこともない。
何かをよりよく変えたいとか、
誰かに恩を返したいという願いだって欲だ。
欲を実現させたいというのなら、力を磨くのも当然のこと。
無力なまま動きもせず願うだけなんて妄想でしかない。
「だがそれでも」
王様は椅子から立ち上がった。
勢いで、椅子ががたんと後ろに倒れる。
いつになく彼の語気が強い。
思いの全てを僕に伝えようとしているのだろう。
僕は、それを全身で受け止める。
「俺は、一番大事なものは『心』だと信じる」
例えば、ミテス母さんがくれた愛情のように…
王様と先生がくれた信頼のように。
心は目に見えないけれど、
ときに理屈抜きで人を変え人を動かす。
僕だって「心」を信じたいと思った。
僕は、人を信じたい。
「お前から感じた『心』こそが俺の決心を固めた」
王様はそう言って、ゆっくりと僕へと歩みを進める。
彼はまっすぐ僕を見ていた。
僕もまっすぐ彼を見つめる。
「フィクスターは現在の魔界最強の男。今はとても敵わない相手だ。
でもそんなの飛び越してさ…」
距離はどんどん縮まっていく。
僕たちを隔てる空間はもう、ほとんどない。
彼の手が、僕の肩にそっと叩く。
「今の王様、ブッ倒してやろーぜ」
僕と王様は、互いに拳を合わせて笑った。
傍らで見守っていた先生もそこに加わる。
僕たちの心はそのとき、確かに同じものを見ていた。
今はまだ可能性すら見えない未来。
帆の向きが定まった以上あとは強い風を吹かすのみ。
目指すは、魔界の現状を覆すこと。
そのために
魔界最強の現魔王
フィクスターを倒す!
1日更新が遅くなってしまいすみません(´;ω;`)
2話投稿いたしました!!是非応援して頂けると嬉しいです☻




