旋風と奥様
公園内序列、仁義なきママ友グループ、公園デビュー――そうした概念は、だいたいが私の妄想というか、偏見だったらしい。
「んだよ、それで一ヶ月ずっとこっち見てるだけだったのか」
「…………」
「公園デビューなんて、アホくさ。別にあたしら普段から連んでるわけじゃなくて、たまたまこの時間に一緒になるからくっちゃべって暇つぶしてるだけだし」
「それを連んでるって言うんじゃないんですか」
「言わないね。学校の女子グループの連みレベルが十なら、ここの連みレベルは三だ」
「基準がまったくわからないですよ、その指標」
「んじゃ、ラインしないくらい! ママ友なんてそんな堅苦しいもんじゃないっての。少なくともこの公園じゃ、お互い深入りしないで仲良くやってるよ」
「そうですか。なーんだ」
「なんでちょっとガッカリしてる感じなんだよ……」
「もっと殺伐としてたほうがスリルがあって面白いのに」
「仲間に入れてほしくて遠巻きに見てたやつがよく言う……小学生じゃあるまいし」
「うるさいですね。こちとら小学生のころから他人とコミュニケーション取る技術が進歩してないんですよ」
「あーいたいた。休み時間に遊ばないでいっつも本読んでる真面目ちゃん。文ママ、ああいうタイプ?」
「…………」
「ズボッシーかよ」
「真面目じゃなかった時期もありますっ」
「あーそー。じゃ、その辺の男引っ掛けて金稼いだり?」
「それは不真面目を通り越して合理的判断のできないただの馬鹿です」
「真面目じゃねーか十分。なんだゴーリテキハンダンって」
「……あー、私の中のトモダチセンサーが一刻も早くあなたから離れろと告げています。頭が悪くなるぞと」
「おいおい役に立たねーセンサーだな。そんなんに頼ってるから友達できないんだぞ」
「あなたに私の何がわかるんですか」
「そんな睨むなよ。別に文ママの気持ちやらなんやらいちいち考えて発言しないっつの。あたし馬鹿だから」
「自覚あるようで安心しました」
「くっ、口の減らねー……ところで文ママ歳いくつ? 年下のくせにそんなクチ叩いてたらただじゃおかねーからな」
「教えません。ご心配せずともあなたより年上です」
「ハ、そんなの口じゃいくらでも言えるだろうが。だいたいあたしの歳も知らないのに、よっぽど自分のほうが大人な自信があるよーっすねー?」
「……二十八」
「は?」
「だから、二十八歳です、私」
「二十八ぃ!? いてっ」
「声が大きい!」
「いや、え!? あたしより七つ年上!?」
「そういうあなたは二十一ですかー。若いですねー。いいですねー」
「先輩」
「急に改まるのやめてください。白々しいです」
「いやぁ年上だとしても二、三歳くらいだと思ってた。こんな小さい赤ん坊がいるのに」
「あなたが早く産みすぎなんですよー」
「肌綺麗だし」
「なるべく日光を浴びずに生きてきたのでー。あなたみたいに無茶なお化粧ののせ方もしてないんですよー」
「ちっくしょう、年上だからっていい気になるなよ?」
「年下のくせにいい気にならないでください」
「…………」
「…………」
「……あ、そろそろダーリン帰ってくる時間だわ。あたし帰るね。バイバイセンパイ」
「え、あの」
「煌翼、文と文ママにバイバイしような。ばいばーい」
「バイバーイ……って。なにしてるんですか私」




