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魔界冒険譚  作者: ASOBIVA
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23話 転生者を求めた理由

魔界は弱肉強食、力こそ全ての世界だ。


強さを示さなければ、

たとえ王と名乗ったところで誰も従わない。


だから、仮にも元魔王だというのなら、

彼は間違いなく強者のはずだ。


なにせ戦闘能力がバケモノ並みの先生が仕える主だ。


とんでもなく強力なマギアを秘めている可能性だって考えていた。


暴きたいとまでは思わなくても、ずっと彼の力には興味があった。


それが、あっさりと彼の口から

明かされる流れになって、僕としては驚いていた。


そして、ひどく困惑していた。


彼は自分のマギアを『今は役立たず』と評したのだから。


とにかく情報を聞き漏らさないように、

僕は王様を注視する。


「俺のマギアは『獣化』魔物や魔獣の特性を体に反映する能力だな」


こんな風に、と言って彼はぶんと片腕を振るう。


刹那、彼の腕は全く別の形へと変貌を遂げた。


ぎらりと光る鋭い爪、隆々とした筋肉、黒い剛毛。


どう見ても魔人のものではない腕が、

僕の目の前に現れる。


「ちなみにこれはバトルウルフの特性だな。獲物を爪で引き裂くんだ」


もう一度彼は腕を振るう。


すると、あっという間に元の彼の腕に戻っていた。


「もうちょい面白いやつも見せようか。そうだな…」


王様はなぜか先生をじーっと見ている。


「うん、こんな事も出来るぜ。よーく見てろよ」


彼は自分の耳を指差して、得意げに笑う。


彼の耳は小ぶりで形のいい耳たぶをしていた。


少し派手な耳飾りでも似合いそうだ。


僕が目を向けていると、ぐぐっと耳が変わっていく。


見覚えのある細く尖った耳の形状。


耳の部分だけ、他より白く透き通った肌の色をしている。


「あ…すごい!『先生の耳』だ」


僕は先生と王様の耳を交互に見比べた。


顔に至るまでのライン、肌の色…どれも先生の耳を

そっくり再現している。


「な、面白いだろ?」


先生は微妙な顔をしているが、気持ちはわからなくもない。


もしかしたら体のどこかを僕とそっくりに変えられるのだろう。


王様は手品みたいにマギアを見せてくれたけれど、

とんでもない力だと思った。


攻撃から補助、あるいは戦闘以外でも

様々な応用が効きそうだ。


「昔は火を吹いたりなんかもできたんだぜ」


王様いわく、口のところをドラゴンの特性に変えると、

火を吹く力が手に入るらしい。


なんてことまで聞くと、

「役立たずの力」だなんてとても思えない。


僕は内心、釈然としなかった。


実力があるくせに非力なふりをするなんて、

と憤りすら覚えた。


でも、続きの言葉を聞いて感情は一転する。


「まあ、でも今は訳あって、ほとんどの特性は使えない。

というか、これのせいでマギアの大半が封じられてるんだ」


元魔王が自分のシャツをぐいっとまくりあげる。


そこにあったものを見て、僕は目を瞠った。


(なんだ、コレ…気持ち悪い…)


それは、心臓から張り巡らされた

蜘蛛の巣のように見えた。


見たこともない複雑な紋章が彼の体に刻まれていた。


見ているだけで、禍々しい力の気配に呑まれそうになる。


「さっさと隠せ、目障りだ」


目をそらしながら先生はそう言った。


まくりあげられたシャツはすぐに元の位置に戻される。


僕は、無意識のうちに

止めていた息をゆっくりと吐き出した。


「なんでそんな…ってああ…

だから、なんですか?転生者の力を求めたのは」


力を封じられた元魔王がそれでも魔界を救いたいと願った。


味方は少しでも多く、それもできれば力が強い者が欲しかったはずだ。


転生者は総じて、強い力を持つ。


だから、僕じゃなくても力さえあればきっと。


「まあ、それもあった。転生者の力を当てにしたところもある」


当たり前のことを言われているはずなのに、やけに悲しい。


なぜか話の先を聞きたくなくて、僕はうつむいた。


「でも、お前に託したいと思った一番の理由は別なんだよ」


王様の言葉に、僕はバッと頭を上げた。


一体、彼は何を言おうとしているのだろう。


「お前が『いいやつ』だったから」


そんなバカみたいな理由を

口にして王様は僕にきれいに微笑んだ。

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