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転生者たち~時空の終わりとソウルフルネス・ワンダーランド~  作者: 樫山泰士
第十五話「正義と自由と公正と平等」
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その14


 さて。


 と言ったところで。


 前回更新分の最後で作者は、花盛りの家のあの老婆、既に故人となった山岸咲子さんの若い頃の写真を見て、


「なるほど、これは可憐だ」


 とまで言っちゃったわけなのだが、その後作者は、例の悪魔が帰ってから、夕飯の支度をし、風呂を洗い、テレビの録画予約をし、洗濯物を取り込み、畳み、夕飯の席で同居人に、


「肉ばかり取らないで野菜も食べなさい」


 と小言を言い、その後、彼女と一緒にお皿を洗っている時に、ふと、


「あれ?」と想い呟いた。


「なに?」彼女が訊いた。


「あ、いや」作者は答えた。「EP6でさ」


「うん? なに? スターウォーズの話?」


「うん、そう。EP6の最後でさ、若いアナキンが出て来るじゃん。突然、霊体で」


「え? あー、あのヘイなんとかって人? おじいちゃんの方じゃなくて」


「ヘイデン・クリステンセンね」作者は続けた。『また一体なんの話だ?』という同居人の顔は無視して――こんな感じに。


「あのヘイデンが起用されたのって結局さ、最初、EP6が撮られた時は、もちろんEP1~3が撮られる予定もなかったわけだから、そもそものおじいちゃん――仮面を脱いだダース・ベイダーね――のセバスチャン・ショウがあの霊体役もやっていたわけだけど、それがその後、EP1~3が撮られることになって、それとの関連で、旧三部作が2004年にDVD化されることにもなるわけで――(*この後、やたらと長いスターウォーズ蘊蓄&感想が語られたのだが、まじで引くほど長いので中略)(注1)――で、まあ長くなっちゃったんだけど、そうして彼、アナキン=スカイウォーカーは、ようやく、かのクワイ=ガン・ジンが予言していたとおり、フォースにバランスをもたらす『選ばれし者』としての役割を果たすことが出来たわけなんだよね。なんだけど――」


「ふーん」とここで同居人。きっとベイダー卿の年齢設定の辺りから聞いていなかったのだろう、「あたしお風呂はいりたいんだけど、このお話ってまだまだ続くの?」


「え? あ、ごめん」と作者。ルークとアナキンの親子愛に流した涙を拭いつつ、「ついつい夢中になっちゃって」


「まあ、慣れていますから」と同居人。作者の分の寝巻きも出しつつ、「で? 結局、その霊体状態の若アナキンがあなたの小説とどう関係してくるのよ」


     *


 そう。気になったのは霊体およびフォースの暗黒面である。


 先ず霊体については、前回更新分および今回冒頭でも書いたとおり、故・山岸咲子さん――花盛りの家のあの老婆――は、その若いころ、美少女、とまではいかないまでも、この作者に想わず、「可憐だ……」とカリ城の五右衛門みたいにつぶやかせるほどのルックスをされていたわけで、なんなら個人的趣味で言うのなら、まひろくんやひかりちゃんよりも断然作者の好みに寄っているわけで、であれば、せっかく死んで霊体になったのだから、あんな魔女みたいな――って実際『魔女』なわけだけど――格好で出て来なくても、若いころの、可憐で美しい姿で出て来てくれた方が、書いてるこちらも楽しめるのに、どうしてあんな、死んだときと同じかっこで出て来るんだろう? と想ったわけだが(注2)、


「バッカじゃないの?」とここで再び同居人。お風呂から上がり、髪を乾かし、「別にいいじゃない。他にも若くてかわいい子いっぱい出てるんだから」と作者を責める。「あんま趣味に走るのもどうかと想うし、おばあちゃんキャラも一人ぐらいいた方がメリハリついていいじゃない」とかなんとか言いながら。

いや、まあ、たしかに。それはそうなのだけれども……、


「自分の趣味に走ったキャラだけ出して、結局どの子も同じような感じになって、誰が誰だか分からなくなるよりは全然いいと想いますけどね、私は」


 はあ……、


「大体最近のアニメにしろマンガにしろみんんな似たような顔とスタイルの女の子ばっかり出て来てさあ、私が見たいのは、(*以下、かなり偏った性癖が開陳され正直ドン引きだったので中略)って、私なんかは想うわけよ、了解?」


 はあ……、


「ってことで、この話もういい? よければあなたもそろそろお風呂に――」


 あ、あと、もうひとつ。


「なに? まだあるの?」


 あー、うん。フォースの暗黒面について。


「は?」


 ほら、いま、彼女、咲子さん、八千代ちゃんのコーチ役やってるじゃない?


