371.それがどうしてテレビで放映されるの?
「そっちで観た人って映画館には行かないのでは」
「映画館で観ることに価値があると思っている人や、テレビでは味わえない大画面大音響目当ての人もいます。
そうじゃない人もいますけど」
ただ、アニメファンがみんな有料契約しているわけでもないので劇場版アニメを早く観たいと思ったら映画館に行くという。
「ああ、なるほど。
爆死って」
「はい。
映画館で上映されたのにお客が入らず大赤字になった作品ですね。
すぐに打ち切りになったりとか」
「打ち切り?」
また新しい概念が出てきた。
ヲタク道は深い。
「初速といって、最初の1週間くらいの視聴者動員数でその作品がどれくらい儲けるか算定出来るらしいんです。
儲からない作品を上映し続けるのは映画館としても拙いので、駄目だと思ったら別の作品に取り替えます」
その結果上映している映画館が少なくって更に売り上げが落ちて、という悪循環ですぐに消えますと淡々とのたまうレスリー。
適者生存。
無慈悲だ。
「それがどうしてテレビで放映されるの?」
「つまりですね。
そういった作品はまず有料チャンネルに売られます。
同時に円盤化して発売します」
「ああ、少しでも資金を回収しようと」
資本主義の常識を学んでいるレイナだった。
「そうやって数年たって、両者ともこれ以上売り上げが見込めないと見切りをつけられた作品がテレビ局に売られるわけです。
端金で」
なるほど。
レスリー先生のヲタク談義を聞かされているうちに、レイナはアニメというよりはエンタメ業界の基礎知識を知らず知らずに習得していた。
アニメは娯楽だけど、エンタメだからといってボランティアで作られて放映されているわけではない。
基本的には制作側が儲けようとして作るわけで、その儲けるための方法論がテレビ放映だったり劇場公開だったり、あるいは円盤や有料サイトの配信だったりする。
つまりアニメや映画は商品だ。
普通に売ったり買ったりするわけで。
「つまりアニメって時価?」
「そうですね。
初めて公開する時は高いです。
でもみんなが知ってしまったら安くなるという。
実際にはそんなに単純じゃないみたいですが」
「そうなの?」
レスリーが頷いた。
「例えば何度でも観たいとか、観てからしばらくたってからまた観たいとか思う人もいます。
そういう人には時間がたっても高価で売れます」
「円盤とか?」
「物理媒体で自分が持っていたいという人もいますし、オマケでついてくる特典目当てで買う人も」
「ちょっと待って」
その話はレイナも聞いていた。
ヲタクの購買力は大したものだが、実のところヲタクが買うのは一般人には関係なさそうな物品が多いということで。
前にリンからそういった話を聞きかじって、ヲタクの底知れぬ闇の深さに戦いたものだ。
近寄りたくない。
ニコニコしているレスリーをチラ見してみる。
この笑顔の裏にどれだけの深い奈落を隠しているのか。
「そういう話はいい。
爆死に限定して」
「はい。
で、ですね。
それこそ爆死した劇場用アニメって売れないわけです。
そもそも一番高価な時期にも売れなかったわけですから」
「おう」
「なので制作側は少しでも資金を回収しようとしてテレビ局に放映権を売ります。
テレビ局はそれを地上波やBSで放送して視聴率を稼ぐと」
「誰も観ないのでは」
「初めて観る人は観ます。
だって無料だから」




