その14
さて。
若い女の子の強みは、やはりその若さにこそあるわけだが、別にこれは、シミ・しわ・たるみ・余分な脂肪等がなく、ハリと弾力、それに透明感のあるお肌をされているだとか、頭皮にハリがあり髪には艶があり、いくら食べても太らない健康な身体を持たれているだとか、そういう見た目のあれやこれ――は、これはこれで大変うらやましいのだが――と言うよりは、その若さゆえの屈託のなさ、物怖じのなさにあるのだと、シミ・しわ・たるみだらけのくすんだお肌の作者などは想うわけであるが、いや、ほんと、この年になってつくづく想うんだけどさあ、若いってのは――
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(編者注)
実は、ここでこのあと、大体1200字ほど、このお話の作者による、加齢に伴う肌トラブルや心身の不調、それに若い女の子への妬みや嫉みや憧れなんかが語られていたわけなのだが、あまりに赤裸々、且つ読んでて痛々しくなって来たので、その部分はマルッとカットさせて頂くことにした。と言うのも、ここで作者は、ただただ祝部ひかりのある行動について書こうとして、その導入のための筆が横道にそれて迷子になってしまっただけであって、その迷子の部分は抜かしても外しても物語にはなーんの影響もないからである。と言うことで――、
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――みたいな感じに、かくも愚者は経験に、賢者は歴史に学ぶことになるわけだが……って、どうやら私も、かなり話を横道にそらしてしまったようだが、つまりここで私が、なにを言いたかったのかと言うと…………あれ? なんだったっっけ?
え? あー、そうそう、そうそう、ひかりちゃん。ひかりちゃんのことについて書こうとしていたんでした。あのひかりちゃんね、あの、祝部ひかりちゃん。
と言うのも彼女、実の曽祖母の家に連れて来られてからこっち、その強力な結界の中で、美味しい食事と、快適なお風呂と、たっぷりの睡眠を摂取したおかげでもありましょうか、泣いたカラスがなんとやら、いまではすっかり彼女本来の明るさを取り戻しており、しかもそこには、文化祭で彼女を助けてくれたマジでイケメンの叔母、実の父や育ての父なんか目じゃないくらいにイケメンの叔母がやって来たりなんかして、きっと変なかんじにテンション上がっちゃったりしたのでしょう、
「あのー」と、その叔母、山岸まひろくんにこう尋ねることになります。「ほんとに……その……“叔母さん”でいいんですよね?」
もちろん彼女的には、例の文化祭での『ジャンプ』時に、彼女に抱きついたときの感触から、彼女が女性であること、筋肉質でゴツッとした育ての父なんかとはちがう、やわらかい身体の女性であることは、なんとなくではあるが、そこはかとなくではあるが、それでも自信を持って分かっているつもりではあったのだが、それでも、目の前の彼女の、そのあまりのイケメンぶりに脳がバグりそうになっていることなんかもあり、
「ちょっと、確認してみていいですか?」と、そのイケメンに訊ねることになります。「ほんと、ちょっとだけですから」
が、しかし、まひろはまひろで、この子がなにを言っているのか分からない。そこで、
「確認?」といちおう彼女に訊き返すが、
「ほんと一瞬、一瞬だけですから」とそんな問いなど気にしないでひかりちゃん、
ぐぃ。
とばかりに、いきなり、まひろくんの胸部に手をやるのであった。
「へ?」とまひろはおどろき、
「え?」と横に立ってたヤスコもおどろき、
「うわっ」と彼らを見ていた作者もうらや――いや、おどろいた。「なにやってんのッ! ひかりちゃんッ!」
*
いや、分かる。分かるよ。私も書いてて、
『このひとほんとに女のひと?』
ってなるときあるからね、実際。
背は高いし、シュッとしてるし、ミスター(一応イケメン)と並んでても見劣りしないし、佐藤健さんとか、亀梨和也さんとか、渡邊圭祐さんとか(いずれも作者の趣味)、全体的にそっち系の顔立ちしてるし、
『これ……いちど確かめた方がいいのでは?』
と想ったこともありましたよ、何度もね、実際問題ね。
でもね、でもね、でもねそこはねひかりちゃん。いまのご時世、いくら自作小説のキャラとは言え、そんな女性のおっ――胸部を触って確認するとか、いくら私が作者と言えね、いつセクハラで訴えられてもおかしくないわけでありましてね、そりゃまあ私も物書きですから、そこはそれ、ミスターに間違えて彼女の着替えを覗かせるだとか、これまた間違えた不破さんに洗面所の扉を開けてもらうだとか、そういう合法ラッキースケベ的シチュエーションを考えたこともありましたよ、何度もね。ありましたけどね、それでもね、ほら、そこはやっぱり、私にも物書きとしての矜持ってものがありますからね、そんな不自然な流れはもちろん、登場人物の意に沿わないことは、そりゃ、あなた、出来ることなら、避けようとするのが、大人の物書きの態度ってもんでね。それにそもそも、昨今のジェンダー教――、
「あの、すみません」とここで突然ひかりちゃん。作者の思考に割って入って、「作者さん、はなし長い」
え? いや、でもでも――って、どうやってこっちに来たんだろう? この子――でもさあ、それはさあ、もとはと言えば君が――、
「いいじゃないですか、一瞬でしたし」と続けてひかりちゃん。特に気にする風もなく、「親戚ですし、女同士ですし」
はあ。――ほんと若いって強さだなあ。
「結果、作者さんのモヤモヤも解消させてあげようとしたわけですから、感謝されてもいいくらいじゃないですか?」
はあ。――まあ、そういう意味では、ありがたかったのかも知れませんが。
「でしょ?」
うーん?――ま、まあ、じゃあ、そこはありがたかったことにしますけど……で? 結局? 結局のところどうだったの?
「え?」
その……まひろくんの……おっ……あ、いや、胸部の感……
「あー」とそうして、ここでひかりちゃん。なんの屈託もなく、「結局よく分かりませんでした」
うん……。
ま、まあ、この辺の事情については、胸つぶしインナーを試されたことのある方、あるいは、男装レイヤーさんとご交流のある方なら、なんとなく分かって頂けるかとは想うが、最近のなべシャツ・トラシャツというのはかなり出来がよいのか、それを着込んだ方のバストを上から触ってみたところで、それこそよっぽどおっきな胸部でもお持ちでない限りは、まあ、普通の男性のそれと大差ない感触が返ってくるようでありまして……って、まあ、それも普通の男性のそれがどんなものか分からないと分からない気がしないでもないですが……、まあ、それでもそれは、ひかりちゃんも一緒のようで――、
*
「うん」とここでひかりちゃん。ようやく物語へと戻って行くと、「やっぱりよく分かりませんね」
と、自身の両手を見ながらくり返します。彼女の前には胸をかくして顔を赤くするまひろくん。それに、
「大丈夫? まひろくん?」と彼女を気づかうヤスコ先生の姿がありました。
すると今度はひかりちゃん、一瞬、他の確認方法を試そうともしたのだが――ほんと若さってのは武器ですね――そんな二人を見た途端、なんだか色々ピンと来たのか、
「ま、どっちでもいっか」とひとり勝手に納得すると、「ごめんなさいね、まひろさん」
と素直に謝り、ついでに、
「まひろさんのおっぱいさわってすみませんでした」と何故かヤスコ先生にも謝るのでした。「彼女さんいるのに断りもなく」
(続く)