「そうなの?」


 うん。八千代ちゃんの能力コントロールのためにね。


「あー、なんかそんな展開になってたわね」


 で、まあ、あの魔女みたいな――ちょっとダース・シディアス味さえある――見た目のせいだと想うんだけど、その特訓場面が、なんか、こう、結構こわい感じになっちゃっててさあ。


「それは、特訓場面で、コーチ役だからじゃないの?」


 いや、でも、八千代ちゃんの方も、なんか、こう、ちょっとこわい感じになってて……、


「フォースの暗黒面に囚われるかもって? あの八千代ちゃんが? それこそあなたの気にし過ぎじゃない?」


 そうかなあ……?


「そりゃまあ、シリアス展開続いているみたいだけど、前見た回想回では踏ん切りついてたようだし、八千代ちゃんがこわく見えたとしたら、それはあなたが、それこそあのおばあさんの見た目に騙されてるだけなんじゃない?」


 うーん?


「あなた、あのおばあさんの若いころのビジュアルが気に入り過ぎてて、どうにかしてそれを出したいって難癖付けてるだけよ」


 うーん? そうかなあ?


「そうそう。八千代ちゃんなら大丈夫だって」


 そう……なのかなあ?


     *


 と言ったところで。


 右のシーンとは時間も空間も確率さえも前後して、いつもの赤毛エイリアン、ミスターは言った。


「たしかにすごいとは想うけどね」とリンゴのような女の子、高嶺ゆき子ちゃんに向かって、「ぼくらが見て来た八千代ちゃんは、もっと、こう、ものすごかっただろう?」


 ここは例の林の特訓場、氷川神社の裏側で、彼らの5~6mほど先では、問題のピッチングマシンを前にした佐倉八千代が、山岸咲子の霊体 (残念ながらいつものご老体バージョン)から、力の使い方を学んでいた。八千代のそれは、いよいよ本格的にうごき始めている様子であった。


 コウっ。


 と冷たい風が初夏の林を吹き抜け、それに合わせるように七つのボールがマシンから放たれた。魔法陣の中の八千代を襲った。そうして、


「うん」


 と八千代はつぶやいたが、それら七つのボールを彼女が認識しているかどうかは分からなかった。ただ、彼女の身体の中では、確かになにかが動いていた。頭は考えるのを止めていたが、しかし代わりに、いくつもの記憶や呼吸やイメージの断片のようなものが、泡立ち波打っては、すぐに違うものへと変わって行った。身体は、まるで量子ゆらぎのように揺れ、そうして七つのボールが彼女に触れようとした、その、一瞬前、


 ヴぉッ!


 と時間と空間を引き裂く音がして、七つのボールは、そこに停止し、安定性を失い、焼き切られ、割れ、破裂するようにして地面に落ちた。


『ふぉ』


 と想いも掛けず咲子は声を上げた。八千代の成長の著しさが彼女の想像を――その潜在能力以上に――はるかに上回っていたからである。


『すごいね、お嬢ちゃん』咲子は言った。今度ははっきり意識して、『あれだけのヒントで、まさかここまでやれるとは』


 実際、咲子が八千代に教えたのは、彼女が持っている力の大きさと、それをイメージする方法、それから、


『あんたのそれは、色も形も、硬さも大きさも、重さや肌ざわりなんかも、あんたの想いどおりに変えられるんだよ』と理解し、自覚し、信じるための方法論だった。『そしたら後は、あんたの想像力次第、いくらでもそれを自由に動かせるさ』


 もともと八千代が発揮していた能力――極端な共感能力や妙に当たる虫の知らせなど――は、彼女がこの力を、ほぼほぼ無自覚・無意識・ノーコントロールで周囲にうすく広く伸ばしていたために起きていたもの、彼女の気分や想いなんかによって発現していたものであり、


『それを一箇所に集中、イメージ通りに動かすことが出来れば、まさに“一念岩をも通す”。そんなことも可能だろうよ』


 であったがしかし、この時の八千代は、先にも書いたとおり、『頭は考えるのを止めていた』状態にあり、彼女自身、彼女のこころ、魂と言ったようなものは、ふと現われては消えるナニカ、これまでずっと存在しながらも気付かずに、いや、気付かないようにしていたナニカ、そんな影のようなナニカと向き合い、見つめ、その声を聞き、聞くまいと首を振り、しかしそれでも、無視出来ない大きさになるのを止めようにも止められない――かも知れない。という状態にあった。


「うーん?」リンゴのような女の子、高嶺ゆき子はつぶやいた。「あんなひとだったかなあ?」と。


 何故なら、これまで彼女が見て来た八千代、未来の世界で出会った彼女とその能力は、『一念岩をも通す』と言うよりは、『念ずれば花ひらく』というイメージに近かったからである。



(続く)

(注1)(注2)


『EP6のラスト、どうしてアナキンの霊体はセバスチャン・ショウからヘイデン・クリステンセンに差し替えられたのか?』


 この問いへの回答は、本編に書くにはあまりにも長く、趣味に走り過ぎており、且つ、またお話の流れを壊してしまいそうだったので、勢いあちらからはカットしてしまったわけだが、しかしこのままだと、


『どうして咲子さんの霊体は老婆の姿でしか現れないのか?』


 という疑問の答えもすっ飛ばしてしまうことになるので――もちろん、物語的には八千代ちゃんの変化が書けているので問題ないと言えば問題ないのだが、それでも――ここで、この脚注を使って、大変変則的ではあるが、この二つの問いにお答えしておこうと想う。


 さて。


 それでは先ず、ひとつ目の問い、『どうしてヘイデン・クリステンセンに差し替えられたのか?』について。


 これには大きく分けて2つの理由があって、1つは、彼が息子ルークを守るため、悪の銀河皇帝シーヴ・パルパティーンを倒し、結果、銀河に平和と、フォースにバランスをもたらし、彼本人も、シスの暗黒卿ダース・ベイダーから、そうなる以前の彼、ジェダイの騎士であった頃のアナキン・スカイウォーカーへと帰還したこと――EP6のタイトルが『ジェダイの帰還 (Return of the Jedi)』となっているのは偶然ではない――を明確に表現するための演出として、そうしてまた1つは、後年製作されたEP1~3の設定確認のため彼の年齢を計算し直すと、EP4~6時点でのアナキン・スカイウォーカーの年齢は概ね40代前半となり、EP6製作時の想定よりもはるかに若くなった――セバスチャン・ショウは撮影時70才を超えていた――ため、EP1から見返した・見始めた観客が違和感を覚えないようにという制作側の(行為自体には賛否あるものの)善意であった――と、これが、ひとつ目の問いへの答え。


 ここまではよろしいだろうか?


 よろしければ次に、こちらの内容を踏まえ、ふたつ目の問い、『どうして咲子さんの霊体は老婆バージョンなのか?』を見てみると話は簡単で。


 これは、皆さま既にお気づきのとおり、彼女がジェダイ――じゃなかった、ライトサイドの魔女としてその死を迎えたからであり、また、彼女が魔女としての能力に目覚めたのは、中年以降、東京大空襲の年に例の悪魔に出会ってからのことだったからである。


 アナキン・スカイウォーカーが、シスの暗黒卿としてではなく、善きジェダイとして、息子の父親として亡くなり、結果、その霊体をジェダイ時代のものにしたのと同様、咲子さんの霊体も、いくら作者が、作者好みの若いころバージョンで出て来て欲しいなと願ったとしても、彼女はあくまで、ダークサイドの魔女ではなく、ライトサイドの、『東の善き魔女』としてその死を迎えたわけだから、彼女の霊体も、いまの、あの優しき老婆の姿として現れるしかないのであった。


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